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自我崩壊の危機と本との出会い

文学との出会いと自我崩壊の危機の時期は重なっている。自我崩壊の危機の時期は生涯3回ある。高校1年次に最初世界文学全集と出会い、10冊ほど読み進んだあと現実感覚がおかしくなって登校拒否の事態を招いたのが1回目。サラリーマン生活中盤で、社長からのパワハラで鬱になってその回復のために読んでいた時期が2回目。そして定年退職したあと、居場所がなくなり精神的な基盤を求めるために地元の読書会サークルに入ることにした時期の3回目である。

こうやって振り返ると読書というのは、日常生活から離脱して不安定になる状態と相関するということが言えると思う。最初は全く無防備で、文学の世界が新鮮で自分がどんどん成長していくように感じられた。読書による内面世界がどんどん大きくなって、日常の学校生活の方が小さく感じるようになっていたのかもしれない。受験勉強がだんだん付いていけなくなっていた。サラリーマンの時の危機は、社内の出世競争環境から脱落することで内面の独立要求が生じ、それと文学が結びついていたのだと思う。それは文学ばかりではなく、唯識仏教やトランスパーソナル心理学への関心にも向かっていた。定年退職した当時は、環境の変化から一度社会から離脱するのと変わらない体験をしたように思う。サラリーマンになる以前に戻って再度自分を立て直すために、内面の世界を文学で再建する必要があったのだと思う。

このように見ると文学ばかりではなく宗教や心理学も含めて、精神活動には欠かせない読書によってぼくは自分を作って、人生を社会からなんとか脱落することなく送ってきたとつくずく思うのである。

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