【復刻ライブレポート】2018/2/3 嘘とカメレオン presents「予想は嘘よ」リリース全国ツアー 『嘘つきが蔓延 閻魔がキツそう インストアツアー』 ツアーファイナルワンマン@渋谷WWW X

2022年7月9日、嘘とカメレオンが活動休止前ラストライブを開催。彼らと出会った、メジャーデビュー発表を兼ねた思い出のライブレポートを復刻掲載します。またいつか嘘カメの活躍が見られる日を楽しみに待ちたいと思います。


2017年9月に発売された、キャリア初の全国流通盤「予想は嘘よ」をタワレコで発見したのが彼らとの出会い。印象に残るアーティスト写真とバンド名に惹かれて試聴→即購入してから5か月が経ち、初めて彼らのライブを観る機会に恵まれました。

ライブ一見な自分がその場にいて良かったのかと思うくらい、応援してきたファン(嘘チル、と呼ぶらしい)にとって記念すべき夜となったツアーファイナルを簡単に振り返ってみたいと思います。

開演と同時にステージ後方に設置されたスクリーンに映像が映し出されます。「嘘カメのふしぎ発見」というタイトルで、ミステリーハンター風の渡辺くんがガイド役。「世界!ふしぎ発見」テイストの映像は途中で内容がガラっと切り替わり、メンバーがファイナルへの意気込みを語る、格闘技やM-1の本番直前に流すインタビュー的演出に。このメンバー紹介を兼ねた映像をひとり分流して当該メンバー登場、またひとり流してメンバー登場という流れで渡辺くん、渋江くん、菅野くん、青山くん、そしてチャムさんと5人がステージに揃います。

凝った映像に凝った演出。めちゃくちゃ手間をかけてるなというのが率直な感想です。

ライブが始まる前から高まる期待感。

渡辺くんの「今日一日で伝説を作ろうぜ!」という掛け声を合図に「N氏について」でツアーファイナルスタートです。ぎゅうっと前に詰めるフロア。前のめりな観客の様子にバンドの勢いを感じます。そして早くもステージ袖にいるスタッフ(後でマネージャーさんだと知る)がノリノリで、このチームは良い状態にあるんだなということが伝わってきます。渡辺くんも1曲目からお立ち台にて激しいギタープレイ。立ち上がりは慎重に、なんていうベテラン先発ピッチャーなメンタルなんてなくて、最初から全力で行けるとこまで行く!という今日が初先発の新人ピッチャースタイルが気持ちいい。

「終わりの果てのはなし」は観客の手拍子が曲を引き立たせる。渡辺くんの激しい煽りに負けじと応戦するフロアのオイコールも熱い。ライブ中気になったのは、ギターアンプに乗っているコーラ。これは渡辺くんのステージドリンクか!?→MCタイムのたびにゴクリとやってました。

「ヤミクロ」ではベース渋江くん、そしてチャムさんが軽快なステップを刻み、ステージ全体がポップな空気に包まれる。そんな雰囲気を破壊するかのこどく「建物ごと揺らしちまえ!!」とフロアに喝を入れる渡辺くんはもう絶頂。

MCでも渡辺くんの感情はダダ洩れです。「半端じゃねえ!」「泣きそう…」「(泣くのは)まだ早い!」と思ったことが次々と口に出てきます。

続くブロックでは「輝夜華ぐ夜」「鳴る鱗」「モームはアトリエにて」の3曲を演奏。渋江くんのソロがかっこいい「輝夜華ぐ夜」では曲にあわせてヘドバンする光景がWWW Xに広がります。「鳴る鱗」のときには「自由に踊っていこうぜ渋谷!」という渡辺くんの大号令にあわせて跳ねるお客さんたち。「モームはアトリエにて」は手拍子で盛り上がる場面があるんですが、そのときに渋江くんが自らの頭を手拍子と同じリズムで叩いていた瞬間がありました。そういえば、ラッコのケイスケさんもリズムに合わせて自分で頭叩いてたな。

自らの頭をリズミカルに叩くバンドマンが一度に観られるイベント、それがI ROCKS 2018。嘘とカメレオン、そしてLACCO TOWERが出演するのは3月31日です。どうぞよろしく。

再びのMCでは、渡辺くんのパックトークが展開。今日が楽しみすぎて、前日にパックをしたんだそうです。マネージャーさんが買ってくれる、ということでお店で一番高いパックをチョイス。みんな面白がってくれたのに、実際にパックした顔を写メでメンバーに送っても既読スルーで落ち込んだ、というお話。画像を見た渋江くんが「まるでSlipknotみたいだった」と言っていたのでイメージできました笑。あとでツイッターに載せる、と言った渡辺くん。有言実行ですね。こちらがそのツイート。

