リーキーガット症候群解消法 第14回(最終回) 筋肉・神経・関節の痛み

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“腸漏れ”が病気をつくる

リーキーガット症候群解消法

第14回(最終回) 筋肉・神経・関節の痛み
文●体質研究所主宰 松原秀樹
構成●近藤友暁

この連載も、いよいよ最終回を迎えました。最後は、腰痛をはじめとする筋肉や関節の痛み、神経痛などの身体の痛みと、リーキーガットの関係について探っていきます。

その前に、簡単に復習をしておきましょう。

小麦に含まれるタンパク質である「グルテン」に代表される「レクチン」は、植物が動物に食べられるのを防ぐために作る「毒」です。レクチンを摂取すると、腸から「ゾヌリン」が分泌されて、腸の栄養吸収細胞の密着結合がゆるんで、大きな分子でも素通りさせてしまう「腸漏れ」の状態、つまりリーキーガットになってしまいます。

リーキーガットになると、本来は腸壁を通らないはずの、アミノ酸に分解される前の「ペプチド」や、毒素である「レクチン」が吸収され、血液に流れ込んで全身に運ばれてしまいます。

ペプチドやレクチンは、身体にとって異分子なので、免疫系が働いて排除しようとします。このとき腸に軽度の炎症が起き、身体に様々な悪影響を及ぼします。

まずリーキーガットによって腸に軽度の炎症が起きると、腸の免疫系は「炎症性サイトカイン(TNFαなど)」という、免疫細胞たちが情報交換するための物質を作り出します。炎症性サイトカインが血液中に増えるほど、全身のいたるところで炎症が起きやすくなります。

また、炎症性サイトカインの増加は、インスリン抵抗性も高めます。インスリン抵抗性が高まるということは、インスリンが効きにくくなるということです。インスリンが効きにくくなると高血糖になり、血糖値を下げるために膵臓はより多くのインスリンを分泌します。すると脂肪がどんどん脂肪細胞に吸収されて肥満になり、いずれ糖尿病につながっていきます。

過剰な免疫反応と糖化

まず、変形性膝関節症や脊柱管狭窄症などの「変形性関節症」の原因を探っていきます。
変形性膝関節症は、「膝関節の軟骨や半月板がすり減ってなくなる」と説明されることがよくありますが、実はすり減るわけではないのです。

軟骨が消失するメカニズムとリーキーガットとの関連を説明しましょう。
リーキーガットになった腸から血中に侵入してしまったレクチンは、身体の様々な細胞と結合してしまいます。すると、結合してしまった細胞を、免疫細胞は異物と認識し、攻撃を始めてしまいます。

レクチンが関節の軟骨に結合すると、これを免疫細胞が攻撃し始めます。この際、不運にも軟骨に対する抗体(自己抗体)ができてしまうと、全身のあらゆる関節の軟骨が免疫の攻撃ターゲットになってしまいます。その結果、過剰な免疫反応が起き、関節が破壊されていってしまうのです。

また、リーキーガットによってインスリン抵抗性が高まることで、高血糖になることも、関節を変形させる原因になります。

高血糖になると、メイラード反応(タンパク糖化反応)によって、老化物質のAGEsがたくさん生成されます。AGEsが増えると、細胞の糖化が促進します。骨や軟骨に弾力性を与えているコラーゲンが糖化すると、軟骨は弾力性を失って硬化します。

背骨には体重圧がかかっているので、背骨の椎間板が硬化すると椎間板が破裂して、「椎間板ヘルニア」になります。また、背骨の椎骨が硬化すると、椎骨の上面と下面が横に飛び出して脊柱管を圧迫して、「脊柱管狭窄症」になってしまいます。

膝関節の軟骨や半月板が糖化して硬化すると、少しずつはがれていきます。そのはがれた破片が関節を包んでいる滑膜に当たると、炎症(滑膜炎)が起きて、激痛が起きます。

滑膜炎が起きると、免疫細胞から炎症性サイトカイン(TNFαなど)が放出され、軟骨細胞がどんどん死滅していきます。その結果、軟骨がなくなって変形性膝関節症になってしまうのです。
このように、リーキーガットによって生じた過剰な免疫反応と糖化が、変形性関節症を引き起こしていくのです。

関節の痛みの軽減と改善には

リウマチ性関節炎の患部には、炎症性サイトカインが多く集まっていることが分かっています。炎症性サイトカインには、いくつもの種類がありますが、その中の1つ「TNFα」を抑えることで、すべての炎症サイトカインの働きを抑えられるという研究があります。ⅰ いわば、「TNFα」は炎症性サイトカインの親玉と言えます。ここに注目して、リウマチの治療に「レミケード」や「エンブレム」といった薬(抗TNFα抗体)が使われています。

