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『こころの対話 25のルール』 再読

私はあんまり本を再読しない。でも『こころの対話 25のルール』は例外で、何度か読み返している。人に勧める本を探すとき、よくこの本のことを思い出すから。今回も、人にお勧めするのにちょっと内容を確認しようとして、そのまま始めから終わりまでじっくり読んでしまった。

私が要約したり内容を紹介しても、本書の良さは伝えられないので、本書の序盤から、何カ所か引用させていただく。

コミュニケーションの原則から言えば、どちらか一方が話しているとき、当然もう一方はその話を聞いているはずなのですが、じつは聞いていない。もちろん、本人は聞いているつもりですし、実際、いかにも聞いているような顔はしています。でも、聞いていない。  ほとんどの場合、聞いているような顔をしながら、じつは、次に自分が言うことを考えているのです。(位置: 90)
こんな具合ですから、いくら話しても、わたしたちは、なかなか「聞かれた」という感じをもつことができません。(位置: 99)
職場でも、学校でも、家庭でも、病院でも、あなたは、「聞かれていない」し、「聞いていない」のです。  そして、この「聞かれていない」「聞いていない」という状態こそが、わたしたちがかかえるコミュニケーションの問題のほとんどすべてです。と同時に、わたしたちの人生の幸福感を妨げる大きな要因のひとつになっています。  なぜなら、聞かれないということは、単に自分の話を聞かれていないだけでなく、話している自分の存在そのものを否定されたこととして認識されるからです。逆に言えば、聞かないということは、その人の存在を否定することになります。たとえ、あなたにその気がなくても。(位置: 113)
わたしたちが潜在的にもっている孤立感は、そうしたコミュニケーション環境から生じています。たとえば、次のような状態です。
□一方的に言われてしまう。
□自分の言うことが、まともにとりあげてもらえない。
(略)
□途中で、口をはさまれる。
□話し終わる前に、「そう」とか「わかった」とか「それはだめ」とか返事をされてしまう。
(略)
□職場に、感情論が横行している。 まわりに、すぐ感情的になってしまう人がたくさんいる。客観的な話をしようとしても、すぐかっとされたり、むっとされたりして、冷静に聞いてもらえない。(位置: 153)
自分は聞かれないという経験は、辛く耐えがたいものです。だから、いつしかわたしたちは、人と向かい合うとまず、この人はだいじょうぶだろうか、わたしを傷つけないだろうか、あの苦痛を味わわなくてすむようにしなければならないと、「警戒」するのです。  そうして、相手の敵意を感じないでいられるように、自分の苦痛も感じないでいられるようにと、できるだけ、感じないようにすることで身を守ろうとするのです。(位置: 219)
そもそもの始まりは、「聞かれない」ということでした。「聞かれない」ことが、自分と他者との間に精神的な溝をつくり、自分の感情や欲求との間にも溝をつくります。そして、この他者や自分自身との分離や分裂によって生じる「孤立」「ひとりぼっち」という状態に、わたしたちのかかえる問題のほとんどが集約されるのです。(位置: 226)
あなたが、「聞かれていない」ことによって起こる「孤立」という現象です。(略)
□気軽に人を誘えない。
□気軽に悩みを話せない。
□自分より立場の弱い人に、必要以上に、威圧的に振る舞ってしまう。
□アイデアがあっても、自分からはなかなか提案できない。
□人に用事を頼みたくない。
□人に頼まれると、ノーと言えない。
□知らないことがあっても、つい、知っているようなふりをして、話を合わせてしまう。(位置: 233)
だれも人の話なんて聞きたいとは思っていないんだと、そのとき、身に 沁みて感じました。ただ、聞いてほしいんだ、自分の話を聞いてほしいんだと。(位置: 285)
あなたは、ただ相手を聞くだけでいいんです。愚痴でもなんでもいいんです。悪口でもなんでもいいんです。でも最後まで聞くんです。  もし、相手があなたにとことん聞かれたと感じたとしたら、その経験は、その人のこれからの人生を変えないではいないことでしょう。  そして、あなた自身のこれからの人生もまた、変えないではいないのです。(位置: 297)

ここまでで、全25章中、まだ第3章。でも安心して下さい。本書自体は、200ページくらいの普通の文庫本の分量ですから。引用した箇所のとおり優しい文体ですので、さらっと読めます。

本書が最初に出版されたのは1995年だそう。この文庫版はそれを改題/再編集したものだと書いてある。20年近く前の本だけれど、全く色あせない。著者の伊藤守さんは、本書を書いた後、エグゼクティブ・コーチング大手のコーチ・エイ社と、ビジネス書出版のディスカヴァー・トゥエンティワン社を創業された。

読みながら「嫌われる勇気」の冒頭にあった、心理学者アドラーのことば「全ての悩みは対人関係の悩みである」を思い出した。また、いまベストセラーになっている「言葉にできるは武器になる」も、実は本書と近い問題意識に根ざしているようにお見受けしている。

(photo by Lambada_X)

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