第4回「頼ることで見えた世界」

こんにちは。石塚晴子です。
第3回も読んで頂きありがとうございます。
反応の多さに驚きながらも、書いてよかったという気持ちで一杯です。
背中を押された、というようなコメントも頂きましたが、背中を押されたのは私の方です。
同じように感じ取ってくれる人がいたんだなということを、当時自分の決断に迷い、悩んでいた頃の自分に教えてあげたいです。

私は前回までの記事で、試合での失敗や怪我を通じて自分の考えを改めた、という話をしました。
ご存知の方もいるかも知れませんが、私はその後大学を1年で辞めるという選択をとり、現在就職をして競技をするという道を進んでいます。

これからお話しすることの中には、大学で続けるという選択を取らなかった理由にも必然的に触れていくことになります。
ですが、大学の批判がしたい訳では無い、ということを念頭に置いて読んで頂きたいと思います。
私は高校に入った事も、大学に入った事も、大学を辞めたことも後悔していません。
全てが自分に必要なことだったと思っているからです。

私のモットー?みたいなものは色々あるんですが、その中に今回のテーマである「自分で決めて周囲を頼る」というものがあります。
大学を辞めると決めてから今までの出来事の中で、それを強く感じました。

今回は「頼る」ことについて、私の体験から感じたことを元に、考えをつづってみました。
どうぞお付き合い下さい。

環境は自分で作る
前回の続きになりますが、努力の在り方に今までと違う形を見つけた私は、
ドイツ合宿から帰ってくる飛行機の中で、大学を辞めることを考えていました。
どんな結果になっても良いから自分で決めた方に進んでみたい、ワクワクしたあの気持ちに素直に従ってみたい…。

自分が思ってるよりも世界は広くて、選択肢は沢山ある。ここまでしか出来ないと思っていた範囲の外に、自分の可能性があるかもしれない。
そんな風に確信した私は、今までに無かった考えで頭の中を占領されていました。あの時は勢いしか無かったと思います。

推薦入学で授業料は免除、公欠だってとれるし、大学卒業が保証された中で競技ができる、というのは大学で続ける大きなメリットでした。
しかし試合に負けたり、怪我をして悩んだりする中で、集団の一人として動いているだけでは限界があることにも薄々気づいていました。
また、対校戦の得点が理由で多種目に出場することにも、身体的な限界を感じていたんです。
「やらせてもらっている陸上」のはずなのに、その陸上が「やりたい陸上」とずれ始めている…
そんなぼんやりとした違和感をずっと持っていました。

当時の私は今置かれている状況に文句ばかり言っていました。周りに変われ変われと言わんばかりに考えを押し付けていました。
だけどそれは間違っていた事に気づいたんです。
だったら自分で文句のつけようのない環境を作ればいいんだ、と思い直し、行動に移すことにしました。
今までお世話になってきた場所に居ながらにして、文句を言いながら続けるのは色んな人に失礼だ、とも思ったんです。
当時知りたいことや、やってみたい練習があって、教わってみたい指導者もいた私は、
まずは自分を個人で活動させてもらえる環境に身を置くことが必要だ、と考えました。

とりあえずやれるだけやってみよう、前例が無いことと上手くいかないことは同義ではない。
上手くいかなったらその時は、文句を言わずに結果を受け入れよう。

アクションとリアクション
そう思った私は、まず周りに自分の意見を伝えることから始めました。
謎に勢いはあったけど、恥ずかしながらアテは全く無かったんです。
色んな人に、私の話を聞いてくださいとメールを送って、反応があった人には電話をかけたり、直接会いに行って話をしました。

当然メールが返ってこないこともありました。
会って話をしても、
「言いたいことはわかるけど現実味がない」
「あなたは海外に住んだ方がいい」
「とりあえず大学は出ておかないと就職に困る」
と、色んな人に言われました。

だけど、まずは自分がアクションを起こさないと、リアクションは返ってこない。
待ってるだけじゃ、何も変えることは出来ない…そんな風に思って、色んな人と話をし続けました。

その中で、思いに共感してくれる人に出会うことが出来たんです。
そして、自分の意見を発信することで、次々と新しい縁が広がっていくのを感じました。
自分がやりたいことのために、力を貸してくれる人が沢山いることを知ったんです。

自律の意味
そして不思議なことに、その時自分が自律し始めているのを感じました。
それまで自律とは、自分一人で何でもできることだと思っていたんですが、
自律とは上手く人を頼る力だったことに気づいたんです。
「頼る」とはある意味自発的な行動と言えます。
独りよがりに何でも自分で解決しようとしないことも、とても大切だと思いました。

