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ビジネスチャットとメールの使い分け

近畿大学が全教員にビジネスチャットツールであるSlackを使用させるそうです。

近畿大、全教員が「Slack」利用へ “お堅い”やりとりなくす(ITmedia NEWS)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190709-00000089-zdn_n-sci

Slackは私も使っていますが個人的には使いやすいところと使いづらいところの両方があるなあと思っています。

使いやすいのは無料でもほとんどの機能を使えますので、導入する障壁が非常に少ないこととか、いろんなウェブサービスとの連携も進んでいますので、Slackを中心にできることとか、あるいはチャットツールの基本ですが、ちょっとしたことを伝えるのに電子メールよりも大げさではないことなど、使っている人であればいくつも挙げられると思います。

その一方で、Slackはプロジェクトなり組織なりで一つのワークスペースを作りますので、複数のワークスペースでの連絡を密にしようとすると、それぞれのワークスペースを立ち上げておく必要があります。そしてパソコンの場合ですとブラウザ上でも専用アプリ上でもワークスペースを開いておくと、かなりのメモリ喰いっぷりです。メモリが少ない場合や、スワップ先がHDDの場合だと結構なストレスを感じます。メモリが潤沢でSSDを積んでいればマシではあるのですが。

Slackに限らず、チャットツールは便利な一方でもしもの時のデメリットも存在します。

チャットツールは一つの企業がウェブサービスとして提供していますから、その企業のサーバ(あるいはAWSやGCC、Azureなどのクラウド上のサーバ)や通信回線に障害が発生した時に、当然ながらそのチャットサービス自体が使えなくなります。

なんでもかんでも普段のやり取りをその特定のビジネスチャットツールに依存していた場合、そのような大規模障害の時に、相手方に何の連絡も取れなくなってしまいます。電子メールでのやり取りの場合、なんらかの障害が発生したとしても、例えばプロバイダ、レンタルサーバ、Webメールなどの一部が使えなくなるだけですから、複数のメールアドレスを利用していれば、そちら経由で連絡を取ることができるはずです。

電子メールの仕組みは20世紀後半に定められたもので、今となっては相当に古い規格が元になって拡張されたものですが、インターネットの原型であるARPANETのようにどこかがやられても迂回してなんとか利用できるようになっています。言い換えると、特定の一箇所が急所にはなっていない設計になっています。だからこそメールはチャットツールよりも使いづらい部分があるのですが、特定の企業が障害を起こしたとしても電子メールという仕組みそのものが全く使えなくなる可能性は非常に低くなっています。

この辺は、特定の一企業が提供するチャットツール(SlackやChatworkのようなビジネス向けだけではなく、LINEやWhat'sAppのような個人向けも含めて)は、どうしてもその企業がどれだけサービスを安定して提供できるか、ということに依存してしまいます。これは電子メールの分散的・分権的なシステムとは真逆の、中央集権的なシステムの構造的な弱点と言えるでしょう。

となると、チャットツールに頼り過ぎるのはダメだ、と言いたくなるところですが、いざ障害が起きて連絡が取れなくなってしまったら、それを言い訳に仕事をサボ、いや、業務遂行に著しい問題が不可抗力的に生じたということになってあれやこれやとかえってメリットが出たりしますかね。

逆に電子メールですと、例えば自分が使っているメールサービスだけが障害が発生していたとすると、先方からはまるで自分がメールを無視しているかのように思われてしまうかもしれません。チャットツールが使えなくなったらTwitterで検索してみれば障害が発生していることにお互いに気が付きますから、お互いの非難の矛先はそのサービス提供者になります。

一番いいのは、チャットツールを使いつつ、非常時の連絡手段(メールアドレスやSNSのダイレクトメッセージとか)を知っておけばいいのでしょうけれど、チャットツールの障害自体がたまにしか発生しないので、そういう習慣が根付かないんですよね、残念ながら。

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