見出し画像

経政クセ〜キリ謡文句 (喜多流謡本より)

有料記事にしてますが、有料部分はサムネ左側の仕舞がいつどこで行われたかの情報のみで、謡曲「経政」クセ〜キリ部分の謡文句は無料ですべてご覧いただけます😀


シテ:
いや雨にてはなかりけり。
あれ御覧ぜよ雲の端の

地謡:
月に雙(ならび)の岡の松の。
葉風は吹き落ちて。
村雨の如くに音づれたり。
面白や折からなりけり。
大弦は嘈々(そうそう)として。
村雨の如しさて。
小弦は切々として、
私語(ささめごと)に異ならず。

(ここからクセ)
地謡:
第一第二の弦は。
索々として秋の風。
松を拂って(はらって)疎韻に落つ、
第三第四の弦は。
冷々として夜の鶴の。
子を思って籠の中に(このうちに)鳴く。
鶏も心して夜遊(やいう)の別れ止めよ

シテ:
一聲の鳳管は(いっせいのほうかんな)

地謡:
秋秦嶺の雲を動かせば。
鳳凰もこれにめでて。
桐竹に飛び下りて。
翼を連ねて舞ひ遊べば。
律呂(りんりょ)の聲々に。
情(こころ)聲に發す(はっす)、
聲文(こえあや)を成す事も。
昔を返す舞の袖。
衣笠山も近かりき。
面白の夜遊や、あら、
面白の夜遊や。
(以上クセ終わり)

して:
あら名残惜しの

地謡:
夜遊やな

して:
あら名残惜しの、夜遊やな。
適々(たまたま)閻浮(えんぶ)の、夜遊に歸り。
心を、暢ぶる所に。
修羅道の苦御覧ぜよ。
又瞋恚(しんに)が起るぞとよ。
あら恨めしや

わき:
先に見えつる人影の。
猶現るるは経政か

(ここからラストまでキリ)
して:
あら恥づかしや、瞋恚の有様。
はや人々に見えけるぞや。
あの燭(ともしび)を消し給へとよ

地謡:
燭を背けては。
燭を背けては。
共に憐れむ深夜の月をも。
手に取るや帝釈修羅の。
戰は火を散らして。
瞋恚の猛火は雨となって。
身にかかれば拂ふ劔(つるぎ)は、
他を悩まし我と身を斬る。
紅波は却って猛火となれば。
身を燒く苦患恥づかしや。
人には見えじものを。
あの燈火を消さんとて。
其の身は愚人夏の蟲の。
火を消さんと飛び入りて。
嵐と共に燈火を嵐と共に。
燈火を吹き消して暗紛れより。
魄霊は失せにけり、
魄霊の形は失せにけり



ここから先は

28字

¥ 500

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?