これは第2回「自分で決めること」にも繋がると思います。自分で目的を決めることの大切さです。
私は人の放つ「気」は存在すると思っていて、
したいことがある人には、その人に「力を貸してあげたい」と思う人が集まってくると思うし、
逆に何もしたいことが無い人には、その人を「自分の思うようにしたい」と思う人が集まってくると考えています。

自律と協力。依存と操作。
このことにはこの言葉が当てはまるのでは無いでしょうか。
依存と操作についてはまた別の機会にお話したいと思います。
自分はこれが好きだ。こういうことがしたいんだ。ということをハッキリ持っておくことは、ポジティブな気を放つことと自分を守ることに繋がります。

言葉を持つことと自信
それから、自分の意見がきちんと言えるというのは、社会に出てもとても役立つということを知りました。
面接の時はとても緊張しましたが、思っていたよりずっとスラスラと自分の話ができました。
どういう言い方をすれば印象が良いとか、そういう面接対策はしなかったです。
ネットから拾った文章じゃなくて、自分の中にある言葉を正直に伝えました。
私は今の陸上界をこんな風に考えています、私はこういう風に競技がしたいんです、その為にこんなことが必要なんです…
結果はもちろん気になりましたが、自分の話を真剣に聞いてもらえたことが嬉しかったのを覚えています。

そして結果的に、今の環境で競技ができることになりました。
前回の投稿で「自信」について触れましたが、私はこの事がとても自信になったんです。
私には大好きな陸上が思い切りできる環境がある…その事が、数字ではない形で私に自信を与えてくれました。
そして一度所属感も優越感も失った私にとって、安心して競技ができるということは、ほんとうに有難いことだったんです。

決断、自律、自信、感謝…
この4つが繋がった瞬間でした。

感謝を伝えたい
先日、山口県で陸上の日本選手権が行われました。
画面を見ながら、「この観客の中で、スターティングブロックを蹴れるというのは、素晴らしいことだったんだな」と改めて思ったんです。
まだ色んなことがわかっていなかった頃、ここに出るのが当たり前だと思っていた頃は、その価値も意味も理解出来ていませんでした。

また必ず、スタートラインに立ってあの景色が見たい。その様子をイメージするだけで、緊張と喜びが入り混じった不思議な気持ちになりました。
どんな気持ちになるのか、どんなレースができるのかと想像するだけで、喜びとやる気が湧いてきたんです。

そして勝って、インタビューで色んな人に
「ありがとうございます」って伝えたい。

アスリートのインタビューでよくある言葉ですが、この感謝の言葉にこんなに色んな意味があったというのも、最近やっとわかったことでした。
ぐるぐる回って色んなことを実感して、このよくある言葉に帰ってきた瞬間を感じました。

私は当たり前のよくある言葉が、自分の体験と結ばれて深まっていく瞬間がとても好きです。
これらのことを実感するためにも、良かったことも悪かったことも何一つ欠けてはいけなかった。
だから失敗することにも価値があるんです。
第1回から読んで下さっている方は、これらが繋がっていることを感じて頂けていると思います。

初心
1年半前、私はまず自分の意見を文章に起こして、監督に伝えにいきました。全部で8枚の手紙になりましたが、その一部を抜粋します。

…自分のやりたいことを見つけ、それを全力でやるという選択肢があることに気付きました。
やりたいことをしている自分を想像すると、とてもわくわくします。
それを、日本でも出来るのだと、そんな選択肢の広がりがあるのだということを示すことで、少しでも若い選手の助けになりたいと思いました。…

つい最近引越しをした時に出てきたので読み直したら、今とだいたい同じことを考えていて面白いなと思いました。

私は私の経験や知識を持って、誰かの背中を押すような存在になりたい、ということを一年以上前に考えていました。
まさかこうしてブログを書くことになるとは思いませんでしたが、色んな人から「前を向けた」「気持ちが楽になった」などとコメントを頂く度に、
自分の中で何かがひとつ結実したのを感じます。

最後に
・自分の意見を周りに伝えること
・自分で決めて周囲を頼ること
この2つが今回伝えたかったことです。

今結果が出なくてつらい人もたくさんいると思います。
だけど、こういう期間を味わうことができると、数字ではない何かが手に入るかもしれません。
色んなことを楽しんで、競技に打ち込んで、生きていきましょう。

今回も最後まで読んでくださり、
本当にありがとうございました。


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