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霊感むちゃ強!おばさん

伯母は霊感がとても強い人でした。あまりにも強いため、自分でも困ってしまって、霊媒師のもとに電話相談をしましたら、霊媒師から「あなたはこっち側の人間ですよ」とスカウトされたくらい。とにかくむちゃ強だったのが伝わるかと思います。

そんな伯母が初めて不思議な世界を目にしたのは、小学一年生だったそうです。初めての不思議な世界。それは火の玉でした。

夜、伯母が一人で墓場の近くを歩いていると、向こうで青白い光がぽうと浮かんだそうです。最初はあれ?と思っただけだったそうですが、それが次第に増えてきて、一列にダダダダーッ!!と浮かんだというのです。

「ぎゃああ~!」

伯母は一目散に家に帰りました。それからです。不思議体験をするようになったのは。

こんなことがありました。私が小学生の頃、母と伯母と私の三人でファミレスで食事をしていたときです。いつものように楽しそうにお喋りしていると、煙草を吹かしていた伯母が、急に黙って目を大きく見開いたのです。

「えっ、何?やだ、やめてよ」

母は始まったという顔をして言いました。私は何のことかわからず、きょとんとしていました。すると伯母は、私たちの前の席の男性を顎で示して、

「ほら、肩のところにいる。肩のところ」

と言いました。

「うわぁ、やだやだ、やめてよぉ」

私たちがマジかぁ~なんて顔をしていると、男性がふいに自分の肩をパッパッパッ!

と手で払ったのだからビックリ。

「ええぇ……」

私たちはすっかり血の気が引いてしまいました。しかし伯母はいつもの顔に戻って、何事もなかったかのようにお喋りを再開しました。

伯母は私たちの家に遊びにきたときにも、不思議体験をしていました。うちには昔「くろたん」という八われ猫がいました。最期は腎臓の病気で死んだのだけれど、迷い猫からうちの子にした猫で、数年しか一緒に暮らせませんでしたが、大人しくて凛々しくて、私たちにとってアイドルのような存在でした。

伯母は私たちの家が好きで、来るとよくごろっと横になり、鼻歌をうたったりしていました。ものぐさとか、そういうことではなくて、そうしてごろっと横になり、何もしないことが伯母にとっての幸せなのです。

「なんっにもしないのが好き。なんっにもしないのがいいの」

そんなことを言っていたっけ。ある日、そうしてごろっとしている伯母が、

「ああ、お母さんが帰ってくる」

と言ったことがありました。私の母は午前中パートに出ていましたが、買物をして帰ってくるときもあるので、帰宅時間はいつも微妙にバラバラでした。

伯母が「お母さんが帰ってくる」と言ったほんの数秒後、ガチャガチャと母が鍵を開けて帰ってきました。

「本当だ!」

私はとっても驚きました。すると伯母は、

「お母さんが帰って来るときは、くろたんが玄関の方に向かってタタタタ~ッて走って行くんだよ」

と得意そうに言うのです。私は納得しました。なぜなら、くろたんを一番かわいがっていたのは母だからです。

「あんたのところにも行くんだよ。でも、お姉ちゃんのところにはいかない」

これも納得。姉はくろたんをかわいがるあまり、足を噛み噛みしたり、寝ているところをしつこくかまったりしたり、猫なら嫌だろうことをしていたのだから……。死んだあともあの世でも嫌われるなんて、なんだか幽霊って素直ですね笑

伯母は霊感が強すぎるため、夜、寝ている時にちょっかいされたりするのが嫌で、毎晩お酒を煽ってから寝ていました。その上、煙草も吸うものだから、身体を壊して老後を迎える前に胃がんで亡くなりました。

棺の中の伯母は、なぜか前歯をにゅっと出していました。出っ歯じゃなかったくせになんで?と、私たちは泣きながら笑ってしまいました。私が不思議な世界に興味を持ったきっかけをつくってくれた霊感むちゃ強!おばさんの話でした。


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