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【ライブレポート】2023/7/17 LACCO TOWER『独想復活祭』@リキッドルーム

毎年恒例となった、リキッドルームでのLACCO TOWER周年記念ライブを観た。コロナ禍を経て、ようやく各種制限もなくなった状態で迎えた今日のライブ。

環境こそコロナ前に近いものの、ステージに立つメンバーたちは、この数年でたくさんの傷を負いながら、ますます逞しくなった――そんなことを思わせてくれる素晴らしいライブを振り返ろうと思う。

コロナ前×LACCO TOWERの周年ライブ@リキッドルームといえば、ひとつ欠かせないものがある。それが「みこしーズ」の存在だ。

開演時間になると、フロア下手にあるDJブースエリアに法被を着た7人の男たちが登場。《ラッコラコラコラッコ》「セイヤ!」《ラッコラコラコラッコ》「ワッショイ!」といった具合に、みこしーズとフロアのラッ子(LACCO TOWERファンの名称)による掛け声が響くなか、みこしーズは神輿を担いでフロアを練り歩く。

ぐるり回って元の場所に戻ると「LACCO TOWER結成21周年記念公演『独想復活祭』、開幕!」の開会宣言が飛び出し、場内にはSEでストリングスアレンジの「狂想序曲」が流れ始める。

やげて全身を黒衣装でまとめた重田雅俊(Dr)、真一ジェット(Key)、塩﨑啓示(Ba)、細川大介(Gt)が順番に登場し、バイオリンやビオラ、チェロによって構成された“狂想カルテット”の4人、Lisako(大島理紗子)、小林修子、古屋聡見、グレイ理沙の計8人がステージに揃うと、オープニングナンバー「罪之罰」が始まる。

イントロ途中で遅ればせながら現れた松川ケイスケ(Vo)の歌声が轟き、『独想復活祭』が幕を開けた。

駆ける重田のドラム、勢いある動きを見せる啓示と大介、真一、そして鮮やかな光の下で気合いたっぷりなケイスケという5人が華々しく恵比寿の夜を彩る。

ケイスケは「『独想復活祭』へようこそ!」と絶叫し、その直後「恵比寿の皆様こんばんは。昨年この場所で二十歳を迎えまして、それから幾度もバッタンバッタンバッタン倒れてようやくこの場に復活することができました。あらためまして、群馬から参りましたLACCO TOWERですどうぞよろしく!」と挨拶。

早くもこのタイミングで大介はレフティギタリストへと変身し、2曲目「必殺技」へ。昨年の周年イベントにてジストニアであることを告白し、レフティへの転向を発表した大介だが、もうそこに同情や哀れみなどという感情を乗せること自体が失礼だと、そう思わせてくれるプレイで魅せる。

ケイスケがフロアを見渡しながら笑顔で拳を煽れば、これに応えてフロアも勢いよく手を掲げる。また別の場面では息ピッタリの手拍子も。狂想カルテットも、演奏パートがないときはフロアと一緒になって盛り上がっている。

続く「仮面」では、ケイスケの「ギター!」の合図で目も耳も吸い込まれるような大介のギターソロも飛び出した。歌うように美しい大介のギターはいつ聴いてもまさに「酔いしれる」という表現がふさわしい。

《ほら見上げた 紺碧の空は》のタイミングで、フロントメンバーが一斉にお立ち台でパフォーマンス。圧倒的に絵になる3人だ。

「林檎」では呼吸を合わせてくるり回転する啓示と大介、さらにスポットライトの下でドラミングする重田、キーボードの椅子の上に立ってその場で駆け足する真一と各メンバーが続々見せ場を披露。文字通り全身を使って歌うケイスケの力強い姿に早くも胸が熱くなる。

激しいブロックが終わると、ステージには淡い光が差し込み、真一によるしとやかなピアノソロの音がこぼれていく。こうして始まったのは「夕顔」だ。三拍子のリズムが心地よく、色気をたっぷりと漂わせながら歌うケイスケのその表現力の豊かさを、一瞬たりとも逃すまいとじっくり聴き入るフロアの静寂が美しい。

