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夫の言葉が一番の宝物

 私の筆箱はキングジムのノートやファイルにはさめるペンケース「ペンサム」です。


それに入っているのがパーカーのソネット。

一本しか入らない筆箱に万年筆を入れてます


私が今毎日愛用している万年筆です。

高校生のころから万年筆には憧れていて、大学生のころからそれこそ、ピンキリという言葉でいうところの「キリ」の安価な万年筆を愛用していました。

いつか、一生使えるようなものを持ちたいな。なんて憧れもあったのですが、時は過ぎて家庭を持つようになってから、色んな優先順位を考えるとまあ持つことはないかなあと思っていました。

そして、コロナ禍になり、小さな飲食店を夫と二人で経営している私たち夫婦は金策に追われました。ありがたいことにどうにか蓄えを崩す程度ですんだのですが、育ち盛りの子どもが二人いる私たちの家庭にとっては大打撃でした。

けれども、さらにありがたいことにそのころ、ちょうど「ヴンダーカンマー」の印税が入り、本当に助かったとも思ったのです。

でも何か出版した記念になるものが欲しいとも思っていました。

本当は記念にする必要のない印税が入るのが当たり前になるくらいの物書きになればいいだけの話なのですけどね。でも、その目標はまだ遠いと感じていたんです。だから記念になるものが欲しかった。

そこで、夫にこのご時世だし、お店も家計も大変だし、どうかなあとも思うけど、記念に万年筆が欲しいんだよね。

とおそるおそる言ってみたところ、夫の返事はこうでした。

「物書きが筆記用具けちったら、ええもん書けんやろ。買え!すぐ買え!」

たぶん、調理師の夫からしたら、いい万年筆は、いい包丁と同じ位置づけだったのかもしれませんが、大きなゴーサインが出て、私は散々迷って、お目当ての万年筆を購入しました。それがパーカーのソネットでした。

私は手書きで手帳やノートにアイディアの卵を書きます。手を動かすことでアイディアは広がったり固まったりするのです。このソネットで、いくつものアイディアを書きました。

それこそ、創作大賞2023のミステリー部門を受賞した「私の死体を探してください。」のアイディアもこの万年筆で書きました。

夫の言ったことは本当だったのかもしれません。物書きが筆記用具をけちってはいけない。うん、誰か既に言ってるかもしれないけれど、真実味があるような気がします。思い入れのある、お気に入りの万年筆は何度でも手に取りたくなります。

手に取る行為が多ければアイディアを書く機会も多くなる。それが結果に繋がっていくのかもしれない、と今実感しています。

でも、それ以上に私にとって、夫の言葉が今も大きな支えになっています。

「ええもん、書けんやろ」

この言葉は、私にええもん書いて欲しいって意味だと思いますから。単純に嬉しかったんです。

万年筆も宝物ですが、なによりあの時の夫の言葉が私の宝物になっているのでした。


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