しかし、薬での治療には問題もあります。

1つ目は、免疫力が低下することです。TNFαを抑えることで免疫システムの一部が遮断され、また通常「メトトレキサート」というT細胞の働きを抑える免疫抑制剤も併用されます。そのため免疫力が低下し、感染症や発ガンのリスクが高くなります。

2つ目は、誰にでも効くわけではないことです。これらの薬の有効率はだいたい60%で、半数弱の人たちには効果がないのです。

3つ目は、あくまで対症療法であって、完治させることはできないことです。かなり高価な薬を、半永久的に使い続けなくてはならないのです。
ですから、これらの薬に頼るだけでは不十分といえます。そこで、私に相談しにいらっしゃる方には、リーキーガットの原因物質である「レクチン」を控えることをお勧めしています。それだけでも関節炎をかなり軽減でき、なかには完治してしまった人もいます。

ⅰ:Brennan, F.M., Chantry, D., Jackson, A., Maini, R., & Feldmann, M., “Inhibitory effect of TNF alphaantibodies on synovial cell interleukin-1 production in rheumatoid arthritis”, Lancet 2, 244-7(1989).

リーキーガットでマグネシウムが不足する

リーキーガットによってインスリンの分泌量が増えると、マグネシウムが不足します。インスリンをつくるためには、マグネシウムが必要だからです。

では、体内にマグネシウムが不足するとどんな不都合が起きるのか、マグネシウムと密接な関係にあるカルシウムの働きとともに説明していきましょう。

身体に必要なミネラルといえば、カルシウムを思い浮かべる人が多くいるはずです。たしかに、カルシウムは身体の中でもっとも多いミネラルで、骨や歯にたくさん蓄えられています。カルシウムが不足すれば、骨粗鬆症になったり、歯がもろくなったりしてしまいます。
一方、マグネシウムはすべての細胞の中に満ちていて、骨や歯以外の細胞にカルシウムが流入するのを防いでいます。
実は、骨と歯以外の細胞にとって、過度のカルシウムは有害です。
例えば、カルシウムが過度にたまることで、次のような不調につながります。

腎臓にたまると、尿路結石ができる。
血管内にたまると、動脈硬化が進んだり、静脈瘤ができたりする。
血管を取り巻く平滑筋細胞にカルシウムが流入すると、血管が収縮して血圧が高くなる。
骨格筋の細胞にカルシウムが流入すると、筋肉がけいれんしたり、強い痛みを起きたりする。
神経細胞にカルシウムが流入すると、神経が興奮してイライラしたり、眠れなくなったり、強い痛みを発したりする。
このようなカルシウムの有害性から細胞を守るのがマグネシウムで、両者は拮抗していてこそ都合よく働くのです。

筋肉の痛みやけいれんは、マグネシウム不足を疑う

上に述べたように、血液中にカルシウムが増えてマグネシウムが不足すると、様々な不調の原因になります。

「筋肉が腫れたり、痛んだりする」のも「筋肉が攣りやすい、けいれんをおこしやすい」というのも、マグネシウムが不足しているサインです。

筋肉のコリや痛み、けいれんなどに対してマグネシウムを補ってあげると、細胞内のカルシウムが減って、筋肉がゆるみます。あとは血流が正常であれば、自ずと筋肉の不調が解消されていくでしょう。

施術などで血流を促すのであれば、筋肉を揺らす、軽いマッサージをするなどといった穏やかな刺激で十分です。反対に、凝っている筋肉を強く伸ばしたり、強く押したり、強く揉んだりすることは、筋肉の毛細血管を傷つけて「血栓」を作ってしまうので、お勧めできません。万一、血栓が脳の血管に詰まれば脳梗塞を、心臓の冠動脈に詰まれば心筋梗塞を引き起こし、生命が危ない状態になるからです。

筋肉が硬くなるしくみを理解して施術をすれば、いわゆる「揉み返し」を防げるだけでなく、施術者も無駄な筋力を消費せずに効果的なマッサージができるでしょう。

なお、マグネシウムは、海藻や魚貝類に豊富に含まれている他、ココアにも多く含まれています。これらを適度に摂取していれば、ある程度はマグネシウムを補うことができます。

