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縦書き日本語の寿命

 現在、日常生活の中で目にする日本語の文章は、ほとんどが横書きになっています。縦書きなのは、本・雑誌・新聞くらいです。ビジネス文書にしろ、電子メール・チャットにしろ、ネット上のニュースにしろ横書きで表示されています。

 学校での国語や現代文の授業では、縦書きの文章しか取り扱いません。国語の教科書がそもそも縦書きだからですが、横書きの日本語の文章を読み取る能力を育てる・測る必要性はないのでしょうか? 第一、国語以外の教科書は数学も社会も理科も全て横書きです。縦書きでも横書きでも読解力は変わらないのでしょうか。

 日本語は本来縦書きのものなのだから国語教科書も書籍も新聞も縦書きであるべきだ、という主張は理解出来ますが、それなら横書きで書かれている大量の日本語文書は日本語では無いのか、という問題に直面してしまいます。

 もちろん、横書きの理由として、アラビア数字やアルファベットがあるので無理に縦書きにして読みづらくなるよりは横書きの方が無理がないから、というのがあるでしょうけど、それならそれで結局縦書きでの文章が残る理由が無くなってしまいます。昨今では縦書きで書かれる文章の中に数字やアルファベットが全く無いものの方が少ないでしょう。何故縦書きと横書きが並立しているのでしょうか? 縦書きの方が読みやすい、という意見には賛同します。全く同じ文章を縦書きで読むのと横書きで読むのとでは、縦書き日本語に慣れた人間にとっては必要な労力は差が出てくると思います。ただ、それなら意地でも横書きを排除して全て縦書きにするべきでは、という意見が出てもおかしくないはずですが、そこまで主張する人にお目に掛かることはありません。日常生活で読み書きする日本語のうち、横書きの割合が増え続けているはずなのに、読解力を問われるのは縦書きのみというのはアンバランスではないでしょうか。

 戦後の日本語教育・国語教育の転換の中で、常用漢字や仮名遣い、旧字体と新字体の変更などがありました。その前には維新後に平仮名と片仮名の統一や口語体文章の誕生などもありました。この150年くらいの間に、日本語の文章は過去に2度も大きな変革を受けています。そしてこの21世紀前半の今これから、縦書きの日本語がほぼ無くなり横書きメインになるという、3度目の大きな変革があるのではないでしょうか。そのXデイは新聞と国語教科書が横書きになるときでしょう。ここ5年10年のうちにはそうはならないでしょうけど、30年後や50年後は分かりません。それまで少しずつ、横書きでの書籍や増えていき、どこかで堰を切ったように変わっていくはずです。個人的には手始めに、IT系や科学系の雑誌が横書きになるのではないかと思っています。というか、個人的にはまずそこから変わって欲しいです。だって読みづらいですから。

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