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寄付と見返り

フランスのノートルダム大聖堂の火事に対して、フランスだけでなく世界中の人々、特に大富豪と呼ばれる人達からの寄付の声が挙がっています。

寄付による免税目当てという批判もありますが、フランスの貧しい人達への寄付は行わずにノートルダム大聖堂には多額の寄付をするのか、という批判もあります。

フランス国内の富豪がその財産をフランスの貧しい人達に寄付するのかノートルダム大聖堂に寄付するのか、というのはフランス内部問題でしょうし、フランス人以外の人間があれこれいうのは不適当だとは思いますが、フランス以外に住む、フランスに特にルーツもない大富豪が寄付を申し出ているのであれば、ノートルダム大聖堂以外にも嘆くべき悲劇は存在しているのではないか、という思いが、以下の記事を書いた人にあるかも知れません。

大火災に見舞われたブラジル国立博物館、ノートルダムに倣って寄付願う
https://www.afpbb.com/articles/-/3221762

ブラジルでは寄付金控除がないから、という指摘もありますが、本当に悲劇だと思っているのであれば、フランスのように多額の免税が可能な国であろうと、ブラジルのように免税がない国であろうと、寄付されてしかるべきだとは思います。

そうはいってもそもそも金持ちというのは隙あらば金儲けをして無駄な金を使わない習慣があるからこそ金持ちになったのですから、そうそう簡単に寄付なんてしないでしょう。だからこそ、多額の免税特権があるフランスでの寄付が多く申し出てられているはずです。

これは難しい問題です。免税を減らす、あるいは無くしてしまえば社会的不公平感は減るでしょうけれど、寄付そのものが減ります。もちろん寄付金控除を大きく認めれば寄付は増える代わりに税収が減り、スーパーリッチが財産を保持したまま名誉や名声を簡単に得てしまう社会になり、不公平感は広がるでしょう。今のフランスのようにデモが長期化し、社会そのものが不安定化します。

日本でもふるさと納税に代表されるような、寄付に対する控除はありますが限定的です。それが原因で寄付が少ないのだ、という批判をたまに目にしますが、じゃあ実際にそういう制度を作ったら作ったで、今のフランスのような批判が出てくるでしょう。

私が個人的に寄付金控除の仕組みを利用したのは、ガンバ大阪の新スタジアム建設のために設立された「スタジアム建設募金団体」にちょうど7年前に寄付した時でした。

『みんな』でつくる日本初のスタジアム
http://www2.suitacityfootballstadium.jp/c/stadium/build_stadium.html

今はパナソニックスタジアム吹田という名前で利用されているこのスタジアムの建設の経緯については、ウィキペディアとか読んでもらえれば分かると思いますが、ガンバサポーターとしては寄付金控除があろうとなかろうと寄付していたと思います。

寄付による控除よりも、5万円以上寄付した人の名前がスタジアム内のネームプレートに刻まれてずっと残っていることの方が遙かに大事です。というか比べものにならないです。寄付受付が始まった日の朝にFAXで申込をしたので、自分の名前がかなり前の方に表示されているのはかなり嬉しいものがあります。この気持ちはずっとこの後も、それこそ今のスタジアムが使用されなくなるまで続くものでしょうし、同じような気持ちを抱いているサポーターも多くいることと思います。

ノートルダム大聖堂にしろ、ブラジル国立博物館にしろ、寄付の本質とは何か、ということを世界各地の大富豪が謙虚に認識してくれていれば、フランスでの富豪批判もブラジルでの寄付の少なさへの嘆きも本来起こりえないものでしょう。何のために寄付をするのか、寄付してくれた見返りを求めるのは当然かも知れませんが、お金を寄付してその見返りに免税の形でお金をもらうのは寄付の本質から外れているのではないでしょうか。

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