しかし、食品からのマグネシウムの吸収率は低く、かなり少量しか吸収されません。サプリメントのマグネシウム剤となると、吸収率はわずか4%ほどです。(マグネシウム剤は、腸内で水分を吸収して便を出やすくする下剤としてよく利用されています)

ところが、マグネシウムは皮膚からは難なく吸収されます。

ヨーロッパでは古来より、筋肉痛や関節炎、皮膚病に対して、マグネシウムが豊富な温泉に浸かって、浴後にオイルマッサージを受けることが伝統的に行われています。マッサージに用いられるオイルには、ビタミンEをはじめとする抗酸化成分がたっぷりと含まれています。マグネシウムと抗酸化成分を皮膚から補給することで、筋肉痛や関節痛を治せるのです。

ヨーロッパの岩盤はマグネシウムが豊富なため、マグネシウムが豊富な水や鉱泉が湧出する泉がたくさんあります。なかでも有名なのがイスラエルの死海で、その周囲には有害な紫外線が届かない特殊な地形と温暖な気候であるため多くの温泉施設があり、世界中から多くの人が訪れています。その大半は、関節炎と皮膚病の患者が占めています。

私はマグネシウム泉の代わりに誰にでも使えるようにと、マグネシウム・ローションを開発し、施術に使っています。硬くなった筋肉や、痛みのある関節にマグネシウム・ローションをすり込むと、すみやかに緊張がゆるんで痛みが軽減します。

「痛み止め」はリーキーガットの原因になる

筋肉や関節の痛みには、ロキソニンなどの痛み止めが薬として使われます。たしかに「痛みをとる」という点に関しては、マグネシウムやオイルよりも、痛み止めのほうが効果は高いです。

免疫細胞の働きや、痛みを強く感じるしくみを阻害するためです。

しかし、痛み止めには胃腸の粘膜を傷めたり、免疫力や腎機能を低下させたりする副作用もあります。そのため、医師が処方する場合は必ず胃薬が一緒に出されますが、自分で買ってきて使う場合、胃薬なしで痛み止めを使っていることが多いはずです。

つまり、痛み止めの薬を長期にわたって日常的に使うことで、リーキーガットになってしまうのです。したがって、痛み止めは、どうしても必要なときに限って使うことが大事です。

ちなみに痛み止めの副作用は、飲み薬だけでなく、湿布でも軟膏でも同じです。皮膚から有効成分が血液に入って、全身に回るからです。

マグネシウムやマッサージオイルの作用は穏やかですが、胃腸の粘膜を傷めたり免疫力や腎機能を低下させたりする恐れはありませんので、毎日使い続けても安全です。

神経の痛みとリーキーガット

先ほど、マグネシウムが不足すると神経細胞にカルシウムが過度に流入し、神経が興奮してイライラしたり、眠れなくなったり、強い痛みを発したりする、と説明しました。マグネシウム不足以外に、神経の痛みの原因としてよくあげられるのが、「血流不全」です。

長時間、正座をすると脚がしびれるように、血流の悪化によって神経が酸欠に陥ると、痛みやしびれが起きます。

正座なら立ち上がって血流が元に戻れば、しばらくすると自然に治ります。いつまでも治らない神経痛は、血流を常に悪くしている要因がどこかにあるはずです。その要因は、たいていは「血管の硬化」「血管の収縮や閉塞」「筋力の低下」のいずれかです。

この中で、とくにリーキーガットと関連が強いのは、「血管の硬化」です。

リーキーガットによって血液中の炎症性サイトカインが増えると、インスリン抵抗性が高まり高血糖になります。すると血糖がメイラード反応(タンパク糖化反応)によって、老化物質のAGEs(終末糖化産物)が生成されます。AGEsが血管の平滑筋を糖化させていくと、血管の弾力性が失われ、硬くなってしまいます。すると血管が拡張できなくなり、血流量が少なくなります。その結果、神経細胞に十分な酸素や栄養が届かなくなり、痛みやしびれが継続的に起きるようになります。

血管の弾力性を回復させて血流を改善すれば、神経痛を治していける可能性はあるのです。

農業がもたらした恩恵と代償

この連載の最後に、最近世界的に話題になった著作の中から、まったく新しい視座を読者の皆さんと共有して、締めくくりとしたいと思います。

リーキーガットは、様々な病気の根本にあります。そして、リーキーガットになる原因は、未精製穀物、豆類、サラダ油、野菜、果物、そして生薬にいたるまで、すべて「植物」です。はたして植物は人類にとって味方なのでしょうか、それとも敵なのでしょうか。

