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ヒモトレ介護術 第十回 「効果の”ある””なし”より大事なこと」

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「ヒモ一本でカラダが変わる」と話題のヒモトレ。中でも関心が高まっているのが、介護分野でのヒモトレの可能性だ。

そこでこの連載では、主に在宅医療の現場でヒモトレを活用している浜島治療院院長の浜島貫先生に、実際の使い方や臨床的な意義を紹介してもらおう。

ヒモトレ介護術

第十回 「効果の”ある””なし”より大事なこと」
お話●浜島 貫
文・取材・構成●北村昌陽
監修●小関 勲

こんにちは。浜島貫です。

ヒモトレ創案者である小関勲トレーナーが、ヒモトレに関する最初の本(『ヒモトレ』日貿出版社)を出版されたのは、2014年の2月。それから4年ほどの間に、さまざまな分野でこのメソッドが活用され、いろいろな経験が蓄積されてきました。

そうした情報は、雑誌、書籍などでしばしば紹介されていますので、ご存知の方も多いでしょう。

これはもちろん、喜ばしいことです。ただ、そういった形で広く喧伝される話は、往々にして「結果」の部分に焦点が当たりやすい、ということは、受け取る際に意識しておいた方がいいと思います。

実際、私が語っているこの「コ2」の連載においても、取り上げる話はやはり、ヒモトレを導入した結果として「動かなかった手が動いた」「食べ物を飲み込めるようになった」などの著しい効果が現れたケースに偏りがちです。

私としても、著効が見られたケースが多くあったので、それらから紹介してきたわけです。とはいえ現実には、当然ながら、そこまで明確な変化が認められないケースもある。でも、そういう話が広く伝えられる機会は、なかなかありません。

そこで今回はあえて、“わかりやすい結果”があまり現れていないケースを紹介しましょう。これまでの回と違い、驚くような衝撃的な逸話は出てきません。でも、そんなケースだからこそ、“目先の効果”に惑わされず、ヒモトレが人に与える影響の本質が浮かんでくるのでは、とも思うのです。

まあ、そうはいいつつ、いまいち盛り上がらないストーリーに終わってしまう可能性もあるのですが(苦笑)。とにかく筆を進めていきますので、どうぞ寛大な気持ちで読み進めてください。

脳出血の後遺症で左半身に麻痺が。
ヒモトレをやってみたが……

今回ご紹介するのは、84歳の男性Kさん。体格が良く、姿勢がいつもビシッと決まっているジェントルマンです。もともと会社を経営されていたということで、身近に接していると、勤め人だった方とはちょっと違う、“一国一城の主”という雰囲気が漂っています。

Kさんは、2014年2月に脳出血を発症。幸い一命はとりとめましたが、左半身に麻痺が残りました。それ以降、基本的には車椅子の生活です。補助してもらえば、立ったり、少し歩いたりはできます。

3年ほど前、自宅の建て替えの際に車椅子でも生活しやすいバリアフリー仕様にしました。その家で現在は、奥様と二人暮らし。私はその建て替え中から、訪問診療に伺っています。

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