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無垢がみそ

無垢なものにあこがれる。
作られすぎていないもの、自由なもの、他人の目を気にせず、伸びやかで、健やかなで、あたたかで、やわらかく、それでいてしっかりしてて、すこしさびしげなもの。

決して難しくないもの。
かんたんにみえるもの。

かんたんにみえるのに、複雑で、
それでしか表現し得ないかたちになっているもの。ぼくは憧れる。

あさ、雨降る登園の道中で、むすめが踊る。

「みて、これがトラ!」はいはい。

「んで〜これがちょうちょ!」あらー。

短い手足をせいいっぱい伸ばしたり縮めたりして、むすめが踊る。ひとつひとつの振りの意図を説明してくれる。

「早く行かないと。遅れる。」ぼくはせかす。

むすめは傘はさしていない、カッパを着ている。
フードのところが銀色の宇宙人の皮ふを剥いで着たみたいな格好で
雨の湿気で重たくなった朝の空気を、いっしょうけんめい絡めとり踊る。
一向に前には進まない。

「そしてさいごは〜これよ!」

そういってむすめは、頭の上に、両手で大きな丸をつくる。

「みそラーメン!」

可笑しくなって、歩みを止めて大笑いする。
大笑いしながら、彼女のおどりのようなものが作りたいと
強く思う。

関東が梅雨に入った。

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