重田、真一、そして啓示&大介という順番でスポットライトを浴びながら演奏を繋いで幕を開けた「泥棒猫」。《ハイカラな靴を鳴らせば》の歌詞に合わせ、自身の靴をサラリ指さす、ケイスケらしい所作も楽しい同曲は、LACCO TOWERの魅力のひとつでもある、歌謡ロックの真骨頂ともいえる楽曲。陰りを帯びた歌詞とメロディ、そして艶やかな歌声の化学反応に痺れてしまう。

また、LACCO TOWERのステージを鮮やかに彩る照明スタッフの仕事ぶりにも感動する、そんなシーンの連続でもあった。

真一のキーボードとLisakoのバイオリン演奏でスタートしたのは「花弁」。そのままケイスケの歌声が重なり、3人だけでワンコーラスまで進むと、重田のオープンハイハットによる4カウントが入り、全メンバーが合流するという怒涛の構成が楽曲に勢いをもたらす。

Lisakoは、ケイスケが喉の不調でしばらく離脱していた間に開催された『四人囃子と御客人(おきゃくじん)』と題されたライブにも出演しており、LACCO TOWERの新たなメンバーともいえるほど濃い時間を共にしてきていたためか、狂想カルテットの中でもひと際、そのパフォーマンスはアグレッシブ。ロックヴァイオリニスト、と呼んでもいいくらいの暴れっぷりが気持ちいい。

「花弁」が終わると再び、真一がゆったりと鍵盤から音を引き出し、大介のギターが寄り添うと、ケイスケの歌声が加わって「蛍」へ。

《ほんのり光った横顔に》の歌詞とリンクするように、大介の右頬にケイスケが手を添えるシーンはもちろん、感情を乗せて歌うケイスケのボーカリストとしての素晴らしさにもうっとりだ。さりげなく耳に入る啓示のベースにも色気が漂う。

ストリングスが加わった長いアウトロが生む余韻も含めて、壮大で秀麗な光を放つ「蛍」だった。

ここで最初のMCブロックへ。ケイスケは語る。「我々、21周年迎えることができました。ありがとうございます。リキッドで周年を祝わせてもらうのは今日で10回目。20年前は、やっぱりもうちょっと違う景色をイメージしてたことも正直、ありました。サンタクロースは実在しているような気もしていたし、机を開けたら青い何かが出てくる気がしてたし。予想通りにはいかないもんです」

「真一が肋骨折るなんて思ってもいませんでした」

「思った通りにはなかなかいきませんけれど、それでもみなさんとこうやって21周年を迎えられたこと、ホントに誇りに思います」

そう話し、あらためて今日を盛大な一日にしようと声をかけると、「全ての、青年に捧げます」と告げ「青年」を披露する。フロアからはまさに盛大な手拍子、狂想カルテットもフロアをガンガンに煽っていく。

立ち位置を交換して演奏する啓示と大介が、入れ替わる際にふたり笑い合い、何やら言葉を交わす場面も。

先のMCで「机から青い何かが出てくる気がしていた」と話す内容が前フリとなる、《机の中からメカの猫はまだ来ないようでいらいら》の歌詞も印象的な「青年」の、かつての夢が破れても、描いていた理想と異なる今だとしても、幸せな明日を――とのメッセージが沁みる。

子供の頃の夢とは違う、二十歳前後に抱いた、現実と地続きの夢や希望が手からこぼれてしまった今の自分と重ねながら聴く。これはかつて青年だった人に向けた歌。それも、ただ「頑張れ」と応援するような曲ではなく、自省も促しながら背中を押してくれる歌だ。

最後の《いつか笑えるように》というフレーズに合わせ「笑って帰ってくれ!」と叫んだケイスケは、続けて「今夜は未来の前夜だと、そんな曲」と告げ、「未来前夜」へ突入する。

