将来的な電気自動車義務化は暑いところや寒いところでも?

CO2削減のためにガソリン車が目の敵にされるような時代になりつつあります。その流れに沿う形で、電気自動車へのシフトを進めるべきだという意見もよく聞かれます。環境先進国を自認する国々ではその風潮は確かなものになっています。

フランス 2040年にガソリン車、ディーゼル車の販売禁止へ EV普及を促進
https://zuuonline.com/archives/161520
フランスのユロ・エコロジー相が2040年までに国内でのガソリン車、ディーゼル車の販売を禁止する方針を明らかにした。地球環境への影響に配慮し、電気自動車(EV)の普及を目指す。

しかし、その一方で昨年から今年にかけてフランスで起きた暴動、黄色いベスト運動も元はといえば燃料税の増税に対する反対から生まれたもので、マクロン大統領がそれなら電気自動車に乗れば良いという、マリーアントワネットばりの発言が火に油を注ぐ格好となりました。

燃料税増税で暴徒化 フランス大統領「撤回しない」
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000141787.html

EVへのシフトやガソリン車禁止などの政策とそれに対する暴動の原因は、直接的にはマクロン氏の発言やその資質に問題があるのかも知れませんが、根本的には「電気自動車はエコロジーでガソリン車は環境に悪い」という大前提が存在していることです。

しかしフランスのように国家全土がそれほど寒くなく、地域差も大きくない国であればガソリン車禁止のような政策も無理ではないでしょうけれど、例えば日本のように都市部と地方の交通の便に差が大きく、気候の違いも大きな場合はどうなんでしょうか。

具体的には、リチウムイオンバッテリーは安定して動作する気温が限定されています。
身近なものではスマホやノートパソコンなどに搭載されていますが、例えばiPhoneXSのスペックシートには動作環境として、

https://www.apple.com/jp/iphone-xs/specs/
動作時環境温度:0°〜35°C
保管時(非動作時)温度:-20°〜45°C

と書かれています。もちろんこれはリチウムイオンバッテリー単体の動作環境ではなく、他の部品も含めて動作保証される気温です。それでもある程度の範囲を超えると動作が鈍くなったり、動作しなかったりします。それはリチウムイオンバッテリーそのものも同じです。

電気自動車でもリチウムイオンバッテリーが使用されていますから、自動車自体を動かす出力は適した気温の幅を超えてしまうと、著しく制限されてしまうはずです。

日産リーフの諸元表を見ても動作環境温度については記載がありませんでした。

https://www3.nissan.co.jp/content/dam/Nissan/jp/vehicles/leaf/1907/pdf/leaf_specsheet.pdf
●交流電力量消費率および一充電走行距離は定められた試験条件での値です。お客さまの使用環境(気象、渋滞等)や運転方法(急発進、エアコン使用等)、整備状況(タイヤの空気圧等)に応じて値は異なります。電気自動車は、走り方や使い方、使用環境等によって 航続可能距離が大きく異なります。

もしかするとどこかに書いているのかも知れませんが、見つかったのは日産のホームページ内にある、ユーザー同士のQ&Aくらいでした。

寒冷地での使用
https://ev1.nissan.co.jp/LEAF/RORA/ZE0/QUESTIONS/DETAIL/327

これを読むにやはり寒冷地(あるいは暑い地域)ではかなり効率が悪くなるはずです。ガソリン車でも寒すぎたら暖機運転が必要だったりしますが、電気自動車は果たして極寒の地でも動作するのでしょうか?

そう思ってウェブをあさると、

新車の4割」EV大国ノルウェーの裏事情
https://president.jp/articles/-/23053
北欧ノルウェーでは、すでに新車販売の4割が電気自動車(EV)になっている。

こんな記事が見つかりました。
なるほど、そもそも寒すぎてガソリン車の動作も大変でそのための設備やコンセントがあったくらいだから、EV普及に必要なインフラ整備も簡単だった、ということだそうです。

逆に言うと、それくらいの準備をしないと寒冷地での電気自動車義務化は相当難しいはずなのですが、その費用はどう捻出するのか、という問題も出てきます。ガソリン車廃止することでガソリンの税金もなくなりますが、税金で負担してインフラを整えるのか、それとも受益者負担のみにするのか。後者であれば地方切り捨てと言われてもしょうがないでしょう。寒冷地の過疎地に住む人がいなくなります。

じゃあ寒冷地だけガソリン車を認めるか、というとそれも問題で、そのガソリン車で暖かい都会に出てきてもいいのか?ってことになります。それを認めるにしても、暖かい都会にはガソリン車が存在しないならガソリンスタンドも存在しません。

電気自動車ではなくプラグインハイブリッド車であれば両方の地域で使えますが、そうなるとプラグインハイブリッド車のみ存在が許されることになるのでしょうか?

これは寒い地域の話だけですが、日本やヨーロッパに限らないことにすれば、赤道直下など非常に暑い地域でもリチウムイオンバッテリーは動作が悪くなりますから同じ問題が出てきます。

環境先進国はいち早くEV義務化を達成した後、気候やインフラの問題でEV義務化が出来ない国々を非難するのでしょうか? そしてそれは正当な非難なのでしょうか?


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