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【ライブレポート】2021/11/9 Tucky's Mastering Presents -FULL BIT Vol.1-@新木場STUDIO COAST

2022年1月で閉館となる新木場STUDIO COAST。もしかしたら自分にとってのラストチャンスにかるかもしれない、と思いチケットを取り、足を運んできた。

このイベントは、マスタリングエンジニアである瀧口“Tucky”博達が立ち上げたイベントで、彼がマスタリングを手がけたアーティストたちが出演している。

トータル3日間開催で各日の出演者は以下の通りだ。

DAY1
SIX LOUNGE/STRAIGHTENER/dustbox/ヤバイTシャツ屋さん

DAY2
envy/Nothing’s Carved In Stone/The Birthday/Fear,and Loathing in Las Vegas

DAY3
OKAMOTO'S/SUPER BEAVER/FUCK YOU HEROES/マキシマム ザ ホルモン

さっそく本日のライブについて振り返ってみようと思う。

■dustbox

当初の予想ではSIX LOUNGEがトップバッターだとばかり思っていたので、「New Cosmos」が流れてくるという予想外の流れに驚きつつ、dustboxの登場を迎えた。

ニコニコと楽しそうなSUGA(Vo/Gt)の笑顔そのままに爽快なライブが展開し、マスク着用で当然モッシュもNGなコーストのフロアも、己の拳でもって全力で反応する。

コロナ禍でのライブ会場ではもはやスタンダードにもなった景色ではあるが、それでも徐々にコロナ明けの世界に向けて進んでいる、そんな状況もあって観客たちの盛り上がりも、声こそ出ていないがコロナ前を彷彿とさせるものがあったように思う。

テナーを始め、他のバンドTシャツを着た観客たちが曲のサビやドラムのタイミングに合わせて絶妙なポイントで手を突き上げ、盛り上がっていた。長らく開催しづらかった対バンイベントならではの光景が胸を熱くさせる。

バッキバキの気持ちいいSUGAのギターにJOJI(Ba)のベースが絡みつき、小気味よくてキレのあるYU-KI(Dr)のドラムと相まって、スリーピースならではの研ぎ澄まされた集中力による突き抜けるようなサウンドが抜群にカッコいい。音の魅力をたっぷり伝える、新木場名物の赤いオクタゴンスピーカーもこれで見納めかもしれない。

MCでは閉館を迎える新木場STUDIO COASTについて、自身の10周年時に自主企画ライブを開催した思い出を語るメンバーたち。お互い40歳になって、年取ったなあなどというトークを繰り広げる。

また、今回のイベント『Tucky's Mastering Presents -FULL BIT』についてSUGAが説明する流れになり、15年ほど前のアルバム『triangle』からマスタリングをしれくれているエンジニアのTucky氏主催によるライブである旨を告げる。

するとJOJIが、そもそもマスタリングについて説明しないといけないだろうと厳しく指摘し、CD音源化するさいに音の凸凹を整える作業がマスタリングであり、そのエンジニアがTucky氏であることを丁寧に解説してくれた。

ふたりの漫才のようなトークに演奏時の激熱なフロアから一転、和やかな空気で満たされる新木場だ。

「Right Now」から始まり、「Riot」「Try My Luck」「Tomorrow」、そしてラストに「Jupiter」とまるでベスト盤のようなセットリスト。敬愛するエンジニアへのリスペクトと、新木場STUDIO COASTへの想いをたっぷりと込めた、彼らの最高がギュッと詰まった30分。

「新木場ありがとう!」と何度も連呼し、コーストへの名残惜しさもにじませつつ駆け抜けていったのだった。

セットリスト
1.Right Now
2.Bird of a passage
3.Riot
4.Try My Luck
5.Still Believing
6.You Are My Light
7.Tomorrow
8.Hurdle Race
9.Jupiter

■SIX LOUNGE

続いての登場はSIX LOUNGE。大分のバンドだ。こちらもdustboxに続いてのスリーピースロックバンド。ヤマグチユウモリ(Vo/Gt)の太くたくましいボーカルが大きな特徴のひとつで、今夜のライブでもその魅力は全開。

一見泥臭そうにも見えるが、鳴らす音は洗練されていて新木場に映える。ヤマグチだけでなくナガマツシンタロウ(Dr)やイワオリク(Ba)までもが太い声でコーラス参加し、楽曲により強いパワーを与えているようだ。

