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一枚の写真を見て、私もこんな写真が欲しいなと夫にねだった。

先日、義父が亡くなりました。97歳の大往生でした。

一昨年義母が亡くなっており、夫としては両親が二人とも旅立ってしまった寂しさが募るようです。

夫は新潟出身。冬は背丈ほども雪が積もる豪雪地帯で生まれました。

私は義父とはほとんど話をしたことがなかったのですが、夏に帰省すると、一番末の孫である、うちの子どもたちが何かをするのを、いつもにこにこ笑顔で見守ってくれていました。

数年前、帰省した際、義母が夫の子どものころの写真を私に持たせようと、古い写真をどっさり出してくれたことがありました。
幼いころから思春期のころまでの夫の写真を沢山見せてもらいながら、私はある一枚の写真に目がひきつけられます。

「お義母さん、この写真、とっても素敵ですね」

そう言うと義母は少し照れくさそうだったれど、とても嬉しそうな声色になり、私はそばにいた夫をすかさず呼んで、その写真を見せました。

「この写真、すごくいいよね?」
「うん。こんな写真あったのか」

それは義父と義母2人の写真。
場所はたぶん夫が前の家と呼んでいる、今はもうない夫の生家の側。おそらく義母が丹精している花壇の中で義父が後ろから義母に手を回している、いわゆるゆるいバックハグをしていて、2人がはち切れんばかりの笑顔で写っている写真でした。

「ねえ、これってお義母さんたち、今の私と同じくらいか少し若いくらいじゃない?」
「ああ、たぶんそうだな」
「いい笑顔だね」
「ああ。俺こんなのあるの知らなかった」

新婚じゃなくて、中年になってからの写真というのが私の心をとらえました。前々から気づいてはいたけど義両親は本当に仲が良くて、子どものころ夫はそれを疑ったことがないそうです。子どものころ母から父の悪口を聞かされ続けた私としてはそれがとても羨ましかった。

その仲睦まじさがこうして昔の写真の中にちゃんと収まっているのがとてもいいなあと思いました。

夫はこの写真を自分のスマホのカメラで撮影しました。今も彼のスマホの中にこの写真があります。

「私たちもああいう写真が撮りたいなあ」

最近撮った写真は家族で撮ったものばかりで、夫とツーショットなんてほとんどないことに気づいたんですよね。
私の言い分に夫は頷いて、姫路に帰ってから太陽公園へ行きで2人で写真を撮りまくりました。

まずまずのいい写真が撮れたと思うけど義母と義父のあの笑顔にはなかなか及ばず、これからもちょこちょこ2人で写真を撮りたいな。そうすればそのうちもっといい写真が撮れるかもしれない。夫と2人で写真を撮る時はなんとなくあの写真を意識するようになったと思います。

そのわずか数年後の一昨年、義母が旅立ち、今度は義父が旅立ちました。

訃報を聞いて新潟について義父に線香をあげると遺影のそばにラミネートされたあの写真が置かれていました。お線香をあげた他の人の心にも二人の笑顔は残るのではないかと思います。

私も残された誰かに自分の夫と笑顔で過ごせたことを思い出してもらえるように毎日を過ごしたい。それに気づかせてくれた義父に感謝してお別れをしました。

葬儀が終わり姫路に帰ってからストレスのせいか夫は耳がいつもより過敏になっているようです。心なしか背中が寂しい時もある。優しくしてあげようと思います。

夫は私より一回り年上なので義両親みたいにダイヤモンド婚式を迎えるのは難しいかもしれませんが、せめて金婚式を迎えられるよう元気に仲良く過ごしていけたらと思うのでした。


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