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大規模噴火時にどうやって発電するか

 愛媛県伊方町にある、四国電力伊方原発の運転差し止めに関して、反原発を唱える人達は、九州における大規模火山噴火により火砕流や溶岩が海を渡って原発に届いて福島のような原発事故が起きる、という主張をされています。現代科学では火山噴火の可能性や被害規模を正確に見積もることは残念ながら不可能ですので、その主張が正しいのかどうかも分かりません。可能性として存在することは理解出来ますが、それが果たしてどの程度現実的なものなのかどうかが問題になるのだと思います。確かに火山はいつかは噴火するでしょうし、その時に原発があれば被害が起きる可能性があるという主張は理解出来なくはありません。しかし原発を止めた分、必要となる発電能力をどこでカバーするのか、ということで再生可能エネルギーを持ち上げがちです。

 しかし、火山が大規模に噴火した場合、大量の火山灰が降り注ぎます。空気中にも上空にも大量の灰が舞い続けますので、太陽光が遮られます。それによって気温が下がるのに加えて、再生可能エネルギーの代表格である太陽光発電がまず機能しなくなります。太陽光が遮られることによって発電効率が落ちるだけでなく、ソーラーパネル自体が大量の降灰で物理的に埋もれます。大規模なパネルや屋根の上のパネルでは人力で灰を取り除くのが困難ですし、自動化してワイパーなりロボットなりドローンなりを利用するにしても、そのための電力もさらに必要になります。
 そしてもう一つ、再生可能エネルギーとしてよく取り上げられる風力発電も、風車の羽や軸など稼働する部分に灰が溜まるはずです。海上にある風力発電機であれば、さらに海水を含んだ灰がこびりつくことになります。発電量の低下だけではなく故障の可能性も高くなるでしょう。
 既存の水力発電所も、降灰の影響を免れません。大量の灰を含んだ水で問題なく発電できるかどうか。

 しかも、上にも書きましたが、灰が大気中に拡散することにより大幅に気温が低下します。江戸時代の浅間山大噴火では、大量の灰によって気温の低下・太陽光の減少と灰そのものが田畑を覆ったことで、大規模な飢饉が発生しました。食料は備蓄を事前に蓄えておけば何とかならなくはないですが、気温低下による寒さを防ぐのは大変です。しかも、原発を止めていたら問題なく稼働できるのは火力発電くらいになります。

 ここまで、反原発の主張を否定してきましたが、じゃあ原発があれば噴火が起きても大丈夫!というわけでは当然ながらありません。冒頭に書いた火砕流が海沿いの原発を襲う可能性は変わりません。
 海岸沿いの原発が危険なのであれば内陸部に作ることになりますが、内陸部に建設された原発は河川や湖沼の水源から水を引いて冷却する仕組みになりますが、結局は水力発電同様、大量の灰を含んだ水で問題なくかどうするのか、という疑問が出てきます。

 原発推進派にしろ反対派にしろ、自分が主張することだけが真実だとみなし、お互いの問題点を指摘するのみで、建設的な議論を組み立てようとしている感じは見受けられません。想定されているような大規模噴火が起きれば、3.11の大災害をはるかに超える被害が起こりえます。そういった場合のお互いの主張の利点・欠点をお互いに認め合い、最終的な目的(必要十分なエネルギーをいかにして確保するか)を達成するためにどうするか、ということを話し合って実行するところまでいかないと、何も無いまま何も出来ないまま防げる問題を放置してしまうことになります。そうならないように、感情で相手を全否定するのではなく、あくまで問題点・相違点に絞って話し合う姿勢を意識することが必要です。

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