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【新連載】ココロとカラダを繋げる ボディコンシャストレーニング 01

この記事は無料です。

巷に溢れる様々なトレーニング理論。それぞれに新しい知見やグッズ、時には有名選手のお薦めもあり、どれも魅力的ですよね。だけど本当に大事なことはトレーニングを行うあなた自身。誰かが「正しい」と言われる方法や理論を「正しく」実践しようと思うあまり、自分のココロやカラダがどう感じているかを忘れていませんか?

この連載ではトレーナーでありロルファー™️である大久保圭祐さんが、ボディワーク・ロルフィングⓇの視点を取り入れた「カラダを意識したトレーニング法“ボディコンシャストレーニング”をご紹介します。意識を変えてカラダの声を聞くことで、いつものトレーニングが「あなた専用のトレーニング」に変わります。

ココロとカラダを繋げる

ボディコンシャストレーニング

第1回 「そのトレーニングの主体はどこにありますか?」

文●大久保圭祐

トレーニング+ボディワーク
=ボディコンシャストレーニング!

初めまして、パーソナルトレーナー、ロルファー™️の大久保圭祐です。

普段はクライアントに、トレーニングやエクササイズなどの運動の処方、ストレッチやさまざまな施術を提供して、身体に関する要望にお応えしています。

体を引き締めたり、体重を落としたり、肩こりや腰痛を軽減したり、アンチエイジングだったり、日常動作のパフォーマンス向上だったり、さまざまな要望です。

私が普段クライアントに提供しているトレーニングやケアは、取り立てて目新しさや斬新さを意識したものでなく、オーソドックスな技術や知識を用いています。それは、そのときの流行を追うことよりも、あくまでもクライアントの要望にお応えすることを最優先しているためです。

ですから運動の処方であれば、誰もが知っているスクワットやランジ、プッシュアップ(腕立て伏せ)やシットアップ(腹筋)など従来の“筋トレ”をベースにしています。

また、クライアントに提供している施術も、ストレッチやPNF(Proprioceptive Neuromuscular Facilitation=固有受容器神経筋促通法)、筋膜へのアプローチなど、古くからあり、今なお引き継がれて発展している極めて原理原則に近い技術や理論です。

今回の連載では、ボディワーク・ロルフィング®︎の力を借りることによって、上に紹介した従来のトレーニングやケアをより効率よく効果的に、そして、安全に取り組めることを伝えたいと思っています。

決して従来のトレーニング法を否定しているのではなく、新しい意味付けとして、私が子供の頃から取り組んできた“筋トレ”の発展に繋がればと思っています。特に時々聞く「”筋トレ”で鍛えた筋肉は使えない」なんて誤解は解消したいと思っています。

その一方で、

一生懸命に”筋トレ”に取り組んだのに、効果を感じない
パフォーマンスも上がらず、却って体に不調を感じている

という方には、ボディワークの智慧をとり入れることで、もっと効率良く、そして自分の体が好きになるお手伝いをしたいと思っています。

決してごく一部の人が効果を得られるトレーニング法ではなく、万人にとって有益で、手軽に取り組めることができるものをご紹介していくつもりです。

この連載ではこうしたことをトレーニングとボディワークの融合させた「ボディコンシャストレーニング」(Body Conscious Training)として紹介していきたいと思います。

今回の1回目では、私がパーソナルトレーナーとして活動する中で、なぜそうしたアイデアを持つようになったからお話していきたいと思います。


トレーニングの中で見失われる「自分」

そもそも私がパーソナルトレーナーに興味を持ったのは、運動そのものが好きというのもありますが、それ以上に運動や施術で生まれる「身体の変化」に興味があったからです。

特に大学の時にやっていたキックボクシングを通して、運動や食事制限(減量)をすることで身体が変わり、競技のパフォーマンスやコンディションにダイレクトに影響することを経験しました。その魅力と面白さに惹かれ、パーソナルトレーナーとして活動する道を選びました。

パーソナルトレーナーとは、運動生理学や機能解剖学を中心とした科学的に証明された情報を元に、クライアントの要望に沿って適切なトレーニングを提供し、トレーニングのサポートを行います。

十数年くらい前は、アスリートの競技パフォーマンスアップだったり、モデルや身体で表現する方の体つくりだったり、いわゆる「プロフェッショナル」な人たちが主なクライアントでした。しかし、多くのパーソナルトレーナーの努力やニーズの高まりもあり、現在は一般の方にも浸透し、それにともないクライアントからの健康維持や肩こりや腰痛などの不調の改善や日常動作のパフォーマンスアップなどの要望にも応えるようになりました。

そんなパーソナルトレーニングですが、トレーニングを提案する時にいくつか大切な概念があります。それが、

目的に合わせた運動を選択する「特異性の法則」
体に適した負荷をかける「過負荷の法則」


です。つまり目的と自分の体に合わせた特定の動作を負荷の強さ、取り組む時間、頻度、期間などを調節してトレーニングに取り組むことです。

例えば、短距離走と長距離走のトレーニングでは同じ走る種目のトレーニングでも、トレーニングに用いる動作、鍛える部位、負荷の課し方も異なります。

目的に合った特定の動作に負荷を掛け、それを繰り返すことで身体が順応し、効果が現れます。だからこそ、正しい方向性の下、継続することが求められます。

その一方で、僅かな方向性のズレが、がんばってトレーニングに取り組めば取り組むほど、大きな結果のズレとなって現れてきます。その結果、目的の達成を遅らせてしまったり、遠ざけてしまったりすることもあります。