<blockquote class="twitter-tweet" data-cards="hidden" data-lang="ja"><p lang="ja" dir="ltr">MCで言った、ワンマンが楽しみすぎてパックをかました俺です。<br>効果としては、毛細管現象でアゴのヒゲがビチョビチョになること。<br>そして右端に写ってる赤いのは、「サザエさん」単行本第3巻です。<a href="https://twitter.com/hashtag/%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%93%E3%82%A2%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#キャビアプラセンタ</a> <a href="https://t.co/lXlmHOCSzs">pic.twitter.com/lXlmHOCSzs</a></p>— 渡辺 壮亮 (@wtnb_laugh_tone) <a href="https://twitter.com/wtnb_laugh_tone/status/960049318857080832?ref_src=twsrc%5Etfw">2018年2月4日</a></blockquote>
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ライブ後半のブロックは「うみねこの鳴く街で」、「キンイロノ」の2曲。激しいノリ、ダンスロックだけが嘘カメじゃないぞ、ということを表現する聴かせる曲たちです。勢いでごまかせない分、演奏技術や表現力が必要となるこのパートでも、しっかりとしたパフォーマンスでフロアを酔わせてくれました。ハンドマイクゆえステージを自在に動けるチャムさんのスタイルと、ミディアムナンバーとの相性も意外と合っている。「うみねこの鳴く街で」はなんだかエモくなるアウトロがとても印象的でした。

MCパートでは、全国40ヵ所を周ったあてぶりインストアライブツアーの話。本来ならバンドスタイルで演奏したいけれど、インストアという制限がある中でそれはできない。ならばバンド演奏を録音し、あてぶりでのライブを実行しよう、ということで計画されたこのツアー。インストアライブで40か所っていうのはちょっと聞いたことがないです。4日に1回は飛行機移動だったというエピソードに「インディーズ=車移動」というイメージが強かった自分にはちょっと衝撃が走りましたが、それにしたってすごいプロモーション活動です。

気圧の変化に弱くて右耳をやられてしまった渡辺くん、沖縄の海辺を散歩したところ視界に道路が見えて興ざめしたという渋江くんのエピソードトークに続いて、今回のツアーで初めて喋るという菅野くんが登場。メンバーからは「寝てばっかりだったよな」とツッコまれていたのは覚えてます。菅野くんは「このあとチャムがしっかり〆てくれます」といったコメントでトークのバトンをチャムさんに渡していて、恐ろしいなこの子…と思いました。

また、タワレコ梅田でのエピソードも記憶に残っています。たとえばイオンではステージの向かいにコンタクトレンズSHOPが…、というようにライブをするには厳しい環境で音量制限との闘いでもあったわけです。そんな中でタワレコ梅田では「音量制限、ないんで」と頼もしい一言。屋外ステージだったそうなんですが、ここからなら梅田の駅まで届きます、というスタッフの発言にメンバーもまさか…と驚く。実際、同じ時間帯にたまたま梅田駅にいた知り合いから、嘘カメの曲が聴こえてきた…という連絡があったそうで、タワレコスタッフの発言に嘘はありませんでした。

そんな全国津々浦々での思い出を語った後は未来の話すなわち新曲からライブ再開。

この「ジョン・ドゥ」という曲はすでに何度も披露しているんでしょうか。冒頭から観客のノリが凄い。めちゃくちゃ盛り上がっていて、とても初聴きとは思えません。WWW Xの床が揺れる揺れる。渡辺くんのラップが炸裂する個性的な曲です。

本日10曲目は「Lapis」。「ハンドクラップくれますか?」「跳べぇぇぇ!」と終盤まで変わらない渡辺くんの煽り。そして1曲目からさらに増しているようなフロアの熱狂。後方エリアにいる人も手を上げたり手拍子したり。曲中にチャムさんが言った「みんなとの約束、果たしに来ました!」という言葉に、きっと全国で実施したインストアライブから繋がっているメッセージなのかな、と勝手に思いを巡らせてみたり。

「あなたたちがいないとライブは成立しないんだと改めて思いました」というメンバーの言葉。そして友達のような関係性で手伝ってくれたスタッフ、照明やPAさん、関係者への感謝の言葉。綴られていくメッセージから、嘘カメがどれだけ周りの人たちのことを考えているのかが伝わってきました。こういう関係が築けているチームは強いぞ。

「まだ見たことのない大きなステージへ、一緒に進んでくれますか?」とチャムさんは言う。これはきっと、ライブ後に発表されることへの布石でもあったんでしょう。

最後のブロック。観客に手を上げさせて「俺たちの武器はこの楽器、お前らの武器はその拳、どっちが強いか勝負!」とラストの煽りで完全燃焼へと突き進むWWW X。演奏されたのは「されど奇術師は賽を振る」。現時点での嘘カメの代表曲でもあります。菅野くんもアグレッシブにプレイしていて、いよいよゴールに向かってまっしぐら。終盤特有のうねりを感じます。

