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今の解雇規制は本当に労働者のためになっているのか?

労働者と資本家の対立というのはイギリスでの産業革命以降、資本主義社会において必然のものではありますが、歴史を経る中でどちらも対立しすぎたら損をすることを理解したからこそ歩み寄り、法的整備がなされることによって激しい対立というのは先進国ではほぼ起こらなくなっています。

メーデーもイベント的な存在になってきましたが、個別の事例においては企業と従業員の対立というのは当然ながら存在しています。

東芝系社員、退職拒み単純作業 「追い出し部屋」と反発
https://www.asahi.com/articles/ASM6D4JSKM6DULFA011.html

追い出し部屋なんて90年代の話かと思っていましたが、未だに存在しているそうです。ぱっと読んだ感じでは当然ながら従業員側の肩を持って東芝は酷い会社だ、なんて気になってしまいますが、そもそもこのような追い出し部屋を用意せざるを得なくなる企業側としても嫌な話のはずです。

別に資本家の味方になるつもりはありませんが、解雇規制が厳しいために雇用に及び腰になってしまうとか、雇ったはいいが様々な事情で企業としては使いたくない人材に関しても簡単に解雇できない、というのは企業にとってマイナスなだけではなく、労働者側にとってもあまり良い結果をもたらすとは思えません。雇用者数が増えなければ働き口が減りますし、雇われても会社で活躍できなければ、労働環境が良くない中で働き続けざるを得ないというのも昇給やストレスなどの面でマイナスでしょう。

一部の外国のように簡単にレイオフ出来てしまうようになったらそれはそれで社会的な悪影響が大きくなってしまいそうですが、望まない仕事によるストレス、生産性が落ちることによる企業利益の圧迫、といった問題も出てきます。

上記の記事によれば、希望退職を拒んだ人達が単純労働・肉体労働に回されたとのことですが、希望退職で得られる臨時収入や、失業保険の拡充など、雇用規制を緩めても労働者側の生活基盤に大きな悪影響が出ないような整備も必要ではないでしょうか。

企業側としても日本国内だけで戦うのではなく、諸外国で競争している以上は労働規制の緩い国にある企業と争うのは人件費的に厳しいはずで、結局日本経済のマイナスにまでなってしまっては本末転倒の規制となってしまいます。

そもそも中小企業の従業員や非正規社員は大企業の正社員に比べると簡単に首にされますから、公平性の観点からも問題があるはずです。

また非正規雇用の話になりますと、同一労働同一賃金であるべき、という意見もありますが、もしそれが法制化された場合、追い出し部屋に行かせる代わりに単純労働に回した高齢の正社員に対して、給与を一気に下げることも許されるんでしょうか?

厚生労働省 同一労働同一賃金特集ページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html

同一労働同一賃金制は非正規雇用の給与を引っ張り上げるための制度として議論されていると思いますが、むしろ正社員の給与が下がりそうな気がします。

そもそも、企業が人件費を抑えよう、低くしようという圧力を持っているのは必然です。売上を増やすか経費を減らすかでしか利益は確保できないのですから。だからこそ労働者に対する法的保護があるわけですが、人口も企業売上も含めて社会全体が右肩上がりだった時代の法的保護と、国際競争が激しく人口が減り始めた時代の法的保護において、資本家と労働者の関係性の捉え方も変わってくるべきだと思います。

社会全体が正社員を減らして非正規雇用を増やさざるを得ないのなら、そのようになったとして政府がどのような保護を労働者に与えるのか、厚労省や労基署レベルではなく国家全体として、例えばベーシックインカムを導入するなどで全体の収入が増えれば企業からの給与は減っても生きていけます。それが正しい道かどうかは分かりませんが、正規労働者のみ保護する仕組みを維持するだけでは社会全体が成り立たない時代に既に突入していると思います。


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