ここでもLisakoのパフォーマンスがキラリと光る。ステージ上で一番激しいのでは、と思わせるほどのアクション。編成上、狂想カルテットはフィーチャリング、あるいはゲストという位置づけになるが、メンバーと一体化するかのような高い熱量でのアクトに感激してしまった。

ストリングスが加わったスケール感たっぷりの演奏、そして「辛い奴は手を上げろ!」というケイスケの声に反応し、フロア中の手が上がる圧巻の景色が残像となって脳裏に焼き付いた「未来前夜」の後は、LACCO TOWERの5人だけによるタイトなバウンドサウンドでの「夜鷹之星」。空気を切り裂くようなケイスケの絶唱と、柔らかいコーラスワークのコントラストが絶妙だ。

「今日は我々の誕生日です。せっかくならみんなのWOW WOW WOW WOWをいただいてもいいでしょうか? 頂戴!」

こんなケイスケの煽りにフロアから「WOW WOW WOW WOW」の声が上がり、「閃光」へ。お立ち台で堂々仁王立ちのケイスケが眩しい。ザスパクサツ群馬の公式応援ソングでもあった同曲のイメージカラーと言ってもいいかもしれない、青の光がリキッドルームを照らし、勇ましい楽曲に合わせるかのように演奏そのものも攻撃的だ。

「揃いも揃って傷だらけの皆々様に、こちらのナンバーをみんなで一緒にお送りしたいと思いますが、準備はよろしいですか?」

ケイスケのこの合図をきっかけに、ザラついた大介のギターリフが繰り出され、真一がショルキーを肩にかけ、スタンバイ。真一がフロントに躍り出る名曲「傷年傷女」と共に、エンターテインメントショウの始まりだ。

2拍、4拍で拳を上げるフロア。センターお立ち台で真一が主役を張れば、ケイスケはキーボードを触れながらの歌唱。ワイプアクションも綺麗に揃うラッ子たちの一体感たるや。

サビではケイスケがお立ち台で、華麗に右足を蹴り上げる一幕も。一方の真一は、DJブースエリアへと進出し、躍動する。曲の終盤、重田と狂想カルテット以外の全メンバーがステージフロントで暴れまくる姿は、まさに「復活祭」の名にふさわしいお祭り騒ぎ。

演奏を終えると、ステージ袖のローディに向かってド派手にショルキーを放り投げる真一。最後まであっぱれな主役っぷりだった。

そんなカオスを演出した「傷年傷女」から一転、鍵盤の悲しい音色でライブを演出する真一。たっぷり贅沢な独演を経て、いつの間にかタンクトップ姿に変貌していた重田のドラムを合図に「純情狂騒曲」を披露する。

LACCO TOWER楽曲の醍醐味ともいえる、どこか不穏なA・Bメロから暴れるように大きく飛躍するサビのカタルシスがたまらない。フロント3人の横並びなパフォーマンス、そして大介の唸るギターによるソロプレイに圧倒される。

「準備はいいかいリキッド! たったひとりの俺みたいな奴に負けないくらいのでっかい声、いただけますでしょうか」

こんなケイスケの呼びかけから、15曲目「化物」がスタート。荒々しさがさらに増量するステージでは、啓示の超低空ベースも炸裂する。さらにお立ち台から豪快ジャンプも繰り出すなど、ライブ終盤にも関わらず底知れぬスタミナを垣間見せる、株式会社アイロックス社長の姿が輝いていた。

最後の曲を演奏する前に、ケイスケがLACCO TOWERを愛する人々にメッセージを伝える。

「去年は、俺の隣にいる彼女が――」と言うと、大介は自ら右手を頬に当てる、ガーリーな仕草を見せて会場を和ませる。そんな一幕を交えながら、話を続けるケイスケ。去年の周年ライブにて、ジストニアによって右手でギターが弾けなくなってしまったことを告白した大介について言及。

「右で弾けないから左でやる、という小学生みたいな発想で、向こうを向いていたギターが、俺のほうを向くようになりました。今日もほとんど左で弾いています。自分からは言わないから」

