あるべき場所にあるべき姿で


この文章は『行動展示に関するいくつかの考察 Advent Calendar 2017』の参加記事です。

この文章は、kikiくんのこの記事を読んでいることを前提としておりますので、まだ読んでいない方は必ずお読みください。


【まえがき】

初めましての方は初めまして。ほたる( @hotar_nazoneko )と申します。
一応自己紹介をしますと、謎解いたり作ったり、pop'nメインに音ゲーしたりしている人です。
謎制作はFirefly's Library( @Fireflys_Lib )っていう今ほとんど動いていないアカウントにて超不定期に一枚謎だしたりweb謎したり、リアルイベントを行ったりしています。基本的に人間をやめていれば解ける程度の難易度です。あと東狼構成員です。
(主な作成物)web→ヨテイチョウワヨテイチョウワ2
リアル→forXXX、BAND、Un-doll(Lived Rats)

それじゃ、自己紹介はこれくらいにして、本題に入っていきましょうか。

お恥ずかしながら、行動展示、という単語についてほとんど初耳でして、今回その考察、ということで、分からないながら分からないなりに考察してみた……
のですが、よくわかりませんでした。はい。
なんて言いますか、掴めていないと言いますか、うーん。

じゃあ「よくわからない」という結論で終わらせていいかというと当然そんなことはなく、しかし分からないものはやっぱり分からないため、ここは自分なりの疑問解決法を利用することにした。

ではその解決法とは何かというと「何かしらの別の例を自分で用意してその法則なり本質なりを理解しやすくする」という方法。
つまりもう一個行動展示の例を作っちゃえという話。

ていうわけで作りました。もう一個の行動展示。
今回はあくまで「kikiくんの行動展示」の考察なのでそれっぽいものにしてみたつもり。

…とはいえ、「考察」という行為からはだいぶ逸れてるし邪道だとは思う上、そもそも行動展示は数学の公式とかとは違って決まったルールもない(はず)のでこの例が行動展示なのかどうかすら怪しい。
あと相変わらず文章が長いので根気がいるね。

んでは、読む気になった方は以下よりお読みください。
どうでもいいから結論見せろって方は【あとがき】まで。


【考えてみた】

『人工知能の行動展示』

部屋に入るとそこには大きなモニターと電子端末が3台ずつ設置されていた。
モニターと電子端末は1台ずつがセットになっており、それ以外にはテーブルと入口出口の扉くらいしかない。カメラの類すら見当たらない。
テーブルには「はじめにお読みください」という紙があるので、まずはそれを読む。

ーーーーーーーーーー

《展示について》
この展示はお掃除ロボットのAIについての行動展示です。
あなたはモニターからフィールドにおけるお掃除ロボットの動きを観察することができます。

《フィールドについて》
4m×5mの長方形の部屋です。
50cm四方のマス目があるチェック状の床になっています。
初期状態において障害物の類はありません。

《お掃除ロボットについて》
直径45cmの円形のロボットです。
今回の行動展示のため、以下の特徴を設けております。
・マス目の中央を通るようにする
・斜め移動はできない
・一定のルールで動くが、全てのマスを通るようにする
・スタートより5分で停止する

《端末について》
端末に表示されている「START」をタッチすることで、フィールドにて実験が開始されます。
端末上には、対応するフィールドが模式図にて写し出されます。
実際の動きはモニターにてご覧下さい。
端末上で緑に光っているマスは、まだお掃除ロボットが通過していないマスです。
お掃除ロボットが通過したマスは赤く光ります。
全てのマスが赤く光ったとき、ロボットに帰還許可の電波を送ります。
この状態でロボットが最初のマスに戻ったとき、お掃除成功という形で終了となります。
その前にロボットが停止した場合、お掃除失敗という形で終了となります。
また、展示を行っている最中は、端末の模式図に触れることにより、フィールドに干渉を行うことができます。
内容については実際にお試しください。

《展示の終了について》
3つの端末にて実験を終えたとき、このお掃除ロボットの行動展示は終了となります。
なお、3つの端末の出来ることや初期状態に差異はありません。
ロボットの行動展示が終了次第、出口の扉のロックが解除されます。
なお、入口の扉のロックは解除されませんので、必ず出口からご退出ください。

ーーーーーーーーーー

ある程度しっかり説明されているものの、結局のところよくわからないので、実際にやってみることにする。

端末に表示されている「START」をタッチすると、モニターに写し出されているフィールドにて、お掃除ロボットが動き出した。
ひとまず眺めてみる。どうやら入口から見て右側から真っ直ぐ奥に進んでいて、行き止まりに辿り着くと1マス左に進み、入口方向に戻っている。

