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『BAND』 解説・雑記

こんにちは。Firefly's Libraryのほたるです。
この記事は『ナゾガク2017』にて行われましたFirefly's Library公演『BAND』の解説記事となります。

感想などはtwitterで「#図書謎」を付けて呟いてくれるとうれしいです。

【概要】

場所→ナゾガク2017会場 地下ロッカー室
定員→各回1組2名(6回/日、全12回)
料金→1500円/人 
制限時間→30分
拘束時間→50分
参加方法→開始前に参加希望者が集合後、抽選にて決定

【ゲーム開始まで】

解説をスムーズに行うために、まずは部屋の見取り図をご覧ください。

部屋Aと部屋BCの間の壁は大部分がガラスとなっていますが、黒い厚紙により他の部屋の様子を見ることはできません。
部屋Bと部屋Cは一つの部屋となっていますが、カーテンによって区切られており、便宜的に異なる部屋として扱います。なお、カーテンの下には15cm程の隙間が空いております。
椅子XとYはパイプ椅子で、向かい合うように置かれています。完全ではないものの、ある程度は固定されており簡単には動きません。

まず、参加者は部屋Aに移動します。
参加費を支払い、荷物を預けると司会の前説が始まります。

「本日はFirefly's Libraryナゾガク公演『BAND』にお越しいただきありがとうございます。
ゲームの参加にあたって、まずはこちらのゲーム説明をお読みください」
そう言って以下の紙を手渡します。

「お読みいただけましたかね。では、私からさらに追加の説明を行います。」
そういって丸に斜線の入った赤いマークを見せる。

「こちらのマークはご存知でしょうか。
……そうです、『ストップマーク』です。このストップマークのルールはもうお二人ともご存知ですよね。
しかし、今回はちょっと特殊です。
いきなりですが! 二人で『じゃんけん』をしてください!」

じゃんけんをしてもらい、勝者の方向を向く。
「はいあなた!勝ちましたね!!おめでとうございます!!!
なんとあなたはこのストップマーク、『存在しないもの』とお考え下さい!
つまり、触ったりしても大丈夫です!」
ゆっくりと敗者の方向を向く。
「……ってことは……負けたあなたはもうお分かりですね?
あなたはこのストップマークに触れることはできません。
それどころか、何かを使い間接的に触れることすらも禁止とします。
残念でしたねー。」

「ルール説明は以上となります。
覚悟が出来ましたら、こちらのアイマスクをお付けください。
ルール説明にもあった通り、このアイマスクはゲーム開始と同時に我々が外しますのでご安心ください。」

アイマスクを付けると、敗者の方から案内され、椅子Yに座らせられます。勝者は椅子Xに座らせられます。
そして、二人とも、椅子に固定された鎖で腰を縛り付けられ、さらに椅子に固定されたもう一本の鎖で片足も縛り付けられます
さらにさらに椅子Xの人には手錠(割とガチな奴)が掛けられ、椅子Yの人も両手首にリストバンドを付けられた上に鎖で両手首を拘束されます
とどめとばかりに、二人の手を伸ばし、Xの手錠とYの鎖をさらに鎖で固定されます
ついでに帽子をかぶせられ、これで準備完了です。
見た目的にはこんな感じ。完全にヤバいやつだこれ。
注・以下の画像は公演終了後の部屋公開での画像です。実際には周りに人はおりません。

【解説】

解説の簡易化のため、以下、椅子Xに座った勝者を「X」、椅子Yに座った敗者を「Y」と表記します。

STEP1

アイマスクを外され、視界こそは確保できたものの、マジで身動きが取れません。
よってとりあえずは目で見える情報を手に入れましょう。
すると、帽子の前面に何やら謎が貼りついている事に気づきます。

……まあこうやってみる分には解説の必要すらない問題ですね。
答えは「927」です。
ですが、問題はこれがお互いの頭の上に乗っているということです。
つまり、二人ともどちらか片方の情報しか見ることが出来ないのです。
故に、この情報を文字化して伝えねばなりません。

見えている部分の黒いところを上下左右で伝える(下画像左の数字なら「上、右、下」といった具合)方法や、可能性のある数字を伝える(下画像左の数字なら「3、5、9」といった具合)方法が主に使われていたように思います。

お互いの手を繋ぐ鎖には三ケタのダイヤル錠が付いていました。
「927」と入れることで、これを外すことに成功します。

STEP2

箱を開けたわけではないので、当然のことながら新しい情報など手に入りません。
しかし、これにより少しだけ身体の自由が手に入りました。
そして、それは今までは物理的に不可能だった行動が取れるようになるということです。

