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色々と大変な人だけどその音楽は素晴らしい 『I’m Not Bossy, I’m The Boss』 SINÉAD O'CONNOR

シニード・オコナーといえば今でも「Nothing Compares 2 U」で記憶されていると思いますし、私もこの曲で彼女を知り、曲と声と彼女自身の美しさに感動したのち、プリンスが作曲していることを知って驚愕した1人です。

彼女はその坊主頭に象徴されるように大変な人生を送っていて、厳しい家庭環境だったり、ローマ教皇の写真を破ったり、司祭になったり、引退を発表したりなど、聞こえてくるニュースがどれもなかなかにしんどくて、『Faith and Courage』(2000年)以降は聴くのをやめてしまいました。

そんな中、イスラム教に改宗して改名もしたという記事を見る機会があり、久しぶりに思い出して「最近は音楽活動してるのかな?」と探ってみたところで『I’m Not Bossy, I’m The Boss』(2014年)へ辿り着きました。

本作はまず、そのイカしたタイトルと、予想外のスター然としたシニード自身のジャケット写真で私の心を捉えました。元々彼女の音楽は好きでしたので、⑴ How About I Be Me を聴いた瞬間に「変わらずいい声してるし、いい音楽だな」と持っていかれました。

私が好きなのは ⑼ 8 Good Reason から最後の ⑿ Streetcars までの4曲です。これまでの人生を反映しているであろう歌詞を、シニードらしい喜怒哀楽全開で聴かせてくれます。多くの曲を共作していますが全てにシニードの名前があり、改めて才能ある人なんだなと思いました。

そして、ボーナストラックの ⒁ Make A Fool Of Me All Night が私のお気に入りです。これまでにはあまりなかった曲調がハマりましたし、色々と大変な人生を送っている彼女ですが、望んでいるのはこんなにも普通のことなのかと目頭が熱くなります。

2022年1月には、最後になるとかならないとかでまたひと騒動あったニューアルバム『No Veteran Dies Alone』が出る予定だったのですが、ここでまた大変なことに息子さんが17歳でお亡くなりになったというニュースが流れてきました。

本当に気の毒ですし、彼女にはどれだけの試練が降りかかるのかと嘆きたくなりますが、プロデュースしたデヴィッド・ホルムスが「非の打ちどころがない、素晴らしい」と表現したヴォーカルを聴けるのは、いつになるかわからなくなったようです。楽しみにしていただけに、重ねて残念です。

シニードを聴くならまずは『I Do Not Want What I Haven't Got』だと思いますが、その他のアルバムも素晴らしいですし、これまでコラボレーションしてきたミュージシャンが超一流ばかりなのは彼女の実力を証明するものだと思います。これまでの作品を聴き返しながら彼女が立ち直ることを願いつつ、新作を待ちたいと思います。

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