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【ライブレポート】2022/11/11 Jam Fuzz Kid pre. ONE MAN SHOW @ 渋谷WWW

Jam Fuzz Kidが渋谷WWWでワンマンライブを開催した。今年3月、同じく渋谷WWWにて開催された『of BLUE LAB vol.4』にて、ボーカルのRiki Imamuraが「WWWは目標としていたライブハウス。2022年末までにはここをパンパンにするんだ」と話していたことがとても印象に残っている。

そんな発言を踏まえての、今回のライブ。あの場にいた者として参加しないわけにはいかないと思い、足を運んでみた。

開演20分前の時点では、まだ各フロアの柵前に人が並ぶ程度だったが、開演間近に次々と来場者が。最終的にはしっかり観客で埋まり、Jam Fuzz Kidを迎える準備万端整った。

ほどなくして、入場BGMとして流れていたサカナクション「忘れられないの」の音が大きくなり、場内暗転、胸が高鳴る。

登場SEの「The Shock Of The Lightning(The Jagz Kooner Remix)」と共に激しい光の点滅、そしてメンバーがステージに。アサイリュウ(Gt)、ヤマザキタイキ(Gt)、John S.Kobatake(Ba)、サポートドラムのオオコシタクミがスタンバイすると、最後にRikiが登場。

三つ編みお洒落なヤマザキ、そしてかつて坊主頭がトレードマークだったRikiも髪が伸びており、ビジュアル一新だ。

「Jam Fuzz Kidですよろしく!自由に体揺らして!」

そんな言葉を合図にオープニングナンバー「Fringe」でライブスタート。重くどっしりした楽曲で、いきなり大物感溢れる開幕。続く「Rovers」も、WWWをより大きく見せるようなスケールのある楽曲で、早くも会場には彼らのライブに酔いしているような空気が。

「今日は来てくれてありがとうございます! 俺ら全力で踊るんで良かったら皆さんも踊ってストレス発散して帰ってください」

そんなRikiの言葉を挟んで「Tunmbleweed」。グルーヴ感たっぷりで体も揺れる。まるでWWW内の温度もグングンと上がっていくようだ。ステージ前方で歌うRikiが前を向いたまま後ろに下がった際に、そこでギターを弾いていたアサイと軽くぶつかる。そのときサッと手を上げてアサイに謝るRiki。

両足を前後に広げてジャンプするRikiや、グイっと背中を反りながら演奏するヤマザキと目で観る楽しさも随所に散りばめられたパフォーマンスだ。

「マジ最高! 来てくれてありがとうございます! 超人いるし超嬉しい。1年前に計画して温めてきたライブ。開催できて嬉しいし感謝です」

「楽しみ方は自由なんで。この場所だけは何をやっても恥ずかしくない場所だと思ってるんで。友達や家族、職場の人に見られても恥ずかしくないんで全力でぶちまけてください」

そんなMCから、最新EP『DANCING IN SWEET ADVERSITY』収録の「anomie」を披露。すでにリリースから数ヶ月経ち、すっかりファンにも馴染んでいるようで会場のあちこちで手が上がっていた。

「Parade」では、イントロを飾るJam Fuzz印ともいえるギターリフが鳴り響くが、その音色が音源とまったく異なっていた。ざらついた音が魅力の音源と比べ、1本の硬い線のような音色が新鮮に耳に響く。

「Where we gonna go」での終盤、最後の盛り上がり前に《Gonna start a revolution》を連呼するパートでは、ラストへの飛躍を予感させる、青い照明とも連動したまるで胎動のような演奏にゾクゾクした。

「忘れちゃうとアレなんで」と、年末ライブの告知を挟み、「体調悪い人いたらまわりの人が助けてあげてください」とお願いしつつライブは中盤へ。

控えめな照明の中、糸を引くかのような粘り気のあるKobatakeのベースが印象的な「Canal」。オオコシの静かでありつつダイナミックなドラミングも観ていて楽しい。サビに向かって光が増し、ミラーボールも細やかなキラキラをWWWに降らせていく。

一転して鮮やかなオレンジの光に包まれた「Floating away」でアッパーな雰囲気が醸成されると、「新曲やるんで、体動かす準備できてますか? 俺と一緒に上に跳べる人は跳んでください!」とRiki。ドラムが放つ「カンカンカンカン」の乾いた音が耳に残る、体感2分弱のショートな新曲を披露する。

続いて、赤い照明がまるで戦闘モード突入を宣言するような「601」でアグレッシブな歌唱が始まる。ヤマザキのギターソロ中にはRikiがエアでパンチ&キックを繰り出すなど、パフォーマンス全体が攻撃的だった。

MCでは、「暑い」と言いながらロンTを脱いでタンクトップ姿になるRiki。「バンド始めて丸4年、メンバーも替わって。そう、今日来てるんですけど、替わったメンバーもね。みなさん探してみてください。(旧メンバーに向けて)ごめんね~!」と、卒業メンバーにも触れつつ、バンドのこれまでを語る。

「大学出て普通に就職する道も楽しかっただろうなと思うんですけど、やりたいことやらせてもらってすごく嬉しいんですけど、ちょっと寂しい気持ち、悔しい気持ちもたくさんあってここに立ってます」

「昔はお客さんひとりとか、今日みたいな大きな会場でよっしゃ!と思ってたら5人だった、みたいなこともめちゃめちゃあったりしたんですけど、こうしてすげえいい景色観られてめちゃくちゃ嬉しいです」

「俺らは今んところ、今んところっつうか、続いていくんで、応援よろしくお願いします」

そんなエモな雰囲気を生み出すMCから後半戦へと突入。アサイがリードギターを、ヤマザキがギターソロを担うなどそれぞれのギタリストに見せ場、聴きどころがある「yonder」や、「大学の友達みんなに書いた曲」だという「Afterglow」を立て続けに演奏する。

