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男女平等のほんとうの意味 ("The Moment of Lift" by Melinda Gates)| きのう、なに読んだ?

私は、女性が働くことにまつわるあれやこれやには自分ごととして関心があり、私より若い世代の皆さんがより良い働き方や暮らし方になったらいいなと願っている。そんな文脈でいろんな方の話をきくと、例えば

「男女分け隔てなくしてほしいけど、じゃあ体格差のある男女が同じように重い荷物を運ぶのか。」だとか、

「フェミって怖いから、いや。」

などという声が入ってくる。なんだかなあ、と釈然としない気持ちになりつつ、自分の考えがうまくまとまらずにいた。

そしたら、メリンダ・ゲイツ(ビル・ゲイツの妻)の著書に、そのあたりのことがご本人の体験も含めてたっぷり書かれていた。
本全体については、感想を別のnote に書いたので、ここではごく簡単にご紹介するにとどめます。

上のnote で書いたのは、ゲイツ財団では設立初期から子どもの感染症対策に取り組んで来た。その経験から、最貧国では、女性が自ら家族計画ができるようにしないと、自分の意志に反して、家の経済力を超える人数の子どもが、近い間隔で次々に生まれてしまい、子どもたちに十分な栄養や医療、教育を受けさせることが出来ず、貧困の連鎖が続くことが分かって来た。そこで女性の支援も着手するのだけど、女性が差別され、家事労働に縛り付けられている地域では、まず女性たちが自分たちの内なる切実な声に気づき、尊厳を取り戻さないと、家族計画に結びつく行動が起こせない。メリンダさん自身、そうした女性たちと交流を深める中で、自身の「内なる声」に気づいてしまった。そして葛藤しながらも、夫であるビル・ゲイツとの関係を深めてきた。ざっくり言うと、こういう内容の本だ。

ここから、メリンダさんがビルさんとの関係を見つめなおす中で得た「女性の役割」まわりの教えをいくつか引用し、ざっくり日本語訳をつけておく。

位置: 1,741
I want to share with you some stories and reflections on how Bill and I moved toward an equal partnership—which, ultimately, is the hidden theme in every discussion of unpaid work.

「ビルと私が、どんな経験を通して平等なパートナー同士になっていったか、いくつかのエピソードや今からふり返って感じることをお伝えしましょう。無報酬の家事労働をどう扱うかという議論の根底には、必ず、パートナー同士の関係という課題が隠れているのです。」

黄色のハイライト | 位置: 1,952
When a culture of dominance is broken, it activates power in all of us. So the goal for me is not the rise of women and the fall of man. It is the rise of both women and men from a struggle for dominance to a state of partnership.

支配/被支配という文化が壊れれば、私たち一人ひとりのパワーが開花します。ですから、私が目指すのは、女性の上昇と男性の弱体化ではありません。私は、男女が支配権を巡って争う次元を脱却し、共にパートナー同士となる状態を目指しているのです。」

黄色のハイライト | 位置: 1,700
Anytime you have a category of tasks that’s considered “women’s work” that men will not share, it reinforces a false hierarchy that prevents men and women from doing productive work together. Breaking that hierarchy actually leads to men’s empowerment, because it allows men to discover the power of partnership and lets them develop their caring side.

「『女の仕事』だから男性は手を出さないという領域が出てくるたび、本来は存在しないはずのヒエラルキーが意識され、男女が力を合わせづらくなり、生産的な仕事を共に成し遂げるのが難しくなります。このヒエラルキーを壊すことは、実は男性の解放につながるのです。男性にとっても、パートナー同士の関係から生まれるパワーを享受できますし、心優しい面を深めていく機会になりますから。」

黄色のハイライト | 位置: 1,773
If we had split our roles, we’d be working in separate worlds, and the two would rarely meet. It might have been equal, but it wouldn’t have been an equal partnership. It would have been more like parallel play: I won’t mess with your stuff and you don’t mess with mine. This was another decision that supported our move toward an equal partnership.

男女が役割分担してしまうと、お互い別の世界で生きて行くことになり、本当の意味で出会うことがほとんどできなくなってしまいます。これは平等かもしれませんが、平等なパートナー同士ではありません。平行遊びのようなものですね。私はあなたのものを触らないようにするから、私のも触らないでね、という状態です。私たち(ゲイツ夫妻)が平等なパートナー同士になりたいと思ったとき、このことも意識しました。」

黄色のハイライト | 位置: 1,958
Change comes when men see the benefits of women’s power—not just what women can do that men cannot, but a quality of relationship that comes in an equal partnership that cannot come in a hierarchical relationship: a sense of bonding, of belonging, of community, solidarity, and wholeness born of a promise that I will help you when your burdens are high, and you will help me when your burdens are low.

「変化が起きるのは、男性が女性の力のメリットを理解した時です。メリットとは、女性にしかできないことをやってもらえるというだけではありません。上下のない平等なパートナー同士となったときの関係性から生まれる一体感、所属感、コミュニティー感、連帯感。あなたが大変な時は私が助ける、あなたが楽になったら私を助けてくれる、という相互信頼が、より良い自分、より完全な自分でいられる感覚をもたらすのです。」

メリンダさんのいう「支配/被支配の関係ではなく、『共に』の関係へ」という考えにふれ、私は思考実験として、識字率の低い社会と高い社会の対比を考えた。まず、一部の特権階級だけが字を読めて残りは文盲であるような識字率が低い社会を想像する。そこでは、字が読める人たちだけが知識を独占でき、コミュニケーション手段も豊富で、字を読めない人よりパワーを持てる。読める人たちに特権が集中するような仕組みを維持しやすい。そこで「皆が読み書きできるようにしよう」と提案したら、パワーを失うことを恐れて反対する特権階級も出てくるだろう。でも、識字率が高い社会の方が、社会が安定し、技術の伝播や経済活動も活発になることを、私は歴史を学んで知っている。確かに「字が読める」だけで特権階級に留まることはできない世の中にはなるけれど、特権階級だった人も、それまではなし得なかった社会の進歩の恩恵を享受できる。「一人一人のパワーが花開く」のだ。

また、この思考実験によって、識字率が低い社会から高い社会への変化は、全員のパワーを次の次元へ高めるものであり、文盲者が特権階級に取って替わるという発想とは全く違うことも分かる。(蛇足だけど、中国共産党の「大躍進」「文化大革命」の世界観は、まさに無教養な者がインテリから権力を奪うという構図でしたね…)

また、男女が支配権を争うような構図は目指したくない、という観点で、こちらの記事も参考になる。

今日は、以上です。ごきげんよう。

(picture by wallace_Lan)

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