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【ライブレポート】2021/12/13 ALIVES “LET’S GO FREEDOMS TOKYO”

TANNYがGOOD4NOTHINGを脱退して組んだバンド、ALIVESの初となる東京ワンマンライブが下北沢SHELTERで開催された。

2021年9月に1stアルバム『Code of Alives』をリリースし、レコ発ライブという位置づけにもなる今回のワンマン。持ち曲はアルバム収録の11曲のみという状況でどんなステージを繰り広げるのか、期待と不安でドキドキの2時間弱を簡単に振り返りたい。

チケットはソールドアウト。師走を迎えて上着を抱えるファンで埋まるSHELTERには、開演直前のドキドキとそわそわが入り混じった独特の空気が流れている。

予定を少し過ぎて場内が暗転すると、アルバム1曲目の「Let’s go freedoms」に乗せてTANNY(Vo&Gt)、そしてSHACHIのHIDETA(Ba)とSTANCE PUNKSでも活躍中のKOU(Dr)の3人が登場する。

ライブ1曲目はアルバムでの実質的なオープニングナンバーでもある「Believe」だ。TANNY節がさく裂する、景気のいいメロディックパンクが鳴り響くとフロアからはあっという間に多くの手が上がる。

空白の時間を埋めるためのリハビリ時間など必要ないとばかりにトップギアで攻めるTANNYにがっちり応えるフロア。その様子にTANNYも嬉しそうで、積極的に視線を観客に合わせていく。

続く「And have some hope」でも盛り上がりはそのまま、マスク&大声禁止なフロアでもその熱気はじゅうぶんステージに伝わっていたはずだ。

EDMを取り入れたり同期を入れたりと、かつてのスタイルとは異なるやり方でのライブであることを告げながら、次のブロックでは「Let me in」や「Beyond the light」などを披露する。

今日のライブの大きな特徴として、MCブロックの配分がかなり長かったことが挙げられるだろう。
その理由をTANNYは「まともな曲は9曲しかない。1曲は1分やし1曲は…」と芸人・永野のラッセンネタをマネしながら「Let’s go freedoms」をイジリつつ、さらっとやったら30分で終わってまう、と語る。

2時間のワンマンを成立させるための苦肉の策とも言えるのだろうが、単に時間つぶしということではなく、TANNYが今日のライブをどれだけ楽しみにしていたか、そしてどれだけ楽しんでいるのかが伝わってくる時間でもあった。

その内容自体は、下ネタやくだらないジョークもあり、これはこれでかつてのTANNYと変わらない。ただ、話の受け手がMAKKINではなくHIDETAであるため、彼のリアクションの違いがそのままGOOD4NOTHING時代との違いとなって表れていたように思う。

不安からか、MC時は常にHIDETAを見ながら話すTANNYに「観客を見て話せ」と諭すHIDETA。ふざける生徒と真面目な先生のような構図がなんだか新鮮だ。

少し控えめで、基本的にはTANNYの話を肯定的に受けれるHIDETA。しかし、アルバムジャケットについてのエピソードではHIDETAがキレを見せた。

ジャケットのイラストをとても気に入ったTANNYは、ポスターを制作し、さらに今日のライブ来場者へのお土産としてジャケ画像を使ったハガキも用意。そしてこれを家に飾るのではなく、大切な人に送ってほしいと説く。その際の説明がふわふわしてしまい、微妙な空気が流れるとしびれを切らしたHIDETAは「送らなくていい!笑」と一喝。

今日イチでバシっと決まったこのやり取りは、今後のALIVESのライブにおける指針になるかもしれない。TANNYのひとりトークはそのだらだらした流れが味わいではあるものの、時にはキッチリ仕切ったり〆たりする役割も重要、ということで。

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曲のほうに話を戻すと、ライブ中盤では「Carry on」、さらには“カリフォルニアな感じ”の新曲も披露する。西海岸テイストのメロディックパンクはやはりTANNYの真骨頂。