説明をしやすくするために、人が座っていない状態の部屋の画像を載せておきます。(公演時の完全なセッティングとは異なります。)
画像左側の椅子がX、右側の椅子がYとなっております。

まずはYが前のめりになってみましょう。
すると、Yの座椅子の背もたれから金網が伸びており、その上部にフックが付いていて、鍵がかかっていることをXが見ることができます。(上画像には鍵がありません。)

二人を繋ぐ鎖が取れた今なら、手錠がかかっていたとしても、手を背中側に動かすことが出来ます
もちろんYはどこに鍵があるかなど分かりませんが、Xが位置を伝えることによりスムーズにとることが出来ます。
鍵は大きく、南京錠などの鍵ではなさそうです。これはXの手錠の鍵でした。

次に部屋を見回してみたり、何かできることはないか探ってみます。
次の謎を解くためのヒントがいくつかありました。
まずは、今なら最初に被せられた帽子を取ることが出来るということに気づきます。
それぞれの帽子の中には以下の紙が入っていました。

そして天井にはこれが。

Yの鎖の下にあるリストバンドを弄ると中からこのような布が出てきます。

部屋Aから部屋Bに向かう扉にもありました。
こちらは部屋Bにありますが、カーテンの下には隙間が空いているためX側からならば問題なく見ることが出来ます。

このヒントを組み合わせることでYの手を縛っている鎖を外すことが出来るようです。

こちらは文字を1枚目の問題のように配置し、横読みで5文字の単語を作ることで解くことが出来る謎になっていました。
例えば一番上は「ドウ○セン」なので、これでできる単語はドウカセンとなります。
このようにして出来る単語は上から「ドウカセン」「ハガイジメ」「アリジゴク」「フショウジ」「クロウニン」となります。
……ロクな単語が存在していないね!!!!
パスワードは「カイジョウ」となります。

これにて二人の手の拘束も解かれました。

STEP3

手の自由が確保されたということは、新たにできることが増えたということ。
次にできることを探っていきましょう。

ゲーム開始からYのそばにこのような小さなケースが置いてありました。

今のYならば手を伸ばすことにより容易に入手が可能……かと思いきや、上部には無情にもストップマークが貼られています。
間接的に触れることも禁止されているYでは、何らかの方法で吹っ飛ばしてX側に送ることもできません。

ここで、Xの椅子の背後にマジックハンドが置かれていることに気付く必要があります。
このマジックハンドはそこそこしっかりと固定されており、両手の自由が利かないうちに手に入れるのは困難でした。(手に入れた猛者もいるにはいた)
これを手に入れることにより、マジックハンドでケースを手に入れることが出来ました。

ケースの中にはYの腰の鎖に付いている南京錠の鍵と一枚の小さな鍵が入っていました。
これでYは上半身が自由になりました。

STEP4

ケースの中の紙にはこのようなことが書いてありました。

背中にあるアルファベットなど、向かい合っているこの状況下では見ることなどできません。
ここは、見る以外の方法を使わねばなりませんでした。
こればかりは考えていても始まりません。試してみましょう。
そう、自由になって背中側まで伸ばせるようになった手で触ってみるのです。
すると、なにか物体があることに気づきます。
実は、木製のアルファベットが貼りつけられていました。

この2つのアルファベットを触覚で判断する必要がありました。

さて、アルファベットこそ分かりましたが、いったいこれはどこで使うのでしょう?
やはりここも物理的な行動範囲の拡大がキーになっていました。
Yの腰の鎖が取れたということは、Yは立てるようになったということです。
立ってみるとYの座っていた座布団がめくれることに気づきます。
めくってみると、その裏に謎がありました。

つまりこの盤面を使い、SとGを他のアルファベットを通らないように結べばいいようです。
解いてみると結構遠回りをさせられてめんどくさいです。
通った文字は「イチマンワルヨンヒクジュウキュウ
つまり「10000÷4-19」、計算すると「2481」となります。
現時点で開錠していない鍵の中で四桁の数字を入れられる鍵はXの腰の鎖に付いている四桁錠のみです。よってこれに数字を合わせるとXも上半身の自由を手にすることができます。

STEP5

Xの腰の鎖が取れたということは、やはりXも立てるということ。
先ほどのYと同様に立ちあがり、座布団をめくりましょう。
案の定?、新たな謎が出てきます。

やはりというかなんていうか、こう画像として見るとなんてことのない問題ですね……。
STEP4の迷路と組み合わせて、数字のある部分の文字を読んでいきます。
すると、「TODAY」の文字が出てきます。つまり「今日」です。
この公演が行われたのは3月19日と20日。よって「319」「320」(日付により変動)となります。

しかし、実際の現場ではSTEP4の迷路とこの盤面を同時に見る事は至難の業です。どちらも椅子に固定されており盤面を渡すなどということはできないので。
よってここも二人で力を合わせてうまく情報伝達することが重要になっていました。
「上から10マス、左から7マス」のように座標で伝えると分かりやすかったように感じます。

三桁の数字を入れられる鍵はYの足元の鎖の三桁錠しかありません。
これを外すことにより、ついにYは完全に開放されます!

