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イラン情勢と消費税

安倍首相のイラン訪問と、そのタイミングでのタンカーへの攻撃によってむしろイラン情勢が悪化した感もありますが、アメリカの同盟諸国であるイスラエル、イギリス、サウジアラビアはタンカー攻撃を仕掛けたのはイラン革命防衛隊(事実上の国軍)であると断言して、イラン政府への圧力を強めています。日本政府は公式にイランを非難する声明は出していませんが、被害者&外交交渉をしていた日本がそれをやると、他の親米諸国による非難とは異なり、中東戦争のキッカケになりかねません。日本が最後の砦のようになってしまいました。安倍政権の今後の出方は非常に難しいですが、何もしないという選択肢が一番マシかも知れません。

2003年のイラク戦争では、ブッシュ大統領・ブレア首相・小泉首相による米英日の強固な同盟関係から、アメリカの武力行使が始まりましたが、結果的にはイラクのフセイン政権は大量破壊兵器を所有していなくて、単なるブラフであることが終わってから分かりました。遅かれ早かれフセイン政権は維持できなかったとは思いますが、イラク戦争のキッカケがフセイン政権が大量破壊兵器を所有しているという偽情報だったわけですから、今のイラン情勢にも似たところがあります。

果たしてイランは核兵器開発を継続しているのか、近隣の米軍に対する攻撃準備を行っていたのか、そして先日のタンカーへの攻撃はイランによるものなのか。

今回のタンカー攻撃事件をベトナム戦争の泥沼化のキッカケになったトンキン湾事件になぞらえる人が結構いますが、この攻撃がアメリカの自作自演ならトンキン湾事件よりも米西戦争を引き起こしたメイン号事件の方が近いでしょう。

https://ja.wikipedia.org/wiki/米西戦争#戦争の始まり

もちろん、現時点ではイランによる攻撃なのか、アメリカの自作自演なのか、それとも第三勢力によるものかは私には分かりません。

タンカー攻撃、見えぬ犯人像
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46200330X10C19A6FF8000/

情勢悪化を目指したアメリカの仕業か、
アメリカへの間接的な警告としてのイランの仕業か、
ペルシャ湾の不安定化を目指したイラン反政府勢力の仕業か。

イランにしてみたらアメリカがどこまで攻撃してくるのか分からないですし、アメリカにしてみても同じでしょう。双方が相手に対して疑心暗鬼になっている状況であれば、仲裁に他の大国が入るというのは至極自然なことであり素晴らしいことのはずです。しかし、そのタイミングで仲裁国を敵視する行動が取られると結果的には情勢が悪化してしまいます。

どれでも筋は通ってしまいますが、原因よりもこの後の事態の方が問題です。どこまで紛争開始を食い止められるのか、時間の問題かも知れません。

そうなるとペルシャ湾・ホルムズ海峡経由の原油輸入が出来なくなります。サウジの紅海側からの輸入など、他のルートからの輸送も出来なくはないですが当然ながら他ルートの原油価格が跳ね上がります。湾岸戦争でも原油価格は急騰しましたが、2003年のイラク戦争でも値段が上がりました。その後、シェール革命によって原油価格は下落しましたが、ベネズエラ情勢も不安定なままですので、もしイラン戦争が起きれば原油価格の値上がりは起きるでしょう。

そうなると当然ながら世界経済が冷え込みます。中国はロシアからも輸入できますがまだまだ中東からも輸入していますので、中国経済の急減速も相まって「リーマンショック級の出来事」が起きると、消費税増税もストップするかも知れません。増税するかどうかよりも戦争が起きるかどうかそのものの方が重大な話ではありますが、イラン情勢は日本の一般消費者にとっても無縁の話ではないということです。

また、イラン戦争が始まったとして最終的にはどうなるか、という見通しを立てるとすると、まずアメリカが勝ちます。アメリカがこれまで行った対外戦争で負けて撤退したのはベトナム戦争のみです。第一次世界大戦・第二次世界大戦のドイツと太平洋戦争での日本、湾岸戦争・イラク戦争でのイラクなど、出口戦略に失敗した例もあれば成功した例もありますが、基本的にアメリカが戦争で負けることはありません。朝鮮戦争では38度線まで中国軍に押し戻されましたが戦争開始以前に戻しての休戦です。

アメリカがイランに勝つとして、イランの政府まで破壊することは難しいでしょうし、イラク戦争がISを生み出したようにイランの地方や周辺が不安定化すれば結果的に中東情勢がさらに悪化してしまうことになります。さすがにそこまではやらないと思いますが、やってしまうと第二のイラクが生まれて米軍がさらに泥沼にはまることになるでしょう。だからといって中途半端なところでイラン政府が譲歩して敗北を認めるとも思えません。しかし、イランの国体としては宗教的権威と政治的権威が分離しています。安倍総理が相次いで会見した、ロウハニ大統領とハメネイ師です。どちらか(おそらくは大統領)を更迭、失脚させる形で責任を取らせてやむを得ずアメリカの出した条件を飲んで休戦する、という形であれば成り立つかも知れません。それでも、長期的には紛争の種を残すことにはなりますが。

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