さらにはThe Clashの「I Fought The Law」など2曲のカバー、そして1分で終わる「1 minute blast」も演奏する。持ち曲数の問題ゆえ、でもあるがバンド編成でカバー曲をプレイしたり、デビューアルバムに1分の曲を入れてみたりと、キッズなTANNYの遊び心が見えてなんだかワクワクしてしまう。

顔にほくろをつけるならどこがいいか、というテーマやKOUの天然話なども盛り込む中で、ひとつ真面目な話題も。GOOD4NOTHING時代に、復活したハイスタと対バンをする機会に恵まれたTANNY。続けていればいいことがあると話すが、自身がバンドを抜ける際には、お世話になったハイスタに直接話そうと彼らのツアーを訪れる。

楽屋で横山健に会い、GOOD4NOTHINGを辞めることを伝えるとハグをされ「辞めるづらかー?」と声をかけてもらったんだそうだ。そして後日家に招かれ、朝まで語り明かしたふたり。ハイスタから距離を置いた経験を踏まえて、健さんからアドバイスをもらい、自身の背中を押してもらったと話すTANNY。

そしてGOOD4NOTHINGでのファイナルシリーズにてファンと交わした「いつかバンドの形でここに戻ってくる」という約束を、「果たしに来たぞー!!!」と10-FEETのTAKUMA風なガラガラ叫び声で伝えるTANNY。

この思いを直接聞けただけでも、今日ここに来た甲斐があったというもの。最後のTAKUMAモノマネは、めちゃくちゃ高いクオリティではあったものの、どこか照れ隠しの要素もあったのかもしれない。そこがまたTANNYの魅力でもある。

ライブ終盤には、ちょうど双子座流星群が見えるこのタイミングで披露する「ANDROMEDA」が、ロマンチックなTANNYの甘い声と共に響き渡る。

ラストブロックでは美しいメロディに乗せて《Always always there :いつもそこにいてくれる》と歌う「Enough」、そしてリード曲としてMVも作られた「Sky dance」で今日いちばんともいえる盛り上がりをもたらし、フロアをブチ上げて本編は終了した。

もちろんこれでは終わらず、観客はアンコールを求めて手拍子。少ししてステージに登場したのはTANNYひとりだ。曲数が少ない中でのアンコール。果たしてどんな構成なのか気になるところ。

手にするアコースティックギターのストラップがうまくハマらず、肩掛けではなくステージに腰かけて腿の上にギターを乗せての演奏。ライブハウス側に申請していた内容とは異なるようで、急きょスタッフが諸々のセッティングを整える。

「これがライブ」と楽しそうなTANNYは、本編でも披露した「ANDROMEDA」をアコースティックバージョンにて歌い上げる。先ほども記述した通りロマンチックなナンバーなのだが、アコースティックのためバンド編成よりも声の良さが直で伝わることで、楽曲が持つ魅力の中でも特にスイートな部分がさらに増していたようにも感じる。歌っている最中にマイクスタンドが少しずつずり落ちていくハプニングも起こるが、これもまたライブならでは。

そしてラストを飾ったのは…GOOD4NOTHINGの「ON THE LINE」だった。活動休止や解散ではなく、自身がバンドを抜けるかたちになっているのでGOOD4NOTHING時代の曲はやらないのでは、と思っていた。まさかのチョイスに驚くと同時に、またTANNYの声でこの歌が聴けるという喜びを素直に受け止め、ひとり静かに興奮しながら聴き入る、たまらない時間だ。

彼の歌声と、紡ぎだすメロディは全く色褪せていない。EDMや同期といった前バンド時代にはない要素も取り入れ、新たな魅力と武器を手にして船出をしたALIVES。今日のライブで早くも新曲2曲を投入するなど、セットリストも今後さらに充実していくことだろう。

ステージ上でのやり取りやMCブロックの使い方など、またライブを重ねていく中でいろいろな輝きを放ってくれるに違いない。

最初から最後までTANNYが実に楽しそうに歌い、話していたことが何よりの収穫。経験豊富な新人バンドのこれからに期待大だ。


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