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【ライブレポート】2021/5/20 BUZZ THE BEARS ONE MAN TOUR『MANIACS』

BUZZ THE BEARSのワンマンライブを高田馬場のCLUB PHASEで観た。ただただ好きなバンドをライブハウスで観たいという、その気持ちだけで足を運んだ。彼らをライブハウスで観るのは2018年11月、O-WEST以来2年半ぶり。

生粋のライブハウスバンドが文字通り魂を削って生み出す音の数々は、本当に最高で。その声、動き、表情すべてに、たくさんの愛が詰まっていたように思う。

※BUZZ THE BEARS ONE MAN TOUR『MANIACS』の内容に触れているレポートですので、これから参加される方はツアー参加後にご覧いただければと思います。

もう慣れたもので、いつものように検温、そして消毒を済ませて範囲指定されたフロアにスタンバイ。予定時間を少し過ぎたところでメンバーが登場し、さっそく1曲目“FAR AWAY”からライブスタート。たて続けに“サクラ”“ピエロ”を繰り出してあっという間にフロアの熱を上げていく。

これこれ!これぞBUZZ!とニヤニヤが止まらなくなるほど、序盤からこちらのテンションも急上昇だ。

越智健太(Vo/Gt)は言う。BUZZを観るのは対バンのときが多いと思うが、だいたい30分で10曲くらいを演奏する、と。そしてこう続ける。

「今、3曲終わりました」
「ご安心してください、みなさん」
「あと25曲あります!」

大歓声…は出せないが同じくらい価値のある拍手がCLUB PHASEに鳴り響く。

全28曲のライブということで“Hurry Up!!”“Love Song”“別れ風”など惜しげもなく続々と投入していく。突発的にスタジオでのリハーサルとは異なる演出を仕掛ける越智に戸惑いながらも息を合わせる池田大介(Ba)。20年一緒にやっているメンバー同士の阿吽の呼吸も観ていて楽しい。

1か月ぶりのライブで、しかももともと予定されていた大阪でのツアー初日が延期になってしまったため、今日が実質的には初日。それが理由…かどうかはわからないが、パフォーマンスそのものがかなり前のめり。正確さや見た目の美しさをかなぐり捨て、勢いや感情に任せて荒々しい音を繰り出す様に、ライブバンドとしての美しさを感じる。

カッコいい曲を全力で演奏するBUZZの3人を観て、棒立ちで鑑賞できる人はそうそういない。首や足でリズムを刻んだり手を挙げたり、時にはジャンプも。モッシュ必須な曲も、もちろん皆その場で耐えて、今許される可能な限りでのアクションでステージのパフォーマンスに応える。

ひとつの大きな約束をしたステージとフロアの共同作業が、さらに観る者の感情を揺さぶっているように思った。

要請に従って20時には終了。だからライブ終わりにコンビニでビール買って飲んで…ということはナシにしてくれ、と越智。自分たちも搬出終わったら事務所に出向いて挨拶なんかせず、すぐに撤収すると話す。

そして「ここで言うとこ」と今この場で「CLUB PAHSEのみなさん、ありがとうございました!」とお礼を言う。ライブに関連して守ってほしいこと、やってほしくないことを伝える際にユーモアを交えるところはさすがだ。

ユーモアといえば、こんなMCもあった。今日、楽屋に遊びに来てくれるであろうバンド仲間とのトークをシミュレーションしていたにもかかわらず、誰も来てくれなかったと。INKYMAP、SECRET 7 LINE、MINAMI NiNEも来てくれるかと思っていたが、来てくれなかった。しかしそれは、楽屋で密になったらいけないと考えてくれていたから。気を遣ってくれて、BUZZのワンマンをいいものにしようと、たぶん家で応援してくれてるはずだと。俺たちに人望がないとかじゃないんだと、強く主張する越智が可笑しい。