STEP6

さて、残すはXの足元の鍵だけになりました。
どうやらこの鍵は南京錠のようです。つまり、外すためには鍵そのものを見つけるしかありません。
自由に歩けるようになったYはこの鍵を探さなくてはなりません。
しかし、この部屋にはそもそも物があまりありません。
ただひとつ、今まで手にすることが出来なかったものがありました。
それが、Yの背後の壁に掛けられていた額縁です。

こちらは壁に掛けられているため、「貼ってあるもの」ではありません
つまり、外すことが出来ます
外してみると、裏にはこのような紙が貼られていました。

……どうやら、一人で部屋を出なければならないようです。
迷いますが、もう本当にこの部屋Cには何もなさそうです。
部屋Cと部屋Bを仕切るカーテンの前には司会が立っていました。
「本当に先に進みますか?」と問われますが、勇気を出して進むしかありません。
「では、お通りください。」
司会はカーテンを開き、Yを部屋Cに通し、一緒に入っていき、カーテンを閉じた。

FINAL

部屋BでYが見たものはストップマークの貼られた扉だった。

部屋AとBを繋ぐ扉にも、荷物置き場の扉にもストップマークは貼られていた。
そして、あろうことか今自分が入ったカーテンにすらストップマークが貼られていることに気づく。

進むことも戻ることもできない。
そう、一人で部屋を出ようとしたYは、完全にこの小さな空間に閉じ込められてしまったのだ。

この状況を打破する方法はたった一つしか存在しない。

Xの足の拘束を解き、ストップマークの影響を受けないXがカーテンと扉を開けてこの部屋から脱出する」ことだ。

……そして、この空間に、たった一つだけ物体が置かれていた。

見取り図の部屋Bの左上の角のあたりに、ストップマーク付きの小さなポーチが置かれていた。
ここで、司会がYに語り掛ける。

「このポーチの中に、Xの足の拘束を解く鍵が入っています。
他の場所には鍵はありません。
あなたはカーテンから先ほどの部屋に戻る事はできませんが、声でコミュニケーションをとるなどの行為は構いません。
また、必要であればポーチは何度でもこの位置に戻します。
では、頑張ってください。」

さて、ここで二人のするべき目標が明確になりました。
このストップマーク付きのポーチをなんとかしてYが触れることなく遠くにいるXが手にいれる」事です。

見取り図でも説明した通り、カーテンの下には隙間があり、アイテムなどは地面を滑らせて渡せそうです。
しかし、Xの椅子からポーチは3m以上の距離があり、たとえマジックハンドを限界まで伸ばしたとしてもカーテンに届くかどうかといったレベルです。
また、マジックハンドにはストップマークがついており、Yに渡すことはできません。
仮に渡せたとしても、ポーチにストップマークが付いている以上、出来ることはほとんど無いでしょう。
帽子を見てみると、ご丁寧にもアジャスターが切断されており、やはりこれも活用することは難しそうです。
他に手に入るアイテムなど、額縁、小さなケースなど役に立ちそうにもありません。

この不可能状況を、打破する方法などあるのでしょうか?

その鍵は、今の今まで自分達に不自由をもたらしていた物にありました。
確かに、アイテムには使えそうな物はありません。
しかし、ここにはアイテム以外にも物がありました
……そう、今の今まで自分たちを拘束し、自由を奪ってきた鎖です。

これを使えば、もしかしたら何か出来るかもしれません。
実際にXの腰を縛っていた鎖はだいぶ長さがありそうです。
この鎖の端は片側の椅子に固定されているので、長さが足りるかどうか、もう一方の端をYに渡してみましょう。
限界まで伸ばすとこうなります。

……うーん、微妙……。
届いてはいる、たしかに届いてはいるのですがこれじゃほとんどなにもできません。
ストップマークのルール上、鎖を弾いて吹き飛ばしたりするのもアウトです。
実際色々試してみてもこのポーチが意外と重く(実は余った鎖を入れて重さを嵩増ししてあります)、Xの手元まで動かすことは不可能そうでした。

打つ手なしかのように思えますが、まだ諦めるには早いです。一本がダメなら、別の鎖を試せばいい。
Yの腰を縛っていた鎖もだいぶ長さがありそうです。
こっちも伸ばしてみましょう。

……やっぱりこれも微妙……。
先程と同じくなんとなく届いているだけでダメそうです。
他の鎖はこれほどの長さはなく、届きすらしませんでした。
結局、どうしようもないのでしょうか?

