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やっぱり “神” はすごかった 『M.S.G.』 McAULEY SCHENKER GROUP

ハードロック/ヘヴィメタル界隈で “神” と言えばそれはマイケル・シェンカーのこと。

あらためて経歴を見てみると、1972年にスコーピオンズの『Lonesome Crow』からレコーディングに参加しており、『Fly To The Rainbow』を経てUFOに加入。この辺りからがマイケル・シェンカー伝説の始まりでしょうか?

なにせ、UFOに加入して一発目が『Phenomenon(現象)』なのです。ここにもう“Rock Bottom”や“Doctor, Doctor”が収録されているのですから末恐ろしい話ですが、実際にそうなります。

↓は『Phenomenon(現象)』収録の美しいギターインスト。


マイケルはUFOのスタジオ・アルバム5枚に参加しており、「意外といたんだな」と驚きますが、名盤の誉れ高いライブ・アルバム『Strangers in the Night』(ここでのマイケルのプレイはまさしく異常)がリリースされた時にはバンドを脱退。スコーピオンズに復帰したり、薬物/アルコール中毒のリハビリをしたりと色々あったようですが、マイケル・シェンカー・グループを結成することになります。

マイケル・シェンカー・グループとしての1stアルバムには『神 (帰ってきたフライング・アロウ)』という邦題がついており、きっとここから神の称号も定着したのではないかと思います。実際、その風貌もフライングVを構えた格好も不安定な行動も神がかった感じなんですよね。いろんな意味でたまらん。

マイケル・シェンカー・グループに名曲はたくさんありますが、個人的にはやはり“Into The Arena”や“Captain Nemo”といったギター・インストが例えようもなく素晴らしく、まさしく神なんじゃないかと思ってます。


ただ、私がここで取り上げたいのはこのマイケル・シェンカー・グループの後、ヴォーカルにロビン・マッコーリーを迎えてグループ名をマッコーリー・シェンカー・グループとした時代の、しかも3枚目のアルバムなのです(需要ないなー)。

どう考えてもマイケルについて書くならマイケル・シェンカー・グループかUFOの時代でしょうし、仮にマッコーリー・シェンカー・グループを取り上げるにしても、1stか2ndじゃないかと自分でも思います。

しかし、久しぶりに聴いた『M.S.G.』(ややこしいですがコージー・パウエル在籍時代の『MSG』とは違ってドットが入っています)にハマり、マイケル・シェンカーを振り返る機会にもなりましたので、ここで書かせてください。

そもそも、世代としてはマッコーリー・シェンカー・グループの1st『Perfect Timing』がリアル・タイムなので、この時期に思い入れがあるのです。

おそらく、UFOやマイケル・シェンカー・グループから追っていた方々からすれば、この『Perfect Timing』は「神が軟弱になられた」という感じだったと思うのですが、当時の私からすればマイケル・シェンカーを聴くのは初めて。

適度にメロディアスなハードロックがアメリカナイズされた(←この言葉も聞かなくなりましたね)その時代の音で仕上げられているうえにロビンの歌もよく、長すぎることなくしっかりと起承転結のあるギター・ソロはどれも最高のものでした。2nd『Save Yourself』もあわせて、とにかくよく聴きました。

3rdアルバムとなる本作『M.S.G.』がリリースされたのは1991年12月。前作『Save Yourself』から2年ほどが経っていましたが、この間には大きな変化が起こっていました。

グランジ/オルタナと呼ばれることになるニルヴァーナやパール・ジャムらの台頭と、メタリカのブラック・アルバムに象徴されるヘヴィネス重視の潮流が始まっていたのです。

その影響下にあった私は、本作をレンタルしてカセットテープに録音したものの、おそらくその音や曲調を時代遅れに感じたのでしょう。よく聴いたのは ⑴ Eve と ⑾ Never Ending Nightmare くらいで、全体を聴き込むことはありませんでした。1991年は他に名盤も多く、その影響もあったと思います。

そんな理由であまり聴いていなかった本作ですが、なぜか久しぶりに聴いてみたのです。するとおじさん、「あー、こういうのが好きだったなー。安心するわ」と気に入ってしまったのです。

若造だったリリース当時と違い、流行りの音楽性に左右されることがなくなってしまったおじさんはまっすぐに聴くことができましたので、「やっぱりいいメロディを備えた、最適なギター・ハードロックだな」とウルウルしてしまいました。

⑴ Eve は当時から気に入っていた曲で、ロビン在籍時代を象徴するようなメロディを持ったハードロックです。サビが覚えやすく、この時代らしいコーラスが加わってキュンとなります。本作のベースにはジェフ・ピルソン(元ドッケン)が参加していたようで、ということはコーラスでも大きく貢献しているのでしょう。新たな発見でした。

⑵ Paradise は全く記憶にありませんでしたが、これが気に入ってしまいました。キングダム・カムにいたJames Kottakが叩いているのですが、なるほどのグルーヴにマイケルのリフがハマっています。曲の展開もドラマチックでグッときます。当時はこのドラマチックさを逆に薄っぺらく感じたんでしょうね、きっと。

最高に気に入ってしまったのが ⑸ We Believe In Love でして、こちらもらしさ満点のサビとコーラスに美しいギターが絡み、ロビンの歌唱も最高です。ここでもある意味、小っ恥ずかしいぐらいにドラマチックな展開をみせる終盤のリズムやコーラス、そこに加わるマイケルのギターに「聴きたいのはこういうの!」と拍手してしまいました。「あの時代を過ごしたおじさんなんだな」と痛感した瞬間です。


ただ、マイケルのギターが目当ての人達にとっては、きっと本作は物足りなかったでしょう。全編に渡って楽曲重視のプレイで、弾きまくりな感じはありません。

そうは言ってもマイケルのギターは十分にキレキレで、ソロの構成はいつも通り感動的であり、バラードを含めたどの収録曲にも“らしいフック”があります。さすがは“神”です。

(偉そうですけど)良い曲が並ぶ本作の評価をあらためさせていただきました。2023年のいま、連日聴かせていただいております。


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