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私のキャリアとアイドルのキャリア~アイドルとかけて研修医と説く、その心は~(前編)

いきなり変なタイトルで恐縮です。島根大学地域医療教育学講座の長尾大志です。

立場柄、医学生さんにキャリアのご相談を頂くことが多く、その時に自分の経験……といっても数十年前の記憶を掘り起こしてお話をしているのですが、もちろん時代は遷れど、キャリアについてのあれこれは普遍的に通じるところもあり、私の拙い話でも参考にしていただけることもあるのかなという感触です。また色々とお話をするにつけ、個人的に感心のあるアイドルのキャリアと通底するところもあるなあ、と思うことが多々あり、その観点で話をまとめてみようかなと思いました。


私のキャリア

まずは簡単に私の来し方を振り返ってみます。といっても、前半は普通の?臨床医として研修からの大学院、留学をさせて頂いて前任地の大学にやってきた、ここまでのところはまあそれほど特記すべきこともありませんので割愛します。ご興味のある方はそのうち学内のe-clinicで開催される海外トークセミナー?にお越しください(学内限定ですが)。学外でご興味のある方は、企画していただければフッ軽で伺います笑。
○○医大3人目の呼吸器内科スタッフと着任した私を待っておられたのは、山ほどおられた呼吸器疾患の患者さん、これまで呼吸器の教育を受ける機会のなかった医学生さん、研修医の先生方、それに地域の先生方でした。まさに「呼吸器不毛の地」という表現がピッタリの場所であることがすぐに実感され、莫大な日々の業務に忙殺されることになります。
しかしこのまま日々の業務をこなしているだけでは未来がない。今後自分がなすべきことは何か、と考えたときに、それは教育ではないかということにすぐに思い至りました。
まずは周囲の先生方に呼吸器疾患に関する知識やノウハウを知っていただいて、呼吸器疾患にも対応していただけるように。同時に学生さんや研修医の先生方に呼吸器診療の面白さを知っていただいて、1人でも多くの呼吸器内科医を育成する、それによってこれまで「適切な診療を受ける機会が得られなかった多くの呼吸器疾患患者さん」に少しでもその機会を増やすことができるようになるのではないか、と考えました。
元々臨床が大好きで、目の前の患者さんに少しでも貢献できないかと頑張ってきた自分でしたが、自分の手の及ばないところに、こんなにもたくさんの(近隣に呼吸器内科医がいないことで)困っておられる患者さんがおられるのだ、ということを知ったことで、自分がやるべきことがこの大学で教育をすることだ、と思うに至ったわけです。
そこで持っていた全リソース(主に時間)を使って、本格的に学生さんや研修医の皆さん、地域の先生方に「教える・伝える」ことを始めました。当初の数年間はフィードバックが全くなかったので、自分のやり方でいいのか答えがわからず、本当に苦しかったのですが、いろいろ質問を頂いて、それにお答えするために教科書を読んだり勉強したり……すると、いろいろつながってわかってくるんです。それがすごく面白くなって、多分初めて「面白いから勉強する」フェーズに入ってきました。やっぱり面白い(と自分が思う)話をすると、学生さんも聴いてくれるようになります。それで「呼吸器面白い」といってくれるようになりました。
思い返してみるとそもそも最初の一歩がわからないとなかなか興味もわかないし、勉強しようとか、本を読もうという気にもならない。学生~研修医の自分がそうでした。それゆえに、そこを手助けしてほしかった、その手助けをするのが医科大学にいる教員の大事な仕事ではないかなと思うようになりました。
それでがむしゃらに頑張って創意工夫を積み重ねるわけですが、やればやるほど面白くなってきて、自分は教育に向いているのではないかという気がしたのですね。これは一つの真理ではないかと思うのですが、とことん頑張った先に、やりがい、喜び、ひいては生き甲斐が得られるのではないかということ。仮にお金があっても、とことん(喜びをもって)頑張ることのできる対象がなければ、生きがいも得られないのではなかろうか?と思う今日この頃です。

ブラックとは

ちょっと話がそれますが、医師は「ブラック」になりにくい職業だと考えています。もちろん、過重な業務、睡眠不足、などなど、体調に影響するような、所謂ブラックといえる環境で勤めざるを得ない方々には配慮が必要かと思いますが、昨今の「働き方改革」のような行き過ぎた保護、過保護もまたやりがいを奪ってしまうのではなかろうかと思うのです。なにせ普通に「経験」をしていれば、普通は普通に医師として1人前になれるわけで、ここはなっておく方がいいでしょう。
そのうえでやりたいことが明確に決まっているなら、目標から逆算して「今やるべきこと」を全力でやるべきだし、差し当って明確な目標がなく、やりたいことがあるようなないようなケースでは、まず医師としての能力を全力で高めることに注力しておけば、その過程でやりたいこと、進むべき道は見つかるもので、プラスαの「どんな医師になる?」「どんなキャリアを歩む?」はその時考えても決して遅くはありません。
本来?の意味の「ブラック職場」は、理不尽な業務を理不尽にやらされ、やってもやってもなんの実にもならない、自身のためにならないということだと考えます。
これが例えば、
・休みの日も呼び出される⇒患者さんの「流れ」を切らすことなく体験出来る(疾患の理解に深みが)⇒上級医が不在(自分自身で判断する練習になる)
・看護師や薬剤師や技師や事務の仕事までやらされる⇒「医療」のウラまで実感出来る、他職種の立場でものを見る訓練ができる
ものは考えようで、結局臨床の世界は経験がものをいう世界という面があって、「経験」するためには、それなりの「対価」を支払う必要があるわけです。ですから一見「雑用」みたいなことをやらされる、ネガティブに見えることもやりようによっては医師としての深みに寄与する、貴重な経験になるのです。どなたかが言われていましたが、「雑にやるから雑用になる」「丁寧にやればそれは貴重な経験となる」ということです。

アイドルとかけて研修医と説く、その心は

いったいいつになったらアイドルが出てくるんだ!との皆様の心の声が聴こえるような聴こえないような気もしますので、今回の本題に入って参りますが、

アイドルは研修医に似ている 

説を唱えたいと思います。
どういうことか。

タイトルにもある~アイドルとかけて研修医と説く、その心は~
「何者でもない、ただ若いだけの時期である」ということです。

若い間はスキルなど何も持っていない。あるのは時間と体力だけ。持てるもの(資産)をどう使って財産(知識・経験・人脈・カネ??)を手に入れるか、若くなくなったときに何を手に入れているか。何も手に入っていなければ、その間は「ブラック」というべきでしょう。これを考えるのがキャリアプランニング、といえるかと思います。
で、この時期に何をするかによって、その後の芸能?人生が決まる。皆さんがご存じの、元アイドルの方々の事例を思い浮かべてみてください……(つづきは後編で)。




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