大介の病気の告白を、あの日、自分の腕がもげるくらいの気持ちで聞いていたというケイスケだったが、今度は自分自身が機能性発声障害という病気で声が出なくなってしまう。

声の治療に専念するため、ケイスケ自身のライブ活動休止を発表した昨年12月のライブを最後に、「今日のようにステージに立つことはもうないのでは」「もうこの活動は無理だろう」と思っていたと明かす。そして「今日この景色がいまだに信じられない。一回なくなりそうになったものやから、二度となくしたくない。今日やりながら、いろんなことを胸に思っていました」と続ける。

さらに「1年経って、左で弾けるようになった大介が偉いのか、声が出るようになった俺が偉いのか。その間ステージを繋いでくれた四人囃子が偉いのか。……全然違うのよね。みなさん気づいてないと思うけど、ホントに偉いのは、そんなバカみたいな約束をアホみたいに信じてくれて、白紙の手帳にリキッドルームがあると、あの5人組に会えると。子供がいる人は、子供に風邪を引かさないようにしてくれたでしょ。仕事がある人は、仕事の都合をつけて来てくれたでしょ。やるかやらないかわからない、あいつらホントに大丈夫かみたいな俺らを信じて、この景色をプレゼントしてくれたあなたたちが、いちばん偉いんですよ。最高の誕生日プレゼントでした、どうもありがとね」と、LACCO TOWERを信じて待っていたラッ子たちに向けて最大限の感謝を伝える。

そして、話は未来へ。ケイスケの祖母が言っていたという「貰った恩は返せ。筋を通せ」の言葉を想い、自分たちに何ができるのか考えていたケイスケは、今日ライブをやってみて、ファンの顔を見てなんとなくわかったと語る。

「あなたたちの新しい手帳に、LACCO TOWERのライブがある、それを書いてもらう。それを続けること。旅行って終わると寂しいけど、計画しているときがいちばん楽しいやんか。その楽しみをずっと与え続けること。それが一番の恩返しだと、筋を通すことなんじゃないかと、さっき歌ってて思いました。だから俺らはやるよ。やり続けるよ。時間があるかぎりでいい、いろんな都合で来れへんこともあるやろう、それでもいい、俺らはやり続けるから。みんなにまた会える日が来るまでやり続けるから。21年間、素晴らしい愛情をどうもありがとう」

この言葉を聞きながら、ひとりの友人を思い浮かべた。つい数日前、この日のライブ直前に起こった、秋田県の豪雨災害。LACCO TOWERのライブを誰よりも楽しみにしている友人が、秋田にいる。彼女の身に降りかかる、容赦ない天災になぜかこちらまで悔しくなってしまったが、様々な障害を乗り越え、彼女は無事にリキッドルームに来ることができた。本当に良かった…。

彼女にとって、間違いなく生きる原動力のひとつになっているであろう、LACCO TOWER。彼女だけじゃなく、きっと多くの人が、LACCO TOWERのライブがあるから仕事を、勉強を頑張ろうと、手帳のメモを、Googleカレンダーの予定をひとつの目標に日々を暮らしているのではないだろうか。

そしてLACCO TOWER自身も、待ち受けているラッ子たちの笑顔や歓声が、ステージに立つ原動力になっているに違いない。

ケイスケは、感謝の言葉を伝え終わると、「歌える人は歌ってください」と言葉を紡ぐ。ステージ、そして会場中の《ララーララーララー》のリフレインと共に「たくさんの愛情をどうもありがとう!」と添えて「愛情」を披露し、本編は終幕となった。

フロアから沸き起こる、LACCO TOWERのライブではおなじみ「ラッコラコラコラッコ!」というラッコ節のアンコールに応えて、黒衣装から白Tシャツへとチェンジした5人が再びステージに登場。

「アンコールどうもありがとう! 欲張りなもんです、また声もらってもいいですか皆さま?」というケイスケの言葉から「OH OH OH OH」のシンガロングが響き、「雨後晴」でライブ再開。白い衣装の印象もあるためか、軽やかなパフォーマンスだ。ジストニア、機能性発声障害、肋骨骨折といった“雨”の日々を経て、今宵“晴”のステージに立つLACCO TOWERを体現するような楽曲だからこその軽やかさなのかもしれない。

