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オバマ前大統領が最後に語った、報道の自由の意義

トランプ氏が大統領に就任する2日前の2017年1月18日、任期終了間際のオバマ大統領の最後の記者会見が行われました。

冒頭部分でオバマさんは、番記者たちを前に、報道の自由の意義について語りました。長い話ではありませんでしたが、とても印象に残りました。

その2日後、トランプさんが大統領に就任しました。就任式の観客の人数で嘘が報じられていると主張して1回目の報道官の会見では記者質問を受け付けなかったことを皮切りに、広報や報道に関しては真摯さとは程遠い姿勢が続いています。この1週間、何度もオバマさんの最後の記者会見を思い出していました。

これから続くトランプ大統領の任期中、オバマさんの話を忘れたくない。そんな気持ちもあり、ざっと訳したものを書いておきます。書き起こしは、New York Times の記事を参照しました。オバマさんの言葉の18行目、Second thing I want to do is... 以降 "Jeff Mason from Reuters."という言葉までです。動画では1:09から4:53までの部分です。

(ここから訳です)

次に、メディアの皆さんに感謝の意を表したいと思います。長いこと私のことを報道してこられた方もいますね。クリスティーさんとか、リンさんとか。まだ知り合ったばかりの方もいます。一緒に世界中行きましたね。単独インタビュー、共同インタビューもありました。私からもいい助言をさせていただいたと思いますよ。例えば、バカなことするな、とか。

(一同・笑)

私の回答が長すぎると文句言われてましたけど、ひとつ、ご理解いただきたいのは、そちらからの質問がひとつと見せかけて、実は質問6つだったからで。

(一同・笑)

ともかく、みなさんと一緒に仕事ができて、良かったです。当然ですが、みなさんの報道内容を全て「良かった」と私が思っているわけではありません。でも、それこそが、我々の関係の要諦なのです。皆さんは、私のファンであってはいけない。批判的であり、私に厳しい質問を突きつけるべきなのです。皆さんは、私に対して社交辞令を言ってはいけない。強大な権力を持つ者に対して批評的な視点を持ち、私たちを選んだ国民に対して説明責任を果たし続けているか、問い続けるべきなのです。その点で、みなさんは責務を果たされた。

みなさんが報道の中で出す結論には同意できないこともありましたが、 皆さんの仕事ぶりは、おおむね公正でした。その点も感謝しています。そして、みなさんがこの建物(ホワイトハウス)内にいることも、我々よりよい仕事をすることにつながっていました。我々が正直であろうとし、より一生懸命にやろうとする原動力になりました。我々の仕事ぶりはどうか、国民が望むことを実現できるかできないか、みなさんのおかげで考えさせられました。例えば、エボラ熱の治療法がなぜまだないのか、メキシコ湾の原油漏れの穴がなぜまだふさがれてないのか、質問していただくたび、私は部下のところへいって「次の記者会見までに解決してくれないか」と求める力を与えていただきました。

(一同・笑)

私は、先日の最後の演説で、民主主義の現在についてたくさんお話ししました。その要諦は報道の自由であることは論を待ちません。ここホワイトハウスが、この国が、自治という偉大な実験が機能するためには、ものごとの事実と背景をよく分かっている(well-informed)市民なしには成り立ちません。報道の自由は、これを実現する重要な礎なのです。報道関係の皆さんは、国家権力の中枢で何が起きているか、市民が事実をよく知るための情報の水路なのです。

ですから、アメリカはあなた方を必要としています。アメリカの民主主義はあなた方を必要としています。メディアの皆さんが事実と根拠で土台を作り、それに基づいて、知識を活かして論理的に議論し、結果として、進歩を実現するのです。ですから皆さんは、これからも、今までと同じように粘り強さを発揮し、何が起きているか正しく突き止める努力を怠らず、我々権力の座にある者の最も良い面が発揮されるよう、この国の最も良い面が発揮されるよう、求め続けてください。これが、私の希望です。

私は、皆さんがこうした役割を果たし続けることを信じています。これからは、私は皆さんの取材対象ではなくなり、一市民として、取材の結果を受け取る側になるわけですが、積極的な読者になろうと思います。皆さんが我が国の民主主義に果たす偉大な貢献に感謝の意を表します。

私からの話は以上です。ここから質問を受けます。まずは、任期がまだ続くらしい、ジェフ・メイソンさんから。

(一同・笑)

私と一緒に引退するのかと思ってたんだけど、もうしばらくいるんでしょう?

(記者)残りますよ。

(オバマ)はい、では、ロイター社のジェフ・メイソンさん、どうぞ。

(picture from the White House)

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