ワキ
いかにこれなる草刈達
只今あの上野に當って笛の音の聞こえ候は
面々の中に吹き給ひて候か

シテ
さん候我等が中に吹きて候

ワキ
其の身にも應ぜぬ業を嗜み給ふこと
返す返すも優いうこそ候へ

シテ
其の身にも應ぜぬ業と承れども
それ優るをも羨まざれ
劣るをも卑しむなとこそ承れ

シテツレ
其上樵歌牧笛とて
草刈の笛樵の歌は

シテ・シテツレ
歌人の詠にも詠み置かれて
世に聞こえたる笛竹の
不審はなさせ給ひそとよ

ワキ
げにげにこれは我ながら
愚なりける言ひ事かな
さてさて樵歌牧笛とは

シテ
草刈の笛樵の歌の

ワキ
浮世を渡る一節を

シテ
謡ふも

ワキ
舞ふも

シテ
吹くも

シテ・ワキ
遊ぶも

地謡
身の業は好ける心により竹の
好ける心により竹の
小枝蟬折様々に
笛の名は多けれども
草刈の吹く笛なればこれも名は青葉の笛と思し召せ
住吉の汀ならば高麗笛にやあるべき
これは須磨の監木の蜑の焚きさしと思し召せ
蜑の焚きさしと思し召せ

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