最後のMCでは、いつも大切なものは目に見えないって言ってたけど、今日見た景色は本当に大切なもの、と伝えるチャムさん。そして、どこまでも一緒に進みましょう、連れていくので!と力強いメッセージも。

本編最後、12曲目は「盤下の詩人」。フロアの観客たちを指さしながら、めちゃくちゃいい笑顔が弾けているチャムさんの姿が、今日のライブの充実っぷりを物語っています。

アンコールで再登場した嘘カメによる13曲目は、「ジョン・ドゥ」に続く新曲の「フェイトンに告ぐ」。この曲でのフロアのノリが、いかにも新曲らしくて楽しかったなあ。手を上げて楽しむ人、手拍子して盛り上がる人。手拍子もテンポが人によってバラバラで、まだ統一できていない感じが凄くいい。別に揃う必要もないですもんね。初めて聴いて、自分が感じたように盛り上がるフロアは素晴らしい。揃っている楽しさもあるけど、無理やり揃えなくたっていいんですから。

1曲目でもノリノリだったマネージャーさんが再び袖に出現…というか出現しているっぽい。1曲目のときよりも奥にいるので全容は見えないけれど、ノリまくっているせいでちょいちょい見切れてるという…。マネージャーがバンドを愛さずに誰が愛すんだ!っていうくらいに楽しんでいる様子が伝わってきて、思わずこっちが笑顔になってしまった。

ツアーファイナル最後の曲は、本編でもやった代表曲「されど奇術師は賽を振る」。同じ曲を本編とアンコールで合計2回演奏。ワンマンを開催できるほどの動員があるのに持ち曲が足りないというのは、キャリアを人気が追い抜いていく、勢いが凄まじい若手バンドに起こる現象のひとつですね。

全14曲をやり切った嘘とカメレオン。最後の記念撮影に登場したカメラマン…髪の色がまたちょっと変わってたので一瞬「ん?」と思ったけどやっぱり橋本塁さんでした。ライブ撮影を塁さんにお願いするってことは、相当気合い入ってたなチーム嘘カメ。

すべてのプログラムを終えて、ステージを去っていくメンバー…と書きたいところですが、なかなか帰りません。スティックやピックをフロアに投げ込み、フロア前方にいるお客さんたちとハイタッチをして。本当に本当に名残惜しそう。これでツアーも終わりだから、そして今日のライブがめちゃくちゃ楽しかったから、なんでしょうね。こんな風に終われるツアーができたというのは、きっと彼らにとって大きな財産になるに違いない!

さあこれで終わった。お客さんもそろそろ帰ろう。そんな空気の中で場内は暗転します。実はチャムさんが最後まで名残惜しそうにお客さんと触れ合っていた時、ステージ後方に再びスクリーンが出現したんですよね。(ライブスタート時には幕で隠されました)

勘のいい人は、これは何か告知があるな!?と思ったかもしれませんが、場内が暗くなって確信に変わったことでしょう。

アルバム発売?タイアップ獲得?イベント出演?

一体どんな告知かとワクワクしている観客に提示されたのは、6月6日にキングレコードからメジャーデビューする、というビッグニュース!

一気にバズって人気急上昇中の嘘カメなら、いろんなレーベルから声がかかったんだと思います。その中でキングレコードを選んだ理由。それはきっと「人」なんじゃないかなあ。嘘カメの過去の活動内容なんかを見てみると、打算って単語が見えてきません。これをやったら面白いんじゃないか。これならファンが喜んでくれるのでは?そういう視点で行動しているような。

キングレコードはAKBやアニメ、演歌の印象が強くてロックバンド、特に若いバンドの名前はあんまり聞きません。「売れる」ということを考えたらもっと若手バンドをゴリゴリに売り出しているレーベルが他にもあると思うんですが、それでもキングレコードを選んだというのは、「この人たちと一緒に成功したい」と思えるような出会いがあったからなのかなあと。いや、もしかしたらアニメが強い=アニメタイアップが取れる=世界で売れる、という思惑があるのかもしれないですけどね。本当のところがどうなのかは本人たちにしかわかりませんから、外野の戯言として受け流してください…! 勝手に都合のいい物語を作ってしまうのが外野の悪い癖。

とにかく。

今日の発表をもって、嘘とカメレオンはメジャーへの道を進んでいきます。これからどんな楽曲が生まれてくるのか。どんな活動を展開していくのか。メジャーの予算でインディーズ時代のようなハチャメチャなことをやってくれたら痛快ですね! これからの嘘カメから、ますます目が離せなくなりました。

セットリスト

01.N氏について
02.終わりの果てのはなし
03.ヤミクロ
04.輝夜華ぐ夜
05.鳴る鱗
06.モームはアトリエにて
07.うみねこの鳴く街で
08.キンイロノ
09.ジョン・ドゥ(新曲)
10.Lapis
11.されど奇術師は賽を振る
12.盤下の詩人

EN.

13.フェイトンに告ぐ(新曲)
14.されど奇術師は賽を振る

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