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誰がコンピュータを準備するか

教育現場におけるコンピュータの利用についてなかなか進んでいかないですが、「コンピュータ’を’勉強する」のと「コンピュータ’で’勉強する」のがごっちゃになっているような気がします。

前者の方はもちろん、パソコンを始めとするデジタル機器を使い、キーボードやマウスの操作から始めて、ブラウザや表計算ソフトなどの使い方を覚えて、最終的にはウェブページの制作、プログラミング、ロボットアームなどを動かすといったことが目的となるでしょう。

一方後者のほうは、これまで黒板にチョークで先生が書いていた内容を電子黒板に表示したり、生徒が紙のノートや教科書を書いたり読んだりしていたのをタブレット端末に置き換えて使いやすくする、というのが目的のはずです。

コンピュータそのものを学ぶのと、コンピュータを利用して学ぶのとの違いでもありますが、何のためにコンピュータを学校教育の現場に導入しないといけないのか、というところでもちろんどっちも必要なんですが、コンピュータを利用することが目的化されているような気がしてなりません。

いずれは、というか既に現在でもコンピュータを教育に生かす取り組みが必要なことは分かりますが、じゃあどうやって生かすか。

先日、文部科学省が新たな方針を発表しました。

「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」について
http://www.mext.go.jp/a_menu/other/1411332.htm

いらすとやの絵が多用されているところにまず引っかかりますが、それはともかく、ハード上の課題としてパソコンの準備が少ないことが取り上げられています。確かに、最近の子はみんなスマホあるいはタブレットで完結するような使い方をしていますので、わざわざキーボードが必要なパソコンを利用することはないですし、そもそもコンテンツを消費するだけならスマホの方がパソコンよりも使い勝手は良いでしょう。しかし、コンテンツを作ることを考えると、やはりスマホだけでは無理が出てきます。出来ないことはないけれど、ぱそこんの方が圧倒的に便利です。これは物理キーボードやマウスだけの問題ではなく、インターフェイスがアプリを中心にしているかファイルを中心にしているかの違いです。

スマホを利用するときにファイルそのものを意識することはありません。せいぜい写真・動画などが内部的にも1つずつ独立していそうな表示になっているくらいです。逆にパソコンであればエクスプローラーなどのファイル管理ソフトを見れば写真もテキストもアプリケーション自体もファイル単位で利用することが一目瞭然です。

何かコンテンツを作り出すときに、そのたび毎にファイルを一つ作成する、という流れはパソコンの方が分かりやすいでしょう。ファイルそのものを意識させないスマホではコンテンツ作成時にアプリの中で完結するように見えてしまいます。

パソコンを利用して勉強する分にはファイル管理を考える必要はありませんが、パソコンを勉強するのであればファイル管理の仕組みを学ぶことは必須でしょう。

話を文科省の方針に戻しますが、この上記の方策では基本的にパソコンを児童・生徒一人に一台用意するのを目標としています。

相当な費用が予想されますが、パソコンといっても何を用意するんでしょうね。まさかWindows端末ではないか、という恐れもあるのですが、どうなんでしょうか。

今のWindowsは10になってから、毎年2回の大型アップデートを無料で提供し、今後はずっとメジャーバージョンアップはしない(Windows10のまま)と明言しています。かつてのようにパソコン毎にアップグレードできるバージョンが限られるということ自体は起こりえないのですが、それでも機能が追加されていくと性能が追いつかなくなってくることは想像できます。ITの世界は機器の陳腐化が世間一般よりも非常に早く、10年前のパソコンではWindowsだろうとMacだろうと、あるいは10年前のスマホであってもそれぞれ最新の機能は使えません。マイクロソフトがWindows10のSモードを相当軽快に作ってくれれば長持ちするかも知れませんが、それでも画面や基板・キーボードの耐用年数がありますから、もって10年程度ではないでしょうか。

10年持たない機器を日本全国の生徒に一人一台分の用意をするというのはかなりリスキーだと思います。GoogleのChromebookという解決策もありますが、動作が軽快でバージョンアップに伴う陳腐化も可能性は低いですが、一方でパソコンらしい(Windowsらしい)ファイル管理とは仕組みが異なります。基本的にブラウザベースで動き、クラウド利用が前提のものですし、個人情報などでGoogleに対する忌避感を持っている人も多いでしょう。また、Googleは提供しているサービスを止めてしまうことも多いですから、買ったはいいがその後でGoogleがChromebook事業を続けなかったらお金の無駄になってしまいます。その点、マイクロソフトがWindows事業を止めてしまう可能性はゼロに等しいでしょうから、悩ましいところです。そうはいってもアメリカでは教育現場でのChromebookが結構導入されている層ですので、GoogleがChromebook事業を止めると大規模な訴訟に発展するでしょうからそうそう止めないとは思いますが。また、Windows同様、OS自体が軽くてもハードウェアの物理的な故障が起きてしまうとどうしようもありません。

いっそのこと生徒側はシンクライアントの端末扱いにして、サーバ側でOSを準備してBYOD(Bring Your Own Device=個人持ちの端末を持ち込むこと)として持ってきてもらったパソコン・タブレットからアクセスさせてしまえば、多額の予算は必要無いのではないでしょうか。

学校側で端末を全て準備するのはあまりにも費用がかかりすぎると思いますし、自分が普段使っている端末を使った方が使いやすいに決まっています。不公平感があるかも知れませんが、ノートや鉛筆だって自分で用意させているのですから、その延長線上と思えばそう無茶な案ではないと思うのですが。


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