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寂しい幼年期

これまで書いてきたnoteとは正反対に、暗い現実を避けずに直面することにする。ぼくの幼年から少年の時期は、今から思うととても寂しい思いをしていたことを認めざるを得ない。父は日曜日も働いていてどこかに連れて行ってもらったことがほとんどない。中学の時友達になったU君は、あまりにぼくがどこへも行っていないのに同情して、夏休みに親戚のある生駒に連れて行ってくれたことがあった。小学校の間は、児童公園や近郊の小高い山に一人で「遠足」に行っていた。正月といっても家の中はしんみりとしていて、雪に閉ざされて寒い部屋でこれから続く長い冬に耐えていた記憶がある。ごくわずかにデパートに連れて行ってもらった時に、安倍川餅を買ってもらって帰ってきて食べるのが嬉しかったぐらいだ。隣の家の姉弟にはそれぞれひな祭りと端午の節句の行事がしっかりとあったが、うちの兄弟には何もなかった。欲しいとねだったおもちゃのGUNは一桁値段が違っていて、とても買えないと言われてもなかなか諦めきれなかった。学校は楽しかった。先生は優秀な人が多かったと思う。遊べることがあまりなかったから勉強するしかなかった。それが救いだったと思える。ぼくを最終的に救ったのは高校へ入ってから、世界文学全集を読みだしてからだった。現実の他に違う世界があることを夢中になって吸収した。現実の世界しか知らなかったら、暗い家の中で自殺を考えていたかもしれないと思う。

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