さらには「効果が出ないから」といって、回数を増やしたり、取り組む時間を増やしたりすることで、余計にゴールから離れていき、ついにはムダな頑張りから体にさまざまな不調が現れ、モチベーションも落ちてきてしまいます。

そうならないように適切な方向性を示してくれるのがパーソナルトレーナーの役割のひとつです。

ところが、この「本則」に基づいた「正しい方向」というのが意外に難しく、私自身、パーソナルトレーナーとして現場で活動している中で、また、一人のトレーニー(トレーニングに取り組む者)として活動する中で、少しずつ違和感を感じていました。

それは、

科学的に証明された結果に自分を当てはめようとするあまり、取り組みや一つひとつの動作から運動をする本人の主体性が失われ、環境や身体の内側からの視線を欠如してしまう。

ということでした。

具体的には、ウェイトの重さや定められた回数をクリアーすること自体が目的になり、“その動作を行えば効果に結びつく”と過度にトレーニングの理論に頼ってしまいがちなのです。

その結果、トレーニングを行う自分=主体が“どう感じているのか”、今、自分の身体に起こっていることや気持ちを感じたり、考えることを忘れてしまっていることが多々あるのです。

こうした状態でトレーニングを続けると、次第にココロとカラダの解離が生まれ、身体感覚が低下して、パフォーマンスはもちろん、ココロとカラダを痛めてしまうことになります。いわゆる「スランプ」と呼ばれる状態の多くは、このココロとカラダの解離に原因があります。

自分という主体性が失われたままトレーニングを続けて、体が感じる力を向上させる機会が損なわれてしまうのは、とても勿体なく、また怪我や不調を生み出す原因にもなります。


「意識すること」でトレーニングが変わった!

こんなことを書いている私自身、以前は上半身に筋肉を付けたくて腕立て伏せに熱中した時期がありました。日に日に一度に出来る回数が増え、筋肉が付いてきたのを実感して嬉しかったのをよく覚えています。ところが、ある時から腕立て伏せをすると頭が割れそうな痛みが起きたり、ひどい顔の左右差が生まれてしまいました。

トレーニング中の呼吸の仕方、トレーニングフォーム、休息の取り方に気を付けてみても解決せず、結局、腕立て伏せを断念しました。

再び安心して腕立て伏せに取り組むようになったのは、ボディワークを学んだ後です。今では腕立て伏せをしても頭が痛くなったり、顔の左右差がひどくなってしまうことはありませんでした。

どうして問題なく再び腕立て伏せが出来るようになったのか? その違いは、トレーニング中に鍛える筋肉とは関係のない筋肉を僅かに緊張させてしまう自分のクセに気がついたからです。そこで私が行ったのは、そのクセを生まないように無理に動かそうとするのではなく、体の内側に些細な“意識”を向けたことです。

“何かするのではなく意識を向けるだけで体は自然に整う”

これはボディーワークでよく言われることですが、本当にそれだけで腕立て伏せをはじめ、それまで行ってきたトレーニングが変わりました。

それ以来、トレーニングに行き詰まった際には、ボディワークの基本に戻り、感じる力の大切さに気付かされました。

ここで誤解して欲しくないのは、私は筋力トレーニングを否定したり、科学的に証明された結果やエビデンスがある情報を否定したりしていません。それを指標にすることはとっても大切ですし、運動処方を行う時にとっても頼りになります。

私自身、新しく研究結果として出た情報は興味津々です。しかし、それに頼り過ぎてしまって主体性が失われてしまうことは、トレーニングの可能性を狭めてしまっているように感じるのです。

多くの場合、トレーニングはより高い負荷を求めて進みますが、負荷を上げて刺激を強くするだけでなく、同時に、負荷を受け止める“自分自身の身体感覚”を高めることが重要なのです。

同じ負荷でもその受け止め方、つまり自分の意識を変えることで、トレーニングで得られる刺激をしっかりと拾い上げることが出来れば、より安全で高い効果に繋げられます。

実際、トレーニングを続けていく中で、新しい刺激を求めて負荷を増やしたり、刺激を強くしたりすることは現実的に限界があります。また、身体への負担や不調に繋がるリスクが高まります。

だからこそ無理に負荷を上げることで刺激を強くしたり、新しい刺激を求めて流行のトレーニングに振り回されるのではなく“自分の身体の内側の感覚を向上させてトレーニングを行うことが重要”だと感じています。

それには、私がボディワーク・ロルフィングを通して得た「感じること」が大切です。

第2回では、感じる力を向上させるキーとなる“意識”をボディワーク的に探求していきたいと思います。

(第1回 了)

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–Profile–

●大久保圭祐(Keisuke Okubo)
パーソナルトレーナー、ロルファー™️。大学在学中にキックボクシング部の主将として活躍、プロライセンスも取得する。卒業後はいったん食品系専門商社に勤務するが身体への関心を捨てきれず、パーソナルトレーナーの道を選ぶ。過去の運動や減量経験などを活かしたボディメイクの指導者をするなかで、ボディワークの“Rolfing®”に興味を持ち、渡米してRolf Institute®を卒業する。現在は、各種メディアや店舗にてエクササイズの監修、セミナー講師、コラムの執筆など幅広く活躍中。
著者『筋膜ボディセラピー(三栄書房)』

Web site 大久保圭祐公式サイト


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