端末上では説明の通りロボットが進んだマスは赤く光っていく。
このままいけばすぐに全てのマスを埋められそうだ。

説明の上ではどうやら端末にてフィールドに干渉できるらしい。
実際にやってみることにする。
マス自体に触れても何も起こらないが、マスの境目に触れるとフィールドのその場所に壁がせり上がった。
また、外側のマーカーに触れるとその列自体が1マス分移動した。
他に出来ることはなさそうだ。

そうこうしているうちにこちらの行動などお構いなしにロボットは全てのマスを通過し終わって初期位置に戻ってしまった。
これで1回目の実験が終了したわけだが、この行動展示は3回やらないと終わらない。
同じことやるのはぶっちゃけ暇だ。そうだ、悪戯しよう。

というわけで2回目。出来る限り邪魔をしようと試してみる。
どうやらロボットは完璧には自分が通ったマスを把握しきれていない様子でうまく操作すると迷いだした。

やっていくうちに少しだけ仕様が分かった。
・ロボットがいるマスには壁をたてられない
・ロボットのいる列は移動できない
・絶対に侵入できないマスが生まれる操作はできない

この仕様に気づくまで手間取ったのもあり、多少の妨害はできたものの、結局ロボットは全マスを通過し、無事初期位置に戻ってきてしまった。

さて、3回目。もう仕様は分かった。
それはもはや行動展示とは呼べそうにない、ロボットのAIと人間の真剣勝負になっていた。

戦いが終わった後、出口の扉のランプが光る。
出口の扉を開いて通路を抜ける。

そこは、広い部屋だった。
2mくらいの間隔で柱が立っている。
入った扉のすぐ近くにもうひとつ扉があるものの、「ロック中」と表示され開かない。それどころか入った自動ドアさえ開かなくなってしまった。

ガシャン、と数m離れたところで音がした。
振り返ると、柱と柱の間にシャッターが降りていた。
更に、先を見ると床が動いている。

…これは、さっきの実験だ。
そう思っていた所に、放送が流れる。
「柱によって区切られた全ての正方形の空間を通過すれば、扉が開き建物の外へ出ることができます。
この空間はAIによって干渉されます。そのAIは、先程のお掃除ロボットの3回目の実験で、貴方が行った干渉のやり方を学習し、再現したものとなります。
それでは、『自身による自身の行動展示』、スタートです。」

『自身による自身の行動展示』終


【考察・結論】

ここまで読んでいただきありがとうございます。
まず↑のこれは本当に行動展示なのか???という疑問があまりにも大きくて、ここから導き出せる結論は頓珍漢も良いところなんじゃないかとも思うのですが、自分なりに結論を出そうと思います。

「人は常に誰かに見られている」
kikiくんの仕立てた行動展示は、これをダイレクトに突きつけてきます。
監視社会、などと騒がれる昨今ですが、この世界が行動展示なんだから監視の質が変化したに過ぎない話でしょう。

しかし、自身が展示されているのは果たして他人だけなのでしょうか?
動物はただ我々を眺めているだけのことがあります。何を考えているのかなど判りようがないですが、向こうからしたら展示されている人間を眺めているのかもしれません。
猫にとっては、猫じゃらしがあったらそれを取ってこっちに向かってくるのは人間の行動展示に他ならないでしょう。猫だって人間を見ている。

そして、もしかしたらAIにだって人間は見られているのかもしれない。
人、動物、物、なにもかもに見て見られる世界。
なんだか文面だとすごく息苦しそうだ。

でも、忘れないで欲しい。
自分を一番監視しているのは、自分に他ならない、ってことを。
どんなに行動展示から逃げても、その逃げている自分は自分に展示されている。
目を閉じたとしても、五感そして第六感なにもかもで自分は自分を観察できてしまう。
行動展示から逃げることなど、仮に何があったって出来ない話だと。

じゃ、結局何が言いたいのか、っていうと、何したって行動展示からは逃げられないわけだし、諦めましょうよ、と。
行動展示は終わりません。んじゃあもう展示され続けるしかないじゃないですか。

…「えっ、ここまで書いてその結論!?」ってお思いの方。今これを書いているわたしも同じ事を思っています。
でも、ここまで書いた上でのその結論は、ちょっとだけ、違ったものになるはず。

なぜなら、一番の観察者は自分なのだから。

我々は常に他人の目を気にして生きています。でも、それは行動展示の観察者としてはただのモブでしかない。
モブのために何かするくらいならば、一番の観察者である自分に対して「この自分なら展示されてもいい」と思えることの方がよっぽど展示物としては大きな価値を持つでしょう。
その展示物はもしかしたら、非難されるかもしれない。だけど、もしそれが本当に「自分が恥ずかしくない自分」ならば、賛同してくれる人は確実にいる。
そして、どうせ生きるならそういった連中と生きた方が断然楽しいでしょう。

…貴方は、自分のあるべき貴方でいますか?

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