ヤマグチに関しては太さだけにとどまらず、色気も帯びた歌声が素晴らしい。

dustboxは少し濁すような発言があったが、SIX LOUNGEはハッキリと今夜が最後の新木場でのステージになることを告げており、自分たちにできる最高のパフォーマンスを披露すべく気合十分、アグレッシブに彼らの鳴らす音楽を届けていた。

1分にも満たない「ヒアリング」では短い曲ということもあり、1回終わるごとにメンバーをひとり紹介し、紹介されたメンバーによるコーラスを入れ込む構成で合計3回連続演奏するという荒業も。

「最後のコーストなんで、寂しさと興奮でいい気持ちです。ありがとう」と充実感たっぷりに語るヤマグチ。

ラストは「FULL BITと新木場STUDIO COASTに愛をこめて!」と叫んで名曲「メリールー」を演奏し、ステージを去っていった。

セットリスト
1.カナリア
2.天使のスーツケース
3.ナイトタイマー
4.IN FIGHT
5.スピード
6.トラッシュ
7.ピアシング
8.メリールー

■ヤバイTシャツ屋さん

3番手はヤバT。もしかすると本日出演のバンドの中で、最も一般層まで届く知名度を持っているかもしれない。今日ここまで、3バンド連続でのスリーピースとなっているのも面白い。(そしてトリのストレイテナーも一時期はスリーピースだった)

「始めましての人も、そうじゃない人も、知ってるふりして楽しんで!」という、こやまたくや(Vo/Gt)の煽りでライブスタート。

「ヤバみ」「癒着☆NIGHT」や「小ボケにマジレスするボーイ&ガール」「くそ現代っ子ごみかす20代」など冒頭から切れ味鋭いタイトルが並ぶ。高速かつパワフルでありつつポップな楽曲に乗せて、こやまとしばたありぼぼ(Vo/Ba)のマシンガンボーカルが炸裂する。

歌詞が聞き取れないほどの早口な歌いっぷりは圧巻。よくあれだけ言葉を高速で吐き出せる…! また、本人たちのキャラクターや軽快なメロディがそう思わせるのか、同じスリーピースでもdustboxやSIX LOUNGEとはまた違う、身軽なスリーピースという印象も与える存在。

MCではTuckyについて触れつつ、「Tuckyさんて?」というフリから「チキンがおいしい、ケンタッキーさんね」と繋げて笑いを取ると「うけるTシャツ屋さん!」と喜ぶメンバーたち。さらにケンタッキートークを広げて、ケンタッキーのCMのマスタリングもTuckyさんがやっているというジョークから、その仕事の幅について「タッキーに渡って?(多岐に渡って)」と続け「うまいTシャツ屋さん!」と再び喜ぶメンバー。

おもしろMCも終わったところで、と急に冷静になると再び曲パフォーマンスに切り替えていくヤバTの面々。

dustboxやテナーもトークスキルはあるが、ヤバTのそれは関西&地上波仕込みという強みもあり、さすが盛り上げ上手。ただし、トークで笑いを取っていたり面白い歌詞の楽曲が多いからといって、ただの喋りが面白い愉快なバンド、ということではない。特に今日のステージは、ライブやバンドに対する気持ちが溢れていて、そういう意味での熱量も濃かったように思う。

それは次の発言にも表れていたのではないだろうか。

「対バンイベントも久しぶりで。今まで知らなかったバンドを見れる機会があるって最高。Dustbox、SIX LOUNGE、そしてテナーのファンにも、ヤバT好きになって帰ってもらいたい!」

ラスト、こやまが『Tuckyさんに初めてマスタリングして貰ったアルバムから、「あつまれパーティーピーポー!」』と叫んで最後の曲を演奏し、ヤバTのライブは終幕。

ともすると「おもしろ」や「ユニーク」が先行しがちなヤバTだが、今日のライブの熱さはどのバンドにも負けていなかった。

セットリスト
1.ヤバみ
2.癒着☆NIGHT
3.小ボケにマジレスするボーイ&ガール
4.くそ現代っ子ごみかす20代
5.NO MONEY DANCE
6.Tank-top of the world
7.Give me the Tank-top
8.あつまれ!パーティーピーポー

