『サスペリア(2018)』のお話/ネタバレあり

ひとりで観てもいいし、だれかと観てもいい
鑑賞後に心にずっしりと残る見ごたえのある映画だと思います

オンライン試写後に内容の一部分を解説していただき、劇場へ足を運びました。やはり大スクリーン&音響での鑑賞は感動が違う…!
とーっても長い!150分です、ハマればあっという間でしたが劇場から出ていくお客さんからちらほら「長いしよくわからなかった」と声が聞こえました。
それも共感できます、私も実際初回は頭に??が浮かびました。
でも「なんかすげえけど変な映画観た…わかんないけど強烈だった…」って気持ちなかなか味わえないですよ!
ハマれなかったらしょうがないけど!
あと全然怖くないです、お化け屋敷的な大きな音で驚かす系ではなくて「意味を理解すると怖い」という系統かな?
ホラー苦手だけど体験してみたいなって方にいいんじゃないでしょうか。

で、鑑賞後に読むと「これってこうだったんだね」という解釈と考察をふせったーでは書ききれないのでここに書き連ねます。
ひとつひとつ説明すると長ーくなるのでさくっと書いていきますね。

読む前に
★ネタバレしていますので観終わった方用じゃないかなと思います
★個人の知識の範囲で解釈と考察をしています
(それなりに調べたりはしましたが出来る範囲があります)

この映画を読み解くためのtips

・最後のシーンの意味
これを話さないと全体がうまく話せない。

あるものを目にした博士は、満身創痍のまま帰路につきます。
その後、彼を訪ねてきたある人物に「人間には罪が必要だけれども、あなたは罪を背負うことはない」と告げられ今までの体験と記憶を消され痴呆状態にされる。
そこでその行為を「癒し」と捉えられがちですが実際は違います。
博士は生き別れた奥様との大切な思い出も消されてしまう、東と西が分断されたベルリンで壁を行き来し、彼女と過ごした大切な家で壁の傷をいとおしみ過ごすことを楽しみにしていました。
観劇中も博士の隣席は空いています、奥様のための席だったのかもしれません。
彼女との特別な思い出も消されてしまいました。
初めて過ごした彼女の誕生日…それが相手にとってもささやかで心を支えた思い出だったと…そのある人物から告げられた直後にすべてを強制的に忘れさせられてしまう、二人が愛し合っていたという事実さえ消される
あまりに悲しく残酷な行為が行われていたシーンなんです。
(そして壁の意味を知る人物はいなくなり、現代…という流れです)

ある人物は最後にも登場し同じ行為を画面に向かって行います。
これは観客…我々も彼と同様に癒そうとしているという意味です。
そういう全能の人物であり全ての母なんでしょうね。

という事で
『サスペリア(2018)』は「残酷な怖い映画」だと受け取っています。


・主人公の生い立ち

主人公はアメリカ、オハイオ州からベルリンにバレエダンサーを志してやってきます。
彼女のご実家はメノナイトというアーミッシュのキリスト教・宗教集団のご一家です
アーミッシュはテクノロジーを拒否し農耕や自給自足で生活を成り立たせ、娯楽を禁じ質素な生活を重んじて生活しています。
詳しく言うとその中でも最低限の近代化を取り入れた集団ですが、彼女の夢にたびたび母や家がフラッシュバックします、彼女の心が囚われている「罪」の象徴でもあるのではないかと。

この宗教において柄物の服などもっての外ですが物語が進むにつれ、主人公の装いは開放的になっていくのも注目点ですね。

・魔女と宗教

ざっくり、とってもざっくりに説明すると、この映画におけるキリスト教以前にその地域にあった土着信仰=魔女崇拝という形式。
その中でも「人が神になるよ!」とか「転移するよ!」みたいな思想のハイブリッドなのかなーと思ってます。
で、メノナイトというがっつりキリスト教の主人公がその集団でトップになる…というのはいろいろ受け取り方ができる気がしますね、融合なのか支配なのか…。

キリスト教信仰以外を異端として魔女だ!と迫害されてしまう最近の映画だとA24から配給されている『ウイッチ』というものがあります。それを観ると「へええこんな感じなのかー」とふわっとわかるんじゃないでしょうか。

・母親のもつ二面性

娘にとっての母親とは、ある時は自分を導く愛に溢れた存在であり、またある時は呪縛となる存在。

この映画でも、多くの母がある時は娘を護り愛し…一方では煩わしく娘を苦しめる存在として表現されています。
主人公の母親については様々な説がありますね、魔女説もあります。

・博士の愛は罪だったのか

博士の奥様の記憶は「罪」として消去されてしまいます。

その前にも主人公のように二人の記憶が罪のようなフラッシュバックが起きる、彼女は現在どのような容姿なのか…壁に愛の証を刻んだ若かりし頃…
博士は耐え切れずに思い出を川に投げ捨ててしまいます。
生き別れてしまった事実、その時の状況は確かに彼にとって「後ろめたく許されることのない罪」かもしれません、しかし奥様が死に際に彼を想った暖かな記憶…それをその一言で済ませられるでしょうか。
彼を人として生かし続けていた愛だったのではないでしょうか。
あとこれキリスト教の原罪についても絡んでくる気がしますが、多分そんな気がするだけです。

で、どうだったのこの映画?
大好きです、こんなに面倒くさくてアーティステックな映画
作家性の強い映画が作れないと嘆く現代でよく出来上がったと感動しています。そもそも好きじゃなきゃこんなに必死に文章書かないですからね。
77年版の設定を新解釈を加えて再構築した内容ですね。
(そしてアルジェント監督が怒っているという気持ちもわかる)
150分頭をフルに使って観る映画も久々でした、楽しい本当に気持ちがいい。冒頭のトムヨークのダウナーな歌声も映像とマッチして脳みそが溶けるかと思いました。
こんな説明じゃ足りないよ、もっと確証がある話が読みたかった!という方は
ちゃんと解説された本があります

ステマじゃないですが、これがパンフレット以外ですと唯一の解説本のようなのでよろしければ手に取ってみてください。
プレ値で転売されてますがちゃんと正規の値段で買えるから安心してね。
ちなみに私は彼女が好きです。ずーっと従順な娘だったね…。


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はしもと

主に映画の感想をメモしてます 映画関係のレポ漫画等も描いてます。
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