1曲演奏を終えると、フロア下手、DJブース後ろに設置されたスクリーンにて、以下の発表がなされた。

■全国4都市を巡る、四人囃子リベンジツアー『五人囃子の恩返し』開催
■LACCOTOWER ワンマンライブ『独想演奏会』ホール公演 12/3開催

歓声でフロアが沸くなか、アンコール恒例になっている、メンバーそれぞれのコメントタイムが訪れる。各自の発言については以下にまとめておこう。

■塩﨑啓示
「感無量ですね。ひとつ決めたことがあって。LACCO TOWER21年やって、ある程度地元でフェスやってリキッドルームで毎年やらせてもらって、ある程度ツアー回って、ある程度仲いいバンドと一緒にやって、だけじゃなくて、皆さんに挑んでいく姿勢、超えていく姿勢とか目指していくこととか(見せていきたい)。

俺の中でのロックの定義なんだけど、俺らロックバンドでいたいんで。そういうことをみんなで話し合って、「そうだよな、挑むよな」って話をしました。今日は誕生日なので、公言というか、皆さんの前でそれを言いたくて。今後ともLACCO TOWER、よろしくお願いいたします」

■重田雅俊
「21年続いたんだけど、20周年終わってまた1年目、新たなスタートです。啓示も言ったけど、もっと超えていくから。声出そうぜ! 今日は今日しか!『(ラッ子)ねえからな!』THANK YOU!『(ラッ子)ROCK YOU!』」

■細川大介
「何年か前までは僕は辞めようと思っていたので、こうやってまたみんなの前に立ててるのが信じられないくらい嬉しい。ありがとう。1年前に病気の告白をして。その時は1曲だけ最後に弾かせてもらって。辛いこともいっぱいあるわけですよ。なんでこんなプレイしかできないのか、って毎日悔しくて泣いてます。

こうやって1年経って、皆さんがこうして来てくれることにホントに感謝しています。

バンドって自分のことじゃないのよ。俺のチャレンジはバンドのチャレンジ。俺のせいで嫌なことになってることもいっぱいある。あることないこと言われたって、俺だけじゃなくバンドのせいに、会社のせいになっちゃう。それでもこうやって俺が挑戦したいって言ったのを許してくれて、一緒に挑戦してくれてるメンバーを尊敬しています。ありがとうございます。株式会社アイロックスにも大きな拍手をお願いします。

今日もやってて、10回くらい『ふざけんな、悔しい!』って言ってるのよ、曲が終わって。はっきり言って今は右で弾いたほうがクオリティ高いものを見せられると思う。でも僕は未来を見ていたいんですよ。みんなとも、メンバーとも一緒に10年後ももっといい景色を見たい。だからチャレンジしたいし、みんなにも無理を言うけど、マジでついてきてほしい。俺はマジで世界一カッコいいギタリストになるから。そしたら世界一カッコいいバンドになるから!」

ここでいつものお約束の流れ。ケイスケが、コメントタイムを切り上げるべく「以上のメンバーで」と〆ようとすると、真一が「おーーーーーーーい!」とツッコミを入れる。気にせず〆コメントを発するケイスケの後ろで「何か忘れてるなあ~。肋骨は今、ここで砕かれた!」とぼやく真一が可笑しい。

■真一ジェット
「年末に肋骨折っちゃって。実際、この骨折でライブを1本飛ばしてしまった。コロナもあったけど、肋骨折ってライブ飛ばしたときはマジで情けなくて悔しくて。こんなに悔しいことがあるんだ、こんなに涙が出ることあるんだって。

その想い、ケイスケなんてもっと悔しかったんだろうなってすごい思ったし。こうやってここで『復活祭』というかたちで5人揃ってライブができてみんな来てくれて。ホントに感無量です。未来の話もできて。これなんて言うか知ってますか?

