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あの「トランス・クリティーク」を読み始める

まだ読書三昧の境地には至っていないが、いま日がな一日本を読んで過ごしたいと思わせる本は、今年の目標に掲げた学術書「トランス・クリティーク」である。最初馴染めず、第2章の「数学の基礎」のところで挫折し、最初の序文に戻って今日ようやく第1章「カント的転回」の後ろの方まで「挽回」した。カントは「純粋理性批判」を買ってあってそのまま手付かず状態なのだが、これを読んで少しは馴染めそうだと感じられた。

これまでの哲学界の常識を「トランス・クリティーク」によって打ち破っている。カントとフロイトは共にコペルニクス的転回を成し遂げたと言う。これを読む前にフロイトの「精神分析入門」を読んでおいてよかった。柄谷行人氏は文芸評論から自身の業績をスタートしているので、フロイトよりはユングを評価していると思いきやフロイトなのである。

村上春樹はよく知られているようにユング心理学者の河合隼雄を師と仰いでいるが、フロイトの無意識の概念的資産をユングは捉え損ねているらしい。フロイトの方が普遍的なのである。それはさておき、カントのことが主著の批判三部作以外のも読み込まれていて、趣味判断が文芸批評の基礎理論になっているとの知見は意外な収穫だった。カントとマルクスは今日でも十分生かされる論説の宝庫なのである。日がな一冊だけを読み続けるとしたらそれに値する書物なのである。でも、よく分からない箇所に出会うとすぐに眠くなる書でもあるから、覚悟して付き合わなければならない。

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