ウーバー隊列の時代を考える

わが国では現在、物流を担うトラックドライバーの不足が叫ばれており、様々な対応策が各所から出されている。

そのような対応策の中の有望株として、自動運転技術を用いた隊列走行がある。

鉄道ファンである私の目から見ても、これが成功した場合はその運用の柔軟性と省人性から、わが国の鉄道貨物が持つ輸送シェアの大部分がこれに置き換えられてしまうのではないかという懸念が感じられるほどである。

しかし、自動車業界に詳しい私の友人の見立てでは、隊列走行が大成功を収めてもドライバー不足の解消には至らない可能性があるというのである。

それほどまでにトラックドライバーの不足は深刻であるのかという思いと同時に、様々な業界に規制緩和の旋風を吹かせているある企業の名前が頭をよぎった。

ウーバーである。すでにタクシードライバーとデリバリーパーソンの仕事を一般人でも気軽にできるようにしてきたウーバーであれば、トラックドライバーも一般人ができるようにしてしまえるのではないだろうか。

このサービスを、ここからは便宜上「ウーバー隊列」と呼ばせていただく。

「ウーバー隊列」の概要はこうである。まず、荷物を積んだ無人のトラックと、普通車の自動運転車を持った一般ドライバーとをマッチングする。

一般車は、出発地付近で迂回路をとり、マッチングしたトラックを拾い集めてゆく。このとき一般車の挙動はトラックに合わせたものになるよう自動的に制御される。

一般車を先頭とした隊列は、走行中に他の車列と車両を入れ替え、先導役となる一般車の目的地に近い目的地のトラックが集められていく。

入れ替えの段階で隊列を形成するトラックがなくなった場合はその時点で業務終了となり、隊列が残った場合はまた目的地付近で迂回路をとりトラックを送り届けていく。

全てのトラックを隊列から分離し終わるとドライバーに報酬が支払われる、ドライバーの業務内容は申し訳程度の後方監視のみであり、トラックを拾うための迂回およびトラックに合わせての低速度からくるイライラの我慢と走行中の眠気の我慢さえできれば誰でもできるような仕事となる。

このようなサービスが実現すると、トラックドライバー不足は完全に解消されるはずである。

もちろん安全性や責任の所在など、課題は多いであろうが、ウーバーのこれまでのメソッドを見るとそのようなものはなあなあにして事業を始めてしまう可能性が高い。

あくまでも個人的な未来予想であるので、全くこの通りにならないことも十分考えられる。

トラックを取り巻く状況が今後どうなっていくのか、注視していきたい。

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