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商店街VS大規模小売店という偏見

「地域に根ざして細々と経営してきた小さな店舗が集まっている商店街を、都会からやってきた人情味のかけらもなく、気が弱い人達を札束でビンタするような大企業が運営する大規模小売店が、金と権力でねじ伏せてぶっ潰してしまう」、という分かりやすい構図は、分かりやすすぎるが故に一層注意して批判的に見なければなりません。

 光文社新書に
「商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道」新雅史/著
という本があります。

 そもそもの商店街の成り立ちから一般的なイメージを覆す良書です。元々その地域で商店を営んでいたところに百貨店が出来た、という流れではなく、交通至便なところに百貨店が出来て、その周辺に百貨店に来る客目当ての商店街が発生した、という歴史を語っています。映画「三丁目の夕日」のような商店街は、昔からあったのではなくその当時に出来て間もなかったはず、ということです。
 こういった目から鱗的な見方は面白いですが、なかなか社会的なコンセンサスは得られません。時間をかけて認識が広がっていくか、もしくは前々広がらないかどちらかでしょう。

 そしてその次には、「大規模小売店の代表格であるイオンが商店街を潰して君臨していたはずなのに、地域のことなど知らない都会の本社が経営上の都合で勝手に撤退することによって、その地域のお年寄りなど買い物弱者が買い物難民になって苦しめられることになる・・・」という構図が安易に作られます。
 もちろんそういうケースもあるにはあるでしょうが、地域毎店舗毎によって状況は異なるはずです。上記の構図を方程式のように全国一律で地方経済に当てはめると実態から離れた見方が量産されてしまいます。

「商店街を潰したイオンが撤退で買い物難民」は全てが真逆だった!?――「イオン撤退でも買い物難民ゼロ」の理由とは(HARBOR BUSINESS Online)

 こちらの記事では、そのような画一的でそれこそ「都会的」なマスメディアの報道ではなく、実際に街を歩いて住民に取材をして状況を確認し、イオンが駆逐されたのはさらに便利な(そして安価な)大小の小売店舗がイオン周辺に出来たからだ、という見立てを述べています。これこそ報道としてあるべき姿でしょう。
 安易な構図というのは人々にとって理解しやすく、そして人々の良心に訴えやすい為に人々が信じてしまいがちになります。こういった無条件で前提化した見方というのは覆すのは難しいです。覆せるとすれば、それは知識や教養の多寡によるものではありません。疑いの目と事実を確認するプロセスを大事にしておくことが肝要だと思います。肩書きやネームバリューに覆われたベールを取り去って、自分の信じているものを一度疑って見直すことが出来るのか、それがファクトチェックと言うべきものでしょう。フェイクニュースに対するものだけがファクトチェックではないのです。

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