感無量です

「(感無量って)ちょっと前に言ってるよね?」というケイスケのツッコミにも動じず、今日イチのパワーワードを生み出した真一、さすがLACCO TOWERを代表するクリエイターだ。

最後にケイスケが「アンコールもう1曲だけやらせてもらっていいですか」と演奏再開の流れを作り、“ラッコちゃん”を呼び込む。ラッコの着ぐるみ…いや、ラッコの姿をしたキャラクターだ。

そしてこの後、ケイスケはちょっとしたサプライズを用意する。

「ラッコといえばこの曲だろうという曲をお届けしたいと思いますけれども…、夏でしょ? 実は最後の曲『藍染』じゃないんですよ」

「藍染」とは、LACCO TOWERにおける夏の代名詞といえる曲だ。フロアからは「えーーーーーーー!」というガッカリが塊となった声が。

「でもこのままだと俺が夏乗り越えられそうにないんで。誰にも言ってないんで、さっき大介に言っただけです。アカペラで歌わせていただいてよろしいでしょうか?」と言い、歓声が生まれるなか、すぐに《藍染をした浴衣がとても》と「藍染」をアカペラで歌い始めた。そんなケイスケの後ろでせわしなく何やら相談するメンバー4人。そして他のメンバーに促された重田が、アカペラ区切りのタイミングでドラムスタート!

「やるの? やるの? やるのマジで? じゃあやるわ藍染!」と驚きつつも嬉しそうなケイスケと、それ以上の喜びの声をあげるラッ子たち。

こうしてバンド演奏での「藍染」が始まった。

ステージに残った“ラッコちゃん”もノリノリで踊りだす。大介の頭を包み込むように抱き寄せるケイスケは「マジでやると思ってなかった!」とこちらはこちらでまだ興奮状態だ。予定にはなくともメンバーそれぞれに見事な演奏を見せ、大介はギターソロも繰り出す。

《その白い肌も》の歌詞を、“ラッコちゃん”を触りながら《その毛深い肌》と替えて歌う遊び心もチラ見せする大サービスっぷり。

ステージ向かって左に啓示、右に大介と隣同士体を寄せ合って演奏するふたりのネックが交差する。大介がレフティだからこそ実現する光景だ。

「藍染」が終わると、本来予定していたプログラムへ。「キタキタキタキター!!!」という大介の絶叫を合図に、「ラッコ節」が始まった。啓示、大介、狂想カルテット、真一、重田、そしてラッ子の順番に「ラッコ!」と叫び、短くも激しい、刹那の激情がリキッドルームを覆う。

そしてケイスケの「最後みんなで笑って帰りたいと思います! 今日という夜に、一夜!」というメッセージから、今日のラストナンバーとなる「一夜」へ。フロアは手拍子の海。メンバーたちは皆穏やかな笑顔を浮かべている。みこしーズや、「ラッコ節」が終わって退場したラッコちゃんもステージに現れ、金テープも発射と賑やかな〆。

最後は21周年にちなみ、全員で21カウントを行い、『独想復活祭』は終幕を迎えた。

過去、今、そして未来と3フェーズのLACCO TOWERを言葉と音楽で示し、高らかに復活を宣言したライブは、単なる周年ライブの枠を超えて、新しいLACCO TOWERのアティテュードを表現する場になったのではないだろうか。

メンバーたちは気づいていないかもしれない。自覚はないかもしれない。

彼ら自身のチャレンジする姿勢、それを打ち出す姿勢が、彼らを愛する一人ひとりの心に火をつけて、その人の人生の一部、あるいは人生そのものを変える力があるということを――。

セットリスト
01.罪之罰
02.必殺技
03.仮面
04.林檎
05.夕顔
06.泥棒猫
07.花弁
08.蛍
09.青年
10.未来前夜
11.夜鷹ノ星
12.閃光
13.傷年傷女
14.純情狂騒曲
15.化物
16.愛情

EN.
17.雨後晴
18.藍染
19.ラッコ節
20.一夜


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