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ビジネス視点を持つエンジニアが、レオナルド・ダ・ヴィンチと星野源を目指す理由【宮永・後編】

前のめりになるだけでなく、後ろも振り返る

ハウスマートに入ったのは、BtoCのサービス「カウル」をリリースするタイミングでした。

以前から手伝っていたのでやることはそれほど変わらず、プロジェクトチームをマネジメントしつつ、自分でコーディングするところまですべて関わっていきました。
楽天にいたエンジニア3人が一緒にジョインしてくれたので、スムーズに移行できたと思います。

ファーストローンチの段階では、いわゆるスプリントの運用に気をつけました。スクラムベースのアジャイル開発ではスプリントを繰り返してプロジェクトを進めていくわけですが、全体的な構造が乱れやすくなるという欠点もあります。そこで定期的なリファクタリングを行い、きちんと技術的なキャッチアップをしていくことを重視しました。

スプリントだとどうしても「このときは急いでやったからコーディングが甘かったんだけど、もっとちゃんとしたいんだよね」というところが出てきてしまうので、「自由研究デー」と題し自主的に整える機会をしっかり作ったんです。

次の開発の作業効率に関わるところに、ちゃんと手を入れていく方針でやっていました。

ユーザーは得な方を選ぶとは限らない

サービスをリリースできたはいいのですが、問題は山積みでした。

実は当初、「カウル」はサブスクリプション型のサービスモデルを採用していました。不動産業界では、物件が成約したときにその価格から数%をいただく手数料モデルが主流です。だからマンションの購入を検討している期間に月額で課金してもらうという当初のモデルは、業界としてはほとんど例のないものでした。

その独自性のおかげでさまざまなメディアに取り上げてもらい、いろいろなユーザーに知ってもらうことはできたのですが、やがて根本的な問題に直面してしまいます。みんな試してはくれるのですが、課金する前に離脱してしまうんです。

これではビジネスとしてまったく成立しないので、どうしたものかと悩みました。

そこで代表の針山を中心に改めてディスカッションをして、サブスクリプション型に加えて、手数料型の形式を追加したんです。すると、圧倒的に手数料型の方がユーザーに支持されたんです。単純に価格という意味では、サブスクリプションの方が数百万円レベルでユーザーが得をする場合もあったのですが、それでも手数料型を選ぶユーザーがほとんどでした。

ヒアリングを繰り返していくと、やはりよくわからないサービスにいきなり課金するというのは心理的に難しいということがわかりました。しっかりと信頼関係を築いていかないと、ユーザーは動いてくれないんです。

楽天は大きな組織だったので、上の人に「こういうものを作って」と言われて、それをそのまま作っていく、という開発が当時は基本でした。でも、いったい誰が使うのか、なんのために作っているのかがわからないことがあった。ユーザーをきちんと見て、どこに価値があるのかを考えていくことが、よりよい開発に繋がっていくんです。

カウルでは、こうしたサービスやビジネスの根本的なところから、チームを作っての開発、そしてグロースハックまでを一貫して手がけていきました。

今でこそメンバーも増えましたが、カウルは最初、営業が2名、エンジニアが3名の5名体制でスタートしたんです。だから全体を見渡しながらすべてのプロセスに関わっていくというスタイルに自然となっていきました。

新サービスの問題点は「事業として無理がある」

その後、カウルのフルリニューアルを経て、新しい事業の話が持ち上がります。

カウルはサブスクリプションモデルから手数料モデルへと切り替えたことによって、フロー型のビジネスモデルになりました。大きく利益を伸ばしていくことはできたのですが、将来的な安定性が課題だということで、ストック型のビジネスプロダクトの開発にも乗り出すことになったんです。

こちらは主にカウルライブラリーという中古マンションのデータベースを活用したいわゆるSaaS事業で、不動産屋さんに向けてBtoBで展開することが決まっていきました。エンドユーザーにアプリをインストールしてもらって、物件を決めたら不動産屋さんに持っていく、というサービスです。

このサービスは2018年5月にローンチし、トライアルで10社に使っていただきました。ところが3ヶ月経っても、ぜんぜん期待している数値目標が達成できなかったんですね。
アプリを知ってもらうためのパンフレットを作り、インストールが楽になるQRコードを掲載し……といった地道な施策を続けていったのですが、結局数値は改善しないままでした。

そこで数値を引き直して会員登録のコンバージョンレンジを広げていくとどうなるのかを試算していった結果、一般的な不動産会社ではありえないような集客数でないと成り立たないということがわかってしまったんですね。

もともと事業として無理がある構造だったので、根本的に見直さなくてはならないということに気づきました。

楽をできるよりも、信頼を作れるサービス

エンドユーザーが何を求めているのか、ちゃんと理解できていない。


そんな意識から、現場に足を運んでヒアリングをすることにしたんです。不動産仲介の営業の方が、日々どういう仕事をしていて、どんな風にサービスを使っているのかということを徹底的に深掘りしていきました。

