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移民の同化は必要か。移民が同化するか、移民を同化させるか。

移民問題というのは現状、世界中の多くの国々で起こっている問題ですが、日本も例外ではなくなりつつあります。

先般、国会で成立した法律によって、知的労働者や技能労働者に限らず、単純労働などでも移民の居住を認めることになりました。

改正入管法が成立へ 14業種、外国人の就労拡大
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38701380X01C18A2SHA000/
人手不足解消のため、一定の技能を持つ外国人や技能実習修了後の希望者に新たな就労資格を与える。これまで認めてこなかった単純労働に門戸を開く。日本の外国人労働者を巡る大きな政策転換となる。

これにより、移民が日本でも増えていくことは予想されますが、そもそも今回の法律の目的は単純労働・肉体労働などで不足している人手を外国から連れてくることです。いわば経済界の要請によって成立したわけですが、秋に控える消費税増税のバーター的な法律でもあります。消費税増税によって消費が減るかも知れないけれど、その分外国から安い人手を連れてきて人件費下げれば企業の利益は確保できるよね、という理屈です。

与党にしろ官僚にしろ経済界にしろ、上記の理屈を「はい、そうです」と肯定するわけはないのでもはやどうしようもありませんが、そもそも移民として日本に移住してくるはずの人達の事情を全く考慮していない気がします。日本は裕福で移民は貧乏という前提で成り立っているような計画かと思ってしまいます。

移民が各国で問題になっているのは、その移住先の国のとは異なる言語・文化・風習・信仰などをずっと維持し続けることで起こります。いわば移住先に同化しない状態を続けるということですが、かつては移民は移住先に少なくともある程度は同化せざるを得ませんでした。

言語が出来なければ仕事・収入を得られません。文化や習慣が異なると近隣住民と軋轢を生みます。信仰の違いも同じく同化の壁になります。特に既存住民との婚姻が困難になると次世代以降でも同化がなされず移民集団の純粋性が保たれることになります。少しずつ同化は進んでいったはずです。移住元にいる集団と移住した移民集団との間の通信はほぼ絶たれていて、移住自体困難を伴っての移動でありますから後ろ盾も頼るところもなく、移住先の現地近隣住民と仲良くせざるを得ませんでした。

歴史上、多くの移民が発生し、移住先に半ば同化して生活していました。完全に同化する場合もあれば、例えばユダヤ人のように自らのユダヤ人としてのアイデンティティを保っていた場合もあります。しかし、ほぼ同化しないで生活し続けるというのは先に挙げた理由もあってかなり難しい話でしたが、現代では移住先にいる移民集団は、移住元の集団と密接につながりを保ちつづけることが可能です。

移住先と移住元とではインターネットを使えばほぼ無料で毎日顔を見て話すことが出来ますし、ネットメディアを通じて故国の情報をリアルタイムに得られます。そしてお金が貯まれば飛行機などですぐに戻ることが出来ます。国際送金も簡単に出来ますし、ほとんどの場合で物価が大きく異なるため、移住先での所得を移住元の集団に送って生活の足しにすることが容易です。

仕事さえ見つかれば、移民は現地の近隣住民と密接なつながりを持つ必要がなく、逆に元の国とのつながりを持ち続けて結婚相手をそちらで探して連れてきたりあるいは帰国したりすることも可能です。

さて、こういった現代の移民の特徴を考えると、日本に移住してきた移民の集団が日本の文化・風習に同化するとは考えづらいです。サミュエル・ハンチントンが言うように、もともと日本文化・文明は世界の中でも国家・民族レベルで独立している稀なものです。その文化にルーツを同じくする人達は他に存在しません。

日本に移住してくる移民は、多少のお金はかかりますがネット回線を契約すれば元の国と容易につながりを保ち続けて、飛行機で行ったり来たりすることも可能です。日本文化に同化しないまま元の民族としての純粋性を容易に保持できます。

そういった人達が日本に多く来ることになりますが、入管法改正に関して日本政府は移民のための法律ではない、と言っています。確かに、移民を同化させるための法律とは言えませんが、同時に移民を移民として扱い続ける限り、移住先に同化することはありません。

人手不足で苦しむ経済界を助けるためだけに労働者を連れてきます、という法律ですが、人手不足でなくなってもこの法律が自動で停止されるわけではありません。シンガポールは労働者を大量に受け入れていますが景気が悪くなると強制的に元の国に送還します。もちろん人権侵害という非難を浴びますが事実上の独裁政権であるので実行できています。

しかし、日本でそこまでの措置を取れるとは思えませんし、おそらく取るつもりもないでしょう。人口減に対応する意味も存在しているでしょうから、景気が悪くなっても人口を維持するために法律が停止されることはなく、移民が増え続けます。

そうなると、元からいる日本人側が、何のための法律なのか、何のための外国人労働者なのかという不満を持ち始め、欧米先進国で今起きているような、移民を嫌うゼノフォビア的思想を掲げる集団や政党が力を持ち始めるようになるでしょう。今の欧米先進国での移民に関する問題は、日本の未来の問題でもあります。決して対岸の火事ではありません。

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