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今となってはパット・マステロット在籍の事実が引きになりそうな 『Go On…』 MR. MISTER

1980年代半ばに「Broken Wings」や「Kyrie」といった大ヒットを飛ばしていたMr. Misterは、これらの曲を含む『Welcome To The Real World』に続く3rdアルバムとして、1987年に『go on…』を発売します。

あの頃のMr. ミスターの売れっぷりはものすごくて、「Kyrie」なんかは今でもたまにテレビで使われているのを耳にしますし、いい時代だったなーとか思わされます。

これらのシングルヒットの後、次はどんな曲が聴けるかと待ち構えていた私にとって、本作はいささか地味で、もの足りないアルバムでした。

⑷ Something Real (Inside Me / Inside You)」や ⑻ Watching The World あたりは聴けましたが、それ以外を繰り返し聴くことは少なかったと思います。ただ、どういうわけか一番地味といってもいいくらいの ⑾ The Border だけは気に入って、この曲だけを長らく、それこそ車を運転するようになってからもドライブ中によく聴いていました。

その頃に所有していたのはレンタル落ちになっていたCDを購入したもので(不人気ぶりを示す事実ですね…)、これをiTunesに取り込んで聴くようになった頃には音質の違いが問題になりました。

変わらぬ愛情でプレイリストに入れていた「The Border」ですが、シャッフルで聴いているとこの曲で著しく音量が下がってしまうのです。この年代のアルバムには起こりがちなことですが、こうなるとどうしてもスキップするようになってしまい、結局はリストから外してしまいました。

そこから相当な月日が経った頃、まだ会社員で営業中にCD店をフラフラしていた私は「AOR CITY 1000」として発売されていた本作を見つけました。

「2ndじゃなく3rdが選ばれてるのは渋いな」と思って見てみると「リマスタリング: 2017年」と書かれているではありませんか⁉︎ 

バンド側の意図するリマスタリングになっているかどうかはわかりませんが、こちらとしては音量(音圧?)が上がってくれさえすれば不満はありませんし、その名の通り1000円ですので購入を決めました。

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音は現代の環境に耐える素晴らしいものになっており、「買った甲斐があった」と頭から聴いていると、「やだちょっと、どの曲も渋くて超カッコいいんだけど!こんなにうまいバンドだったんだ!」と今更ながらにMr. ミスターの凄さ、本作の良さを知ることになりました。

リマスタリングの効果も大きいと思いますが、よくもこんな高品質なアルバムを作れたものだと感心するまでになりました。中学生だった自分が理解できなかったのは仕方がないとしても、その後もそのままの印象で聴き返さずにいると損をしますね。

当時も ⑴ Stand And Deliver は悪くないと思っていました(←偉そう)が、いま聴くとバンドはキレキレで、派手ではなく地味でもない絶妙な曲に仕上がっていることが理解できます。⑹ Bare My Soul や ⑺ Control の80年代的修飾はありながらも渋いカッコよさ、⑼ Power Over Me の美しさに心を打たれました。

そして長らくお気に入りだった ⑾ The Border には「何と抑制の効いた、しかしながら確かな演奏に支えられた深みのある曲なのか」と改めて感動し、再び★★★★★を付けました。

こうなってくると改めてバンドやプロデューサーに興味が出てくるもので、見てみるとプロデューサーはピーター・ガブリエルの永遠の名盤『So』でエンジニアを務めているキヴィン・キレンとのことで納得。

そして何といっても驚いたのは、うまいと思ったドラムがパット・マステロットだったことです!「キング・クリムゾンの⁉︎ 結びつかない!!!」と思ってWikiを見ても確かにそう書いてあり、知らなかったことを恥じました。今となっては「Kyrie」からよりもパットから本作に辿り着く人が多いくらいかもしれません。

「AOR CITY」というシリーズで取り上げられているくらいですので、AOR的な部分、80年代的な香りはありますが、そんな中でも音数を絞った渋い曲が並んでいる本作は、キング・クリムゾンのファンにも気分転換に聴いてみてほしい1枚です。

本作で味をしめた私は同シリーズからBruce Hornsby & The Rangeの1stと2ndも購入し、リマスタリング効果に酔いしれました。

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