リサーチを進めていくと、エンドユーザーにとっても不動産屋さんの営業の方にとっても、使いたいサービスになっていないということがわかってきました。

エンドユーザーはアプリを介して物件を探すのですが、一番多いのはそもそもインストールしないという意見だったんですね。突然知らないアプリを出されても、なかなかインストールするところまで行かない。不動産屋の営業はたくさんの人を相手にするわけではなく、普通は週数人程度です。なのにその9割がインストールまで行っていなかった。これではサービス以前の問題です。

さらに営業の方に話を聞いていくと、思ってもみなかったことがわかってきました。今回のサービスはアプリケーションが営業に替わってユーザーへ物件を提案するシステムです。営業の方の工数が削減できるので喜ばれるプロダクトになったはずと思っていましたが、アプリケーションが提案することで営業の方とエンドユーザーとの接点が失われてしまうという側面があったのです。

そこであくまでお客さんと営業の方を繋ぐコミュニケーションツールと捉えて、ゼロから作り直すという決断になりました。大事なのは、営業が提案しているように見せること


営業がお客さんの情報を入力し、データベースを使って得られた結果を自分の提案として届けるような形にするべく、お客さんへの連絡を、アプリケーション内のメッセージではなく、メールで届けることにしたんです。
課金形態も、もともとは提案ごとに課金する形態でしたが、単純なシステムの利用料に落ち着きました。

この生まれ変わったBtoBサービスも2019年の3月にリリースしたばかりなので、これからまだまだ改善点は出てくるでしょう。
それでも、本当に欲しいと思われるものを作れたとは自負しています。

起業を前提にキャリアを積むという選択

リリースまでのプロダクトの開発はエンジニアが担当し、リリースした後のグロースハックはマーケターが担当するのが一般的ですが、私はその両方を担当してきました。

メンバーが少ないということもありましたが、エンジニアやマーケターといった職能にとらわれず、ビジネス全体を見ていきたいとずっと思ってきたんです。

教育について研究していた学部生時代からモチベーションに興味を持っていました。
モチベーションは、自分がやっていることになんの意味があるのかがわからないと生まれにくいものです。

エンジニアとしてプログラミングを学んだのも、プロジェクトチームをマネジメントするのも、グロースハックでサービスを改善していくのも、ユーザーのもとに実際に足を運ぶのも、全体にかかわることではじめてどこに向かうかが見えてくるからなのだと思います。

今後の目標として、実は35歳までに起業したいと思っているんです。
教育の業界をよりよくすることはずっとテーマとして持っていたので、「自分で将来を切り拓けるようになるサービス」を創造できるような事業が作りたいと思っています。

こういったサービスを創造するには、多くの人との出会い・様々な仕事経験などが大事だと思うんです。
私が実際にそうだったのですが、大人になって社会に出ると、たくさんの人に出会えて、さまざまな仕事に触れて、いろいろな経験ができますよね。
でも中学生や高校生のときには、ひょっとしたら大学で学んでいるときでさえ、そういった「大人」の姿を知ることはかんたんではありません。身近にいる親や先輩の人生を参考にすることもできますが、サンプル数がとても限られてしまうので、かえって縛られてしまうこともある。

触れることで将来やりたいことが思い描けて、そこに向かって進んでいく道筋が見えるような、そんなサービスを作りたいと思っています。

エンジニアの枠を飛び越えて、「万能人」になるために

私には憧れの人物がふたりいます。

まずひとりめは、イタリアのルネサンスを代表する芸術家であるレオナルド・ダ・ヴィンチ。その才能の多彩さから「万能人」と呼ばれ、当時の理想の人間像のひとつとされました。

もうひとりは、ひょっとしたら意外に思われるかもしれませんが、日本のアーティストである星野源です。ミュージシャンとして歌をはじめ楽器の演奏から作詞作曲までをこなし、さらには俳優や文筆家としても活躍しています。


ふたりに共通しているのは、多様な才能を持ち、さまざまな分野にまたがる幅広い視野を持っていることです。

実は私も音楽活動に興味を持っていて、あるアプリのオーディションを受け、ヴォーカルとして採用されました。これからは歌だけでなくギターや作詞作曲などもできるようにしていきたいと思っています。音楽のプロになりたいわけではないのですが、仲間を集めて大きな会場(理想は武道館!)を借りて、みんなでライブを楽しめるようになったらいいですね。

エンジニアが音楽活動をするというのは、ちょっと不思議に聞こえるかもしれません。しかし歌を含めた演奏技術を磨いたり、音源というプロダクトを作ったり、数値目標を立てて聞いてくれる人を増やしていくことは、プログラミングやグロースハックとも通じるところがあります。

モチベーションという意味では、音楽の持っている力はすさまじいものです。


これからもあらゆる分野を学びながら、「万能人」を目指していきます。



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Housmart(ハウスマート)

2014年9月に株式会社Housmart設立。「住を自由に」 をミッションに掲げ、テクノロジーとデザイン、不動産の専門知識を融合させ、「住」の 概念をもっと自由なものに進化させることを目指しています。
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