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リーダーの行動は練習から(「0秒で動け」) | きのう、なに読んだ?

中竹竜二さん(日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター)と「ティール・ジャーニー・キャンパス」というイベントで一緒に登壇させて頂いた。そこで印象に残った中竹さんのことばに

「しっかりした会社は、『練習』と『試合』の区別がしっかりついている」

というものがある。スポーツとビジネスは違うと言うけれど、結構似てますよ、とスカッとおっしゃっていた。

伊藤羊一さんの「0秒で動け」は、1年以上ベストセラーを続けた「1分で話せ」の続編のビジネス書だ。伊藤さんはヤフーの社内でリーダーシップ教育を行うYahoo!アカデミア学長である。

「考える前に『結論』は出ている」。「直感+行動=迷いがなくなる」。

仕事の場面を思い浮かべると、「そんな軽はずみでいいの…?」「直感じゃだめでしょ?」「まず迷いがなくなるまで熟慮するから行動できるんでしょう?なんで直感と行動が先なの?」と、ざわざわしちゃうタイトルと帯。

でも、これがスポーツだったら、しっくりきますよね?スポーツで「0秒で」「直感で」「行動」できるのは、当たり前。なんでそんなことが出来るかと言えば、練習を重ねているからに他ならない。伊藤さんは、スポーツの喩えは使ってないけれど、ビジネスの場面でもスポーツと同じように俊敏に行動が起こせた方がいいよ、それにはこうやって練習するといいよ、と本書ですごく丁寧に教えてくれている。

例えば、好奇心。俊敏に行動を起こすには、まず「頭出しの結論」、つまり仮説をすぐに出すことから始めよう、と伊藤さんは説く。仮説を出すのに必要な力の一つが「好奇心」。「好奇心が生まれると、様々な事象を自分事として考えるようになり、仮説のネタが集まってきます。」仮説力を鍛える大事な要素だと分かったけれど、好奇心の強さなんて資質の問題じゃないですか…。

ところが伊藤さんは、後天的に好奇心を身につけたと言う。「43歳、好奇心というものが皆無といっていい状態でした。何しろ『迷ったらやらない』が信条だったくらいです。」それが、あるきっかけで伊藤さんはテンションの高い仲間たちと交わることになり、彼らについていきたくて「何か新しいものに触れる都度『すげー』『やべー』と声に出して言うようにした」。口に出すことで、ある種の自己暗示を自分にかけた。さらに仲間たちが伊藤さんの「すげー」に触発されて、「俺のネタのほうがもっとやばいよ!」と教えてくれるようになった。繰り返すことで感度が高まり、後天的に好奇心が身についた、とのこと。

このように本書では、ビジネスの現場で俊敏に動くためのスキルと、スキルアップの練習方法が、伊藤さんの経験と共に詳しく説明されている。だからこの本は、「0秒で動く」ための手引きとしても読めるし、現在の伊藤羊一さんというリーダーが出来あがるまでの物語としても読める。20代の頃「どう仕事をしていったらいいかわからないし、上司や先輩とどう話したらいいかもわからず、結果として、成果を出す以前に何も動けない状態でした。そのうち朝起きて会社に行くのが苦痛になり、メンタル不調に陥っていきました」というダメサラリーマンだった伊藤さんが、ちょっとずつ試行錯誤しながら掴んで来たノウハウを集めた本なのだ。

そういう意味では、本書の説く方法論の一つ一つには、それぞれ向き不向きがあるだろう。羊一さんと体質が似ていれば本書の「練習方法」がフィットするし、体質が違えばあんまり効果を感じないかもしれない。例えば私のように「二兎を追って二兎を得る」を信条に生きてきた者にとって、昔の伊藤さんの「迷ったらやらない」は意味不明だ(ごめんなさい)。

申し遅れたが、私は伊藤さんにはとてもお世話になっている。大事な相談をさせていただいた時は、私の話をじっくり聞き、端的に的確なアドバイスを下さった。伊藤さんは、私とは性格や行動の癖は違うところがたくさんあるけれど、「どういうリーダーでありたいか」が近いんだと思う。仮に「伊藤さんは私とはタイプが違う」と感じても、本書を通して、伊藤さんが目指すリーダー像を感じ取るような読み方は、有意義だ。

今日は、以上です。ごきげんよう。

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