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研究日誌:リトルパッカー

星ツムリ研究所には時折、小さな旅人と呼ばれる15~20cm程の客人がやってくる。
「リトルパッカー」と呼ばれる彼らはその名の通り、ちいさなバックパック(かばん)を持って旅をする種族の名前だ。

♪ ♪ ♪
リトルパッカー 小さな旅人
星の間を北へ南へ
住処を求めて どこへ行く
♪ ♪ ♪

研究所ではじめに発見したリトルパッカーが口ずさむ歌は彼らの種族の中では民謡のように口承で受け継がれているらしく、どの子も一様に同じ歌を歌う。
彼らの求める「住処(すみか)」と呼ばれる場所はリトルパッカーの旅の終点である「オーナー様の家」だ。
星の間で旅を続ける彼らは研究所で旅の終わりとなる住処=オーナーさんを探してる。
そして、オーナー様にお迎えされた時、リトルパッカーたちは「オーナーさんと一緒に歩む新しい旅」を始める。
常に旅をする彼らは、一緒に旅をしてくれる大切なパートナーを探しているのだ。

リトルパッカーたちの持つカバンの中は空っぽだ。
飴玉ひとつ分くらいの小さなものが入るくらいのサイズになっている。
オーナーさんからもらった宝物をそのカバンに入れる日を、彼らは心待ちにしている。
時々、カバンを忘れるうっかり屋さんもいるようだが、そんな彼らはきっとオーナーさんと過ごす時間を形のない宝物にしてカバンの代わりに胸の中にそっと忍ばせているのではないかと思っている。

研究所に立ち寄ったリトルパッカーたちは、性格も、性別も、性質も、喋るかどうかもオーナーさん次第。
旅好きの彼らが住処を決めるその日まで、星ツムリ研究所は彼らの旅路を見守っている。

2023.3月
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