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書店業界の未来、利益にならない既得権益を捨てられるか

書店・本屋さんが小さい規模の店舗は現時点で非常に厳しい業界だと思います。

「まちの本屋」がどんどん潰れていく2つの理由
https://toyokeizai.net/articles/-/281632
書店調査会社のアルメディアによれば、1990年代末に2万3000店ほど存在した全国の書店は、2018年時点で1万2000店ほどにまで減少しているという。ネット販売や活字離れもあって、書店は厳しい状況に置かれている。

この東洋経済の記事では、そんな中でも独自の施策で何とかやっていっている書店を取り上げていますが、むしろそういったポジティブな要素よりもネガティブな現状を指摘している方が目に付きました。

記事中では、多様多彩なポップによってファンを増やして売上を維持している書店があるということですが、そもそもそういった売上増加策を積極的に打ち出していける本屋さんもそんなにないでしょう。いわゆる「まちの本屋」さんは家族的経営でギリギリ、もしくは年金で何とか食べていける程度の売上しかないところもあるはずです。「こうやったら売上伸びた!」という成功例を見せられても同じことが出来るところは限られていますし、そもそも同じことをしても成功するとは限りません。自治体が他の地域の町おこし・村おこしの成功例をそのまま持ってきても成功しないのと同じですよね。

昔(コンビニがあまり無かった頃)は子どもが漫画雑誌やコミックスを買うのは街の本屋でしたし、それが売上を支えていました。しかし今では発売日にコンビニのレジ前に並んでいますし、そもそも子どもの数が減っているために漫画雑誌自体の売上が大きく減っています。街の本屋の売上が落ちるのは当然のことです。そして巨大書店に押され、ネット書店に押され、電子書籍に押され、街の本屋が今後も成り立つ見込は非常に少ないでしょう。

さて、上記リンクの3ページ目以降が個人的には本題です。

「ランク配本」という言葉をご存じだろうか。端的に説明すると、「店舗規模によって自動的にランクが決められ、各書店に配本される冊数が決まる制度」だ。

つまり、売上がしょぼい本屋には売れ筋の本を卸しませんよ、という制度です。当然ながら、小さな街の書店と、ターミナル駅前にある巨大書店とでは売上が異なり、売れ筋の本をおける冊数に大きな差が出てきます。それによってさらに売上に差が付き・・・という格差社会の拡大がここでも見受けられます。

また、書籍の問屋にあたる取次店が、書店が注文していない本を勝手に送る「見計らい本」というシステムも、小さな書店にとって悩みの種となっている。求めている本は足りず、求めていない本が届く……運営が厳しくなるのは当然だ。

そしてさらなる問題として、この「見計らい本」の存在も書店を苦しめています。売れない本は取り次ぎ経由で戻すわけですから、コンビニの弁当廃棄ほどの問題にはならないでしょうけれど、売りたくない本を店頭に置くのは何のメリットもないでしょう。新聞社が新聞販売店に強要する押し紙みたいなものですよね。

売上があった昔はそれでも経営が成り立ったのでしょう。ランク配本で冷遇されても、見計らい本を送ってこられても何とかやっていけた。しかし子どもが減り、売上が奪われ、先の見込が無い状況で昔からの慣習によって経営をさらに圧迫される状態になっているようです。

昔は良かったけれど今は時代が変わったのだから経営の仕方を変えなければならない、という主張は、まさに各出版社や各メディアが取り上げて多くの業界や企業などを批判してきましたが、まさにそのメディア業界・出版業界こそが変わらないと持続できない時代になっています。新聞にとっての新聞販売店、出版業界における「まちの本屋」が、昔からの慣習によって今後も潰れていくのであれば、結局業界全体が地盤沈下のように崩れ落ちていくのではないでしょうか。

新刊発売、中国九州で1日遅れに 物流危機で書店逆風、4月から
https://www.nishinippon.co.jp/item/o/492839/
中国地方5県、九州7県で4月1日から、雑誌と書籍の新刊の店頭発売日が従来よりもさらに1日遅れることが9日、分かった。物流会社の人手不足やコスト上昇が要因。

少し前のニュースですが、このように従来型の書店の方がAmazonなどのネット書店よりも手に入れるのが遅くなると、なおさら利用する理由がなくなってしまいます。こういうところは書店業界全体で解決しないといけないはずです。しかし、キツい物言いかも知れませんが事実上は一部地域を切り捨てるような形で業界の存続を図る見込のようです。


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