イスラエル人歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏によると、およそ12000年前に始まった農耕は「史上最大の詐欺」で、その犯人は、小麦、稲、ジャガイモなどの、一握りの植物種だったといいます。

ハラリ氏は著書『サピエンス全史』上巻の第5章「農耕がもたらした繁栄と悲劇」のなかで、「私たちがそれらを栽培化したのではなく、逆に私たちがそれらに家畜化されたのだ」と述べています。

例えば小麦については、

「1万年前、小麦はただの野生の草にすぎず、中東の狭い範囲に生える、多くの植物の一つだった。ところがほんの数千年のうちに、突然小麦は世界中で生育されるまでになった」

と記されています。
それは人類が、朝から晩まで小麦に多大な時間と労力をかけてきた結果であり、それによって人類は爆発的に人口を増やすことができました。しかし、その代償として、首や脊椎、膝や土踏まずなどに大きな負荷をかけることになり、椎間板ヘルニアや関節炎などといった筋肉や関節の疾患に悩まされることになりました。

そうした人類の苦しみを肥やしに、小麦は地球上で史上まれに見るほどの大繁栄しているのです。

さらに植物は、グルテンや果糖といった「おいしさ」を提供することで、「私たちの歯や歯肉や胃腸を弱らせて、免疫システムを暴走させて生命力を低下させる」という破壊工作をひっそりと行ってきたとしたら……私たちは何千年もの間、植物に完全に騙されてきたのかもしれません。

この日本でも、縄文時代にはかなりの肉が食べられていて、縄文遺跡の貝塚の調査によると、魚は71種、獣類は70種、貝類は350種以上の化石が見つかっています。

ところが、稲作によって人口が爆発的に増えたため、みんなが肉を食べると足りなくなってしまいました。そこで時の権力者たちは肉を独占するために、「肉は卑しくて、下賎なこと」という思想を仏教の力を借りて広めました。675年に天武天皇が肉食禁止令を出してから明治時代の1872年まで、肉食を禁じられた庶民たちは、タンパク質を補うために大豆を食べるしかありませんでした。決して「日本人の体質に合っているから大豆を食べてきた」わけではないのです。

一方、支配階級の間では趣味として狩りが行われ、肉が食べられていました。平均寿命が42歳程度だった江戸時代でも、裕福な武士階級の人たちは60歳以上生きることが珍しくなかったのです。

人類は植物たちの生存戦略に乗せられ、ときに為政者の都合で、人類が祖先から受け継いできた食性を捨て、一生懸命に植物食を続けてきました。その結果、身体を痛め、病気になり、老化を早めてきたと言えます。

私たちは、リーキーガットの解消法を入り口にして、植物の毒が身体に害を及ぼすことを学びました。数ある生き物の中で誇るべき人類の特性は、真理を探求し、得られた叡智によって、己の行動を自らの意思で変えられるという点にあります。

今こそ、その特性を活かして、植物の戦略から巧みに脱し、「自分の健康のために何を食べるべきか」、自らの意思で決めていきたいものです。

〈第14回(最終回) 了〉

本連載「リーキーガット症候群解消法」が本になります!

『腸もれ リーキーガット解消法』(松原秀樹著) 7月2日発売予定
お読みいただいていた連載「リーキーガット症候群解消法」が来たる7月に本となって登場します。

書籍ではこれまでの連載内容に加筆修正と新たな図版を加えて、さらに読みやすくなる予定です。

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–Profile–

●松原秀樹(Hideki Matsubara)
アレルギー体質を改善するために、高校時代から様々な療法を試みる。48歳のとき自然免疫学応用食材で、40年間治らなかったアレルギー症状がわずか2ヶ月でほぼ消失した。さらに腸管免疫について調べていき、『リーキーガットが万病の根源』と知るに至る。

 合気術を活用した独自の施術を行なう傍ら、体質改善の食事指導、サプリメントやボディケア用品の開発も行なっている。

 体質研究所主宰。桜ヶ丘整体院院長。整体師。体質改善コンサルタント。米国ISNF認定サプリメントアドバイザー。合気道四段。

 著書に「お腹のぜい肉をなくす食事」(文芸社)「7つの秘訣で膝痛解消!」「肩甲骨をゆるめる!」(BABジャパン)「アレルギーは、皮膚と腸のバリアを強化すれば治る」(あかつき身体文学舎)など。「腰痛解消!神の手を持つ17人」(現代書林)に掲載。

Web site:体質改善コンサルタントの体質研究所

(当院のご案内の他、体質改善や健康情報についてクイズ形式で学べる「体質改善検定Ⓡ」も掲載しております。)

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