■ストレイテナー

トリを務めるのは、日本でいちばん12月の新木場が似合うバンド、ストレイテナーだ。惜しくも今日のライブは11月だが、時期は異なれどコーストとの相性は抜群。

登場SE「STNR Rock and Roll」が流れる中でステージに集う4人の姿は、照明を背にしているという絵もあるが、どこか神々しいものがあった。

「やっと新木場STUDIO COASTに帰ってきました!俺たちストレイテナーって言います」

そんなホリエアツシ(Vo/Gt)の言葉は相性の良さを証明するかのようでもあった。

ここ数年でのテナーの名刺曲となっている「シーグラス」でオープニングを飾ると、2曲目には「叫ぶ星」を披露。さらに「15年前、dustboxと同じ時期にTuckyさんにマスタリングをしてもらっていて、あの頃と変わらず(今日の)SUGAちゃんはキラキラしてて」と同世代のdustboxに対するコメントも入れつつ、「初めてTuckyさんにマスタリングして貰ったアルバム『TITLE』から一曲」という曲紹介とともに、3曲目「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」を披露。イベントでのセットリストにしてはやや通好みにも近い選曲でフロアを沸かす。

近年のワンマンライブではホリエとナカヤマシンペイ(Dr)、さらにひなっち(Ba)、そしてOJ(Gt)の4人による掛け合いも愉快なストレイテナー。しかし今日のステージではMCの時間も限られていることもあってか、ひなっち前にマイクスタンドなし。基本的にはホリエのソロトークで臨むスタイルだ。

激しいアクションが展開する「シンデレラソング」では、珍しくホリエが片足を振り上げるほどの動きで魅せる。

「世代が違うバンドと対バンできて、刺激をもらいます。負けずに新作でカッコいい作品を作るということに燃えています」といったコメントを経て披露された「宇宙の夜 二人の朝」では、ギターとキーボード、そしてボーカルのひとり三役の活躍でその存在感を示すホリエだった。

ホリエだけでなく他のメンバーもそれぞれに個性を発揮し、ライブの温度を上げていく。細マッチョなボディから繰り出す、タイトでダイナミックなドラミングが素晴らしいシンペイ。ひなっちが操るベースは、まるで生き物かのように躍動し、自在に音を轟かせる。

本編最後に演奏した冬の名曲「灯り」では、ホリエの美声はもちろんのこと、彼の声に被さるOJのコーラスが圧倒的に美しく、鳥肌ものの感動が生まれた。

あっという間の6曲が終わり、アンコールで再登場したテナーは、「最後、写真撮影があるので、いちばん短い曲を」というホリエの言葉を合図に「Last Stargazer」をプレイし、鮮やかに『Tucky's Mastering Presents -FULL BIT Vol.1-』の幕を下ろしたのだった。

セットリスト
1.シーグラス
2.叫ぶ星
3.SAD AND BEAUTIFUL WORLD
4.シンデレラソング
5.宇宙の夜 二人の朝
6.灯り
EN.
7.Last Stargazer

メロコアにダンスロック、そしてギターロックと同じロックバンドでもそれぞれに違う味を持つ4バンドが集結した今日のイベント。フロアでは観客たちが各自異なるバンドTを着用し、そのバンTには書かれていないバンドのライブでも手を上げたり跳ねたりして思いきり楽しむ姿があった。

こやまの言うように、対バンならではの新しい出会いもきっと生まれたことだろう。

また、エンジニアが主催するライブというのも、意外な繋がりなども見えてきて面白いと感じた。バンドやイベンター、ブッカーだけでなく、裏方と呼ばれるようなカメラマンや照明、PA、あるいはグッズのデザイナーなど、いろんなスタッフが主催するライブというのも、もっともっと増えていくとライブシーンもより一層豊かになるのかもしれない。

すでにそういったイベントも多数行われてきたのだろうが、今後はもっと積極的にそういった情報をキャッチできれば、と思わせてくれるイベントだった。

もしこれが自分にとってラスト新木場STUDIO COASTだとしても、ストレイテナーで納められたことは幸せだ。ELLEGARDENで始まり、ストレイテナーで終わる個人的新木場STUDIO COAST史。たくさんの思い出をありがとう。
※閉館までに行きたいライブがあればまだまだ狙う予定

今回のイベントのセットリストをプレイリストにまとめてみたのでこちらもぜひ。※SIX LOUNGEの「メリールー」のみサブスクナシ


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