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IRR(内部収益率)について ①IRRとは

プロジェクトファイナンスを検討するにあたって、よく目にする"IRR"。
"IRR"とは何なのか、について説明をしていきます。

IRRとは

IRRは、Internal Rate of Returnの略で、日本語では内部収益率(以下IRR)と言います。野村證券の用語解説集によると、「投資によって得られる将来のキャッシュフローの現在価値と、投資額の現在価値の合計が等しくなる割引率」と定義されています。この定義だけだとピンとこないので、少しかみ砕いて解説します。

①現在価値と割引率

まず現在価値についてです。
現在価値は、将来のある時点のお金の価値を現時点のお金の価値に計算しなおしたもののことです。

前提として、今受け取れるお金の価値と、将来受け取れるお金の価値は異なるということを理解する必要があります。

例を使って説明します。
10年国債の利率が10%で変わらないとすると、手元資金の100万円は10年後にいくらになるでしょうか。毎年の利息も再投資すると考えた場合、毎年1.1倍に複利で増える ( 計算式:X万円×(1.1^N年)) と計算されます(グラフ1)。

グラフ1

現在の100万円が10%の利率で毎年増えると10年後に239万円になるということは、10年後の259万円を年率10%で割り引くと、現在の100万円になるといえます。

このようにお金の価値は時間によって変化するという考え方があります。
現在価値は、お金がいつ発生するかによって価値が変わることを、一定の価値基準で比較するために、将来のある時点のお金の価値を、現時点のお金の価値に置き換えたものです。

この時に割引率を使います。
割引率は、ある時点のお金の価値を現在の時点の貨幣価値に算出するために用いる比率のことです。

仮に、あなたの友人から「10年後に全額必ず返すから、100万円貸してほしい」と言われ、あなたがその返済を100%信用できると考えた時に、どうしますか?
10年後の100万円というのは今の100万円と同価値ではないというのはすでに述べたとおりです。割引率が6% (※) だと仮定した場合、10年後の100万円にいくらの価値をつけるべきでしょうか。
(※) TOPIX(東証株価指数)の平均的な期待収益率は6%

100÷(1.06)^10=約39万円

つまり、あなたがドライな投資家であれば、56万円が友人に貸す上限金額となります(グラフ2)。

グラフ2

②IRRの定義

IRRの定義を改めてみてみます。
「投資によって得られる将来のキャッシュフローの現在価値と、投資額の現在価値の合計が等しくなる割引率」でした。
つまり、投資額に対してどれだけのリターンが得られるかを時間的価値も考慮して計算しており、投資期間のキャッシュフローの正味現在価値(NPVと言いますがここでは詳細は説明しません)がゼロとなる割引率と言えます。

③IRRの計算方法

IRRの計算方法は以下の通りです。初期投資額と各年のキャッシュフロー総額によってIRRが求められます。

  • C0:初期投資額

  • C1~n:1~n年目のキャッシュフロー総額

  • r:IRR

IRRの計算式

IRRは、投資にあたっての収益率を求める際に、ハードルレート(投資する際の最低限の収益率)との比較によって投資をしていいかの判断をするときなどに利用されます。
シミュレーションで具体的な数字を用いながら見ていきましょう。

投資先Aと投資先Bの、投資額とキャッシュフローのシミュレーション
(※) CF:キャッシュフロー

表1の通り投資額と投資収益(キャッシュフロー)が見込まれ、3年目で売却するとします。
IRRは上記の計算式にあてはめて計算します(または、ExcelのIRR関数を使うと簡単に計算できます)。
投資先Aも投資先Bも、投資額は40万円、キャッシュフローの合計が60万円です。ただ、IRRの計算はお金の時間的価値を考慮に入れているため、より早いタイミングで、より多くの投資額を回収できる投資先Bの方がIRRが高く出ます。
事業計画を作る際に、IRRをいかに高くするかが議論されることがあります。シミュレーションでみたように、投資回収のタイミングを早くする、というのが一案になります。

まとめ

今回は、IRRが何なのか、について説明しました。
IRRとは「、投資額に対してどれだけのリターンが得られるかを時間的価値も考慮して計算しており、投資期間のキャッシュフローの正味現在価値がゼロとなる割引率」と言えます。
IRRによって、多数の金融商品を比較し、投資判断の参考になると思います。

参考文献

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