しかし、ここまでくれば、たったひとつだけ、手段がありました。
微妙に届く鎖が1本じゃダメだけど、2本あれば、今までとは状況が違ってくるはず。

ちょっとでも届く長さの鎖が2本あるならば、鎖を繋げて1つの大きな輪にしてしまえばいいのです!(座席同士は繋がってないのでちょっと違うけど)

え?鎖どうしを結ぶだけの長さがない?
いやいや、それを解決する手段だって、ちゃんと部屋にありました。
そう、今まで鎖と共に自分たちを拘束してきた南京錠です!
当然これならば鎖同士を繋ぐことが出来ます。
Yの制限はストップマークに触れないことです。つまり、ポーチに触れていない状況下で鎖を繋ぎ、その鎖をポーチに触れないように置くだけならばルールに抵触しません。

あとは、この状態でXが鎖の片側を引っ張れば、鎖の長さが短くなっていき、ポーチがXの方に引き寄せられていきます。
ちょっと文字では分かりにくいかとも思いますので、動画でもあげておきます。

こうなれば後はポーチを開け鍵を手に入れて、脚の拘束を解き、カーテンを開けてYと共に扉を開けこの部屋から脱出するだけです!
これにて脱出成功です!

解説は以上となります。
成功率は本公演で10/12でした。約83%ですね。高い。
分からないことや質問などありましたら、コメントかtwitterまでお願いします!

【制作スタッフ】

原案・謎→ほたる(@hotar_nazoneko)
ビジュアルデザイン→モアイグマ(@moaiguma)
当日キャスト→ほたるモアイグマなお(@naoperc)
手錠などを貸してくれた危ない親切な人→田中太郎(@___Mr_J___)
その他LINEグループにて相談に載ってくれる方
こうりん(@kourin516)、ぬえ(@KJRY0)、折木栞(@orikisiori)、フスマ(@AirZoleBros)、想幻(@rekihidan)、真由美(@mayumi__1204)

【雑記】

私ほたるは、普段は理不尽に片足突っ込んでいるような超高難易度の謎解きを作っています。もちろんそれ自体は好きでやっているので、特に不満のないのですが……。
実は脱出ゲームは小学生のことからハマっておりまして、緻密な謎解きだけしか興味ないわけではないんですよね。
ルーム型で部屋漁ってるだけでも超楽しいし。

ってなわけで自分流にルーム型を作ってみたらどうなるかな、って色々考えてみて、思いついたものがこのBANDです。

コンセプトは
・物理的拘束の開放による行動範囲の増加による新たな謎の入手
・縛ってきた鎖や鍵を利用して脱出
・自由になった側ではなく自由じゃない側が自ら最後の鍵を取る

です。
自分たちを縛ってきたもので脱出するなんて激アツじゃないですか。

ラス謎の発想が出たときに、そういえばナゾガク会場にこの部屋があるな、と思い出し、もうこれは何が何でもこの部屋を確保してやるしかないなと。

実際やってみた感想としては、まず椅子を動かないようにするのが想像以上に難しく、モアイグマさんの案がなかったらここまでうまくいかなかったと思います。

パイプ椅子やアイテムをどう固定するかなどのモアイグマさんのメモです。アクリルシートはA3のクリアファイル分解して繋げてました。

また、ラストも帽子と鎖を繋げたり(それでアジャスター切った)と答えを一つにするのは一筋縄にはいきませんでした。なんとかなってよかった。
あとは流石に準備が大変すぎましたね。参加人数に対して手間が掛かりすぎました。よってネタバレ解禁です。

椅子固定の件を含めてモアイグマさんには本当に頭が上がらないですね……。
ビジュアルを描いていただいたのもモアイグマさんです。
ビジュアルについてですが、
『玉井の地下のイメージでコンクリート壁に手描きの鎖が2次元なのか3次元なのかわからないようタイトル文字をあえて凹んでいるように描きました。
これはエッシャーの「描く手」からインスピレーションを受けています。』
という制作話があります。(本人鍵垢のためツイート引用)

Bの鎖は凹んでいるけどDの鎖は浮いているという表現方法はすごいとしか言えない……

【参加者の声】

最後に参加した方の呟きを載せておきます。
全てではないことご了承ください。

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