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アップル、マイクロソフト、グーグル各社のOS戦略

先日行われたWWDCという開発者向けのカンファレンスイベントにおいて、開催したアップルがiPadで使用されるOSとしてiPadOSを発表しました。iPhone向けのiOSと大きな点では一緒の中身ですが、マルチタスク機能などのiPadでしか使用できない部分が異なります。

アップルが「iOS 13」を発表、iPad向けは「iPadOS」に
https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1188181.html

特にホーム画面左側にウィジェットを表示したり、Macのサブディスプレイとして利用出来るようになるなど、Androidやサードパーティアプリで実現している機能をそのまんま搭載してきました。この辺はアップルの戦略として対応せざるを得なくなった感がありますが、戦略と言えばiPadOSのようにアップルが抱えているOSの種類が昔に比べるとかなり増えました。

かつてはmacOSとiOSくらいでしたが、今ではそれらに加えて、Apple TVで動くtvOS、Apple Watchで動くwatchOS、そして今回分離したiPadOSがあります。これらの各OSを毎年ほぼ同じタイミングで発表して、ほぼ同じタイミングで正式公開するというのは製作者側の負担が半端ないだろうなと単なる1ユーザーとして他人事として心配してしまいますが、そもそも細分化による弊害と最適化による利益は相反する概念なのだと改めて認識します。

各デバイス(パソコン、スマホ、タブレット、TV端末、スマートウォッチ)に最適化したOSによって、それぞれのデバイスを利用する際にきめ細かな機能、サポートを受けることが出来るようになる一方で、OSがそれぞれのデバイス独自の機能をサポートすることによってOS毎の差異が大きくなってしまい、開発の負担やバグの可能性が増えてしまいます。そしてそのデメリット部分が最終的には価格の形で消費者に跳ね返ってくることになります。

アップルはシェアはともかく法人としての利益は非常に高い水準で保ち続けていますので、5種類のOSを抱えていても問題ないのでしょうね。むしろ垂直統合的にハードウェアとソフトウェアを開発しているメリットとして各デバイス間の連携を簡単に取れるため、OS細分化のデメリットは開発的には無いのかも知れません。

一方で、アップルのライバルであるマイクロソフトとグーグルはOSの管理として違うアプローチを選んでいます。

マイクロソフトはWindows10を公開した後、毎年2回の大型アップデートは無料で提供し続けています。今後のWindowsはずっとこの方針で行います。

最後のWindowsとなる「Windows10」今後Microsoftはどこで利益を上げるのか
https://nge.jp/2015/05/24/post-106018

かつては、WindowsXP、Vista、7、8と新しいWindowsを使うためにはそれらが入った新しいPCか、パッケージ販売されているWindowsを買わなければいけなかったですが、マイクロソフトはその売り方を止めたということです。アップデートで新機能を追加し続けていく、という点ではmacOSと同じになります。


マイクロソフトは販売が好調なSurfaceシリーズによってタブレット市場で大きなシェアを得ていますが、Windows10にはタブレットとしても使いやすくなっています。個人的にはiPadやAndroidタブレットに比べるとWindowsのタブレット使用はあまり使い勝手が良いとは思えないのですが、これは多分、判断の立脚点がどこにあるのか、という違いからなんだと思います。

つまり、タブレットをスマホの延長線上(大きく見やすく)にあると思っている私は、iPadが使いやすいと思っていますし、タブレットをパソコンの延長線上(小さく持ちやすく)に見なす人にとっては、SurfaceなどのWindowsタブレットが使いやすいのだと思います。

それはともかく、マイクロソフトはパソコンとタブレットのOSを共通化しています。それに加えて、WindowsPhoneスマホからも撤退してしまったので今のマイクロソフトが抱えているOSはWindows10しか存在しません。過去のサポートはまだありますし、正確にはWindowsServerもありますが、Windows7や8.1のサポートは数年後に終わり、WindowsServerもいずれは機能縮小していきそうな気もします。サーバー事業はクラウドプラットフォームのAzureに持っていきたいでしょうし。

また、グーグルも抱えているOSはAndroidとChromeOS、そしてWear OSがあります。そもそもグーグルはOSが事業のメインではありませんが、OSとしてはAndroidがメインなのは間違いないです。既にChromeOSはChromebookに搭載されるPC分野において一定のシェアを確保しています。日本ではあまり見ないですが、アメリカでは教育現場で結構採用されているそうです。起動・終了が早く、HDD不要のため乱暴に扱っても大丈夫、怪しい余計なソフトをインストール出来ないといったところが、教員側にとっても楽でしょうね。ただ、ChromeOSで使用できるサードパーティアプリとしてはほぼAndroidアプリと同一になりつつありますので、iPhone用iOSとiPadOSとの関係に似ているかもしれません。

また、Chromebookがそれなりに残れそうな一方でWear OSはChromeOSよりもさらに見かけません。iPhoneとApple Watchの連携度合いを見ると、グーグルがスマートウォッチの分野で存在感を出すには、例えばPixel Watchといった感じでグーグル純正のスマートウォッチが出るかどうか。それが出来なければ、普及しないサービスは容赦なく切り捨てるグーグルのことですからWear OS自体切り捨ててしまうんじゃないかなとも思います。

マイクロソフトもグーグルも、抱えている最新OSは細分化されないように絞っていますが、アップルは拡大してきました。これらの戦略は果たして、吉と出るか凶と出るか?

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