ウイルス性肝炎について(主に急性肝炎)

急性肝炎で入院した患者が、B型急性肝炎かと思いきやC型急性肝炎だった(珍しい!)のでウイルス性肝炎についてまとめてみました。

参考文献:Infect Dis Clin North Am Review(PMID:31668190)、Lancet Review 2014(PMID:24954675)、Lancet Review 2008(PMID:18657711 )、Lancet Review 2012(PMID:22549046 )、B型肝炎治療ガイドライン(第3.4版)、C型肝炎治療ガイドライン第8版、up to date、肝炎情報センターHP

<ポイント>
・HBVは3割が急性肝炎を起こし、ほとんど慢性化しない(小児は慢性化しやすい)
・HCVはほとんど無症候だが、ほとんど慢性肝炎に移行する
・急性肝炎の治療は基本的に支持療法のみでほとんど自然治癒する

<日本での頻度>
2010-2020年でA型 約16% B型 約36% C型 約8% nonABC型 約41%

<HBVについて>
・体液(性交渉など)、血液(静注薬物の乱用、入れ墨、ピアスなど)を介して感染する
・出生時の母子感染(垂直感染)も起こす
・潜伏期間は45~180日
・70%が無症候、30%が急性肝炎を起こす
・劇症肝炎は0.1~0.5%の頻度で生じる
・95%以上で自然に治癒する
・慢性肝炎に移行するのは成人で<10%と少ない(小児では>90%)
・B型慢性肝炎では、HDVが共感染することがある(世界的には5~10%と推定とされている)

○B型急性肝炎の診断
・HBs-Ag陽性+HBc-IgM陽性
※HBs-Ag陽性のみでは無症候性キャリア、慢性肝炎でも陽性となる
※HBs-Ag陽性➔HBs-Ab陽性となる際にHBs-Agが陰性になることもある

画像3

<HCVについて>
・ほとんどが血液を介して感染(静注薬物の乱用、入れ墨、ピアスなど)
・HBVとは異なり、母子感染や性交渉での感染は少ない
・潜伏期間は14-180日
・感染時はほとんどが無症候で、10-15%のみ急性肝炎を起こす
・急性肝炎の有無に関わらず感染者のほとんどが慢性肝炎に移行する(80%程度)

画像1

○C型急性肝炎の診断
・HCV-Ab陰性+HCV RNA陽性
※HCV-Ab陽性+HCV RNA陽性の時には慢性肝炎と区別できない
・少し前(過去6ヶ月以内)にHCV-Ab陰性であったり、少し後(少なくとも6週移行)にHCV RNAが低下していれば急性肝炎と判断できる
・後は他の疾患の除外や状況判断(潜伏期間内にリスクのある行為がある場合など)

画像2

<HAVについて>
・汚染された食事、水(カキや発展途上国での食事など)、肛門性交に関連して感染
・発症2-3週間前〜発症1週間は高濃度に糞便中に排泄される
・潜伏期間は平均28日
・急性肝炎を発症し、ほとんどが2-3ヶ月で肝機能が正常化する
・劇症肝炎は1%で起きる(リスクは高齢≧50歳、慢性肝炎、特にC型慢性肝炎)
・慢性肝炎は起こさないが、3~20%で急性肝炎を再発することがある
・HAVの感染を契機に自己免疫性肝炎が誘発されることがある
・A型急性肝炎の診断はHAV-IgM陽性

<HEVについて>
・HEV genotype1,2は、発展途上国(アジア、アフリカ、ラテンアメリカ)の水系ルートで大量発生を起こす
・HEV genotype3,4,7は、動物との密接な接触、動物性食品の摂取(加熱が不十分な鹿肉、イノシシ肉、豚レバーなど)で感染
・潜伏期間は15-60日
・大多数は無症候か軽症の急性肝炎を起こし、ほとんどが自然に改善する
・0.5~4%で劇症肝炎を起こす
・免疫不全患者では、E型慢性肝炎に移行することがある
・E型急性肝炎の診断はHEV-IgA陽性

<治療と予防>
・基本的に支持療法(経口摂取ができなければ輸液など)
・凝固異常、重度の黄疸、脳症がある場合は入院すべき(up to dateより)
・ステロイド、グリチルリチン製剤は肝炎の遷延化、慢性化につながる可能性があるため投与しない
・例外的にB型急性肝炎では、急性肝炎重症例(PT<40%)および劇症肝炎(PT<40%かつ肝性脳症≧Ⅱ度)には核酸アナログ製剤(ラミブジン)が有用
・C型急性肝炎は、海外では急性期に直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の使用が推奨されているが日本では保険適応外
・C型急性肝炎の6ヶ月間の経過観察を行い、慢性肝炎に移行していればDAAで治療を行う
・劇症肝炎では肝移植の適応を検討し、集中治療を行う
・HAVとHBVに対して、日本では不活化ワクチンが使用可能(いずれも3回接種)

<コメント>
・あまりまとまりない感じになってしまいました
・慢性肝炎、劇症肝炎についてはまた機会があれば

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?