さらに「We are Jam Fuzz Kid! Rock'n Roll band from Tokyo」と名乗り、「俺らが日本を代表するロックンロールバンドなんで、よろしくお願いします!」と宣言すると「consequences」へ。気づけばオオコシがかけていたグラサンが消えていた…。一段ギアを上げるかの如く、スイッチが入って、アサイも積極的に前に出てフロアを煽っていく。

続く「KABUKI」でも熱量は下がらず、Rikiはステージ前の柵に足掛け、グイグイと攻めるパフォーマンスで会場を惹きつける。

次の曲でドラムとベースによるイントロが始まると、フロアからは自然とワクワク感が溢れだす。Jam Fuzz Kidの名刺代わりともいえる、代表曲のひとつ、「Tyler」だ。当然ながら盛り上がりも最高潮、フロアからは無数の手が上がり、その景色はまさに壮観。1年前でも曲の立ち位置(代表曲)は変わらないが、当時はまだちらほら手が上がればいいというくらいだった。あの頃から考えると感慨深いものがある。

Kobatakeとヤマザキによるコーラスも映える。アサイの激しいアクションでギターシールドがぐしゃっとなってしまい、すかさずローディがケア。その様を見てアサイはすぐに手を上げ、ローディに感謝を伝えていた。

先ほどのRikiもそうだが、ステージ上で何かトラブった際、相手にすぐ謝罪や感謝の気持ちを伝える彼ら。性格の良さがにじみ出ているシーンがいくつもあった。

曲が終わると、RikiによるMC。「世の中いろんなことが起きたりいろんな考えがあったり、幸せな人もいれば幸せじゃない人もいて、それは人の価値観によって違うと思うんですけど、たとえば肌の色が違ったり、俺らは日本人で英語で歌ってるように言語が違ったり髪の毛や目の色が違ったり、いろんな違いがありますけど、音楽はそれをぶち壊せるって俺は信じてるし、ここに老若男女、いろんな人が集まってくれてるように、マジでピースな場所を作れるのが音楽だと思うんで。これからもそれを信じてロック、日本でやっていくんで」

そう真摯に、真面目に語った直後、照れ隠しのように「大売れしてお金持ちになるんで、その手助けしてください、よろしくお願いしまーす!」と付け足すあたりが可愛らしい。

ここからはラストスパート。まずは「Pluto」。イントロでの、右肩上がりのギターリフが曲の、そしてライブ全体のさらなる盛り上がりを体現しているようだ。

「めちゃくちゃカッコいい曲やります」という力強い宣言からの「Shimmer」。緩急つけて連打するドラムに合わせた照明演出も冴え渡る。Kobatakeのタッピング演奏、そしてアサイとヤマザキのツインギターが咆哮を上げる。Rikiの歌声だけが武器じゃない。ロックンロールバンドとしての華があるのが、Jam Fuzz Kidだ。

「長い間ありがとうございました。次でラストの曲なんで、淋しがってください。俺らアンコールないんで」

唐突なコメントに会場からは「えーーー!」と残念がる声があがる。するとRikiはこう言った。「あのね、早いよアンコールはまだ。横浜アリーナとか武道館とか行ったら、拍手する一人目になってください」

なんという、痺れるコメントだろうか。すでにここまで、その歌と演奏による素晴らしさに何度も涙が溢れてしまっていたのだが、ここでトドメの一撃を喰らってしまった…。

「マジでめちゃくちゃ楽しかったし、みんなもそうであるといいな。こうやってめちゃ楽しい感じでこれからも頑張っていくんで。疲れたとか、仕事したくないなって思ったら俺らのことを思い出してください!」

大きな拍手が送られる中、「This is Rock'n Roll!」と叫ぶとラストナンバー「Sunshine Highway」が繰り出される。

Jam Fuzz Kidのライブを締めくくる曲としてもおなじみの一曲だ。サビ前には「みなさん、最後騒げる準備できてますか!」と煽り、これに応えてたくさんの拳が舞い、フロアはラストにふわさしい大盛り上がりをみせる。「一度きりの人生、最高に楽しんで生きようぜ!」とのRikiの叫びに、狂喜乱舞なWWW。

「Jam Fuzz Kidでした!またどっかで会おうぜ!愛してるぜ!」

そう言い残すと、曲が終わるのを待たずにステージを後にするRiki。残ったメンバーたちは、全力でアウトロを演奏する。オオコシによる激烈なドラミングでもってライブを〆ると、惜しみない拍手が鳴り響く中、Jam Fuzz Kidはやりきった満足感と共にこの場を去っていった。

惜しくもソールドアウトとはならなかったとのことだが、2023年はさらなる飛躍を期待したいし、きっと飛躍してくれるに違いない。

ボカロPにSSW、TikoTok発の歌い手などが活躍する今の時代、カウンターな存在になっているかもしれない、カッコいいロックンロールをド派手に響かせてほしいと思う。

そして、まだ彼らのライブを観たことがないという人はぜひ、一度ライブハウスに足を運んでくれたら、とも思う。

涙腺ゆるゆるな自分の基準があてにならないことは重々承知だが、カッコよすぎて思わず涙がこぼれてしまう、そんなライブを味わえるかもしれない…!

セットリスト
01.Fringe
02.Rovers
03.Tunmbleweed
04.anomie
05.Parade
06.Where we gonna go
07.Canal
08.Floating away
09.新曲
10.601
11.yonder
12.Afterglow
13.consequences
14.KABUKI
15.Tyler
16.Pluto
17.Shimmer
18.Sunshine Highway

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