気持ちを切り替えて(?)、PHASEって暑い!というフリから“アイスクリーム”。さらには“光り”“羽根”などエンジンの回転を落とすことなくぶっ飛ばす。“羽根”では《大空を高く舞えず》とギターのみで歌い上げる重要なパートの出だし、ここでギターの音を思いっきり外してしまうというハプニングも。一瞬場内の空気が緩むも、すぐ切り替えて仕切りなおした越智の精神力で再び高純度のライブモードに。ハプニング時の対応にはいろいろなパターンがあるが、あえて笑いへ引っ張らなかったのは、今日のライブにおいては好プレイだったのではないだろうか。

めちゃくちゃ苦労したレコーディングで、気持ちはいけるのに声がダメになってしまい、人にはできることに限界があると感じたというエピソードから、“スタイル”を披露。その後には“全てを”“鳴りやまぬ歌”という個人的に最高級の流れで思い切り手を挙げまくり、ひとつのクライマックスを迎える。

「今日はこの曲をどうしてもやりたいと思って」という言葉から“手つないで”、さらには6月リリースの新譜『咆哮』について、「今の世の中にクソっと思って、そういうタイトルにしました」「大きな声出したらあかんし、でも声を大にして言いたいことはいっぱいある」といったMCから『咆哮』収録曲の“それでいい”を披露する。

ライブ後半には現時点での最新作『MASSIVE』から“ROCK'N'ROLL IS ALWAYS WITH YOU”“BB SOLDIERS”なども演奏し、「今」のBUZZを堂々と表現。

コロナ禍が収まらない状況でライブをやっていいのか悩んだという越智。延期を促す声もある中で、もう無理…となったときはライブハウスにBUZZを観に来い、と言ってきた。そんな自分たちが、ライブできるライブハウスがあるのにライブをやらないのは違うんじゃないか、という結論に至ったと話す。

行く、行かないの判断は自分で決めてほしいと前置きしつつ、そして改めて「もう無理ってなったら、やれる場所があったら俺らやってるんでライブハウスに来てください」と力強いメッセージを届けていた。

「観客の歌声がなくてもライブはできる」と告げると“約束”へ。「歌うなよ!」とクギを刺したうえで、“あなたと出逢ったことは偶然じゃないんだと”と、かつてのライブであれば観客が合唱していた箇所を越智ひとりで歌いきる。

世界が変わってしまったことを痛感しながらも、今のこの環境においてやれることを全力でやる、そのことの尊さのようなものを感じる瞬間でもあった。

ライブ最終盤、雨降りな今日の天気と相性ドンピシャな“雨”でフロアの気持ちを弾けさせ、「いつも同じことしか言えませんが、またライブハウスで会いましょう!」とライブバンドの矜持がこもった言葉でキッズたちの心を奮い立たせる。

そしてラストナンバーにもってきたのはその名も“ライブハウス”だ。今日この場の最後を飾るにふさわしい一曲。

《暗くて小さなライブハウス》
《ほこりにまじった汗のにおい》

という歌いだしからもう感極まってしまうのだが、さらにサビでの歌詞

《響き渡ってた歓声は》
《時に埋もれて消えてくけど》
《一緒に過ごした思い出は消えない》

のタイミングでそれまでステージだけを照らしていた照明が、フロアにも光を当てる。この場にいる観客たちの姿が鮮やかに浮かび上がる。この曲に込められた思いを表現するような素晴らしい光りの演出に涙があふれてしまった。


アンコールナシの全28曲、すべてやり切って清々しくステージを後にした BUZZ THE BEARS。彼らのライブは頭の中を空っぽにして心の底から楽しくなれるもので、シンプルに自分の感情を吐き出して、泣いて笑ってまた明日、という気持ちにさせてくれる。

全国にあるライブハウスでたくさんのライブバンドとキッズたちが、余計なことを考えずにひたすらに爆音の渦に身を投じる、そんなかつての「非日常」を取り戻せる日がくることを願う。


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