見出し画像

I'll be a person encourage.

長編小説を根気よく読んできたから、持久力や諦めない心は鍛えられてきたかも知れない。歳をとっても人生を諦めずに、生きていてよかったと思えることを蓄積していきたい。読んだ本の中から、多くの悲惨にあっても人生を諦めない登場人物を紹介できたら素晴らしいことに違いない。文芸批評ではなく、傷ついた人たちを慰め、前を向いてその人なりの道を見つけて歩み始める登場人物を紹介できたら、本を読むことが役に立つかも知れない。そういう役回りをぼくは演じてみたい。小説を書く作家の方を目指すのではなく、読者の方を勇気付ける人を自分に構築していきたい。

書いたことは当然自分に返ってくる。I'll be a person encourage.と書いたら、そのような自分になろうと考えることになる。そこで、自分がこれまで読んだ小説の登場人物の中で、君に紹介できる人物がいなかったか頭をめぐ回らせてみた。例えば「星の王子さま」にしても「デミアン」にしても「青年の環」の主人公の矢花正行にしても、「自由への道」のイヴィッチにしても、みんな君やぼくと同じような身の丈じゃないことに気づいた。何か特別で既に偉大なところがあって、今のぼくたちが住んでいる世界と違いすぎて、生きる糧にならないと思えた。小説というのは既に非現実で、普通にぼくたちが住んでいる世界とは次元が違っているらしい。じゃ、やっぱり参考にはならない、ということなのだろうか?「星の王子さま」について昔ブログに書いたことがある。

「星の王子さま」から確かにどのように生きるべきかのメッセージは受け止めることができる。人生の本質的な深いメッセージが書かれてあることは誰でも気づくと思う。ところがその通り自分が生きることができるかとなると、自分は王子さまなどではないと身のフタもないことを思ったりする。すぐにできないことを言い訳したりする。 もう少し粘って考えてみよう。「星の王子さま」の作者サンテグジュペリは、ドイツ軍のフランス侵攻から逃れてアメリカに亡命した元空軍パイロットだった。仲間のいるフランスに戻ろうとして、一人で飛行機に乗って帰らぬ人となった。「星の王子さま」という主人公と作者が一体になったと考えると、メッセージの意味も現実的になってくると思わないだろうか?今生きるぼくたちは、サンテグジュペリにも共感することができる。

話は跳ぶが、同じパイロットでぼくらは特攻隊員にも書き残したものを読んで共感することができる。それは小説の登場人物ではなく、同じ日本人で人生の先輩にもなる。ただ比べるのも気がひける感じもするが、サンテグジュペリは普遍的なメッセージを残し、敵であるドイツ空軍にも信奉者を持っていた。国や家族を超えて「星の王子さま」というキャラクターを通して普遍的なメッセージを残し得たことは、(民族を超えて)やはり賞賛すべきことのように思える。

「金持ちになると、何の役にたつの?」
「もし誰かが、ほかの星を見つけた時にそれを買うのに役立つのさ」
「この人は」と王子さまはこころの中で思った。
「あの呑ん兵衛と同じような理屈をこねているよ」(呑ん兵衛の理屈とは、なぜ酒を呑むかの答えとして「恥ずかしい気持ちを忘れるために」と言い、「何が恥ずかしいのか」の答えに「酒を呑むのが恥ずかしい」と言った。)

王子さまは言った。
「友だちを探しているんだ。『手なずける』ってどういう意味なの」
「今ではすっかり忘れられていることだけどね」とキツネが答えた。
「それは『絆をつくる、、、』って意味さ」
「絆をつくることなの?」
「そうなのさ」とキツネは言った。
「君は俺にとって、まだ十万人もの少年とまるで変わりのない少年にすぎない。俺は君が必要じゃないし、君もまた俺が必要じゃない。俺はきみにとって十万匹ものキツネと変わりのないキツネにすぎないのさ。だがね、もし君が俺を手なずけてくれたら、俺たちはお互いに必要になるんだよ。君は、俺にとって、この世でただ一人の少年になるだろう。俺も君にとって、この世でただ一人のキツネになるだろう、、、」

最後になって、この本によって自分が人の死について初めて美しいイメージを持つことができたことに気づいた。(どのようにしてそのようなイメージを持つことができたかは、君も自分で読んで確かめてほしい。既読の人ももう一度確かめて見てほしい)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?