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きららと日常と

皆さんは「まんがタイムきらら」という漫画雑誌をご存じだろうか。

「まんがタイムきらら」は2003年に芳文社から創刊された"萌え系"4コマ誌である。パソコンや携帯電話の普及による出版業界全体の売上が減少を続けていたため、1981年創刊の4コマまんが誌「まんがタイム」をベースに、比較的購買意欲のあるオタク向けの雑誌を作るようになったそうだ。

2007年からは「まんがタイムきらら(系列)」を原作としてアニメ化する作品も登場しており、大ヒットにつながるケースも珍しくない。
現在でも1年に1~3作品程度作られており、アニメをよく見る人たちの間では
『今季アニメのきらら枠は…』のような表現を用いることがある。

自分は最初「きららアニメ」に関しては全く意識していなかったが、蓋を開けてみると視聴したきららアニメは意外と多くあった。

一定以上のクオリティがあり、いつも楽しんでみることが出来ている。今回はそんな「まんがタイムきらら」(ここからは『きらら』と呼ぶ)という箱に関して、お話をしたい。

きららには様々なテーマの作品があるが、一言にまとめるとするならば『日常アニメ』ということが出来るであろう。中学生~20代の若い女子が日々の生活を楽しむという印象がある。
『日常』という言葉の意味を調べてみると以下のように出てくる。

つねひごろ。ふだん。平生。「—用いる道具」「—会話」「—性」

デジタル大辞泉「日常の意味・解説」
<https://dictionary.goo.ne.jp/thsrs/15058/meaning/m1u/>

「日常」は、特別のことがなく繰り返される毎日のこと。「日常会話」「日常の挨拶(あいさつ)言葉」のように、いつも決まって用いることの意でも使われる。

goo辞書「日常」の類語・言い換え
<https://dictionary.goo.ne.jp/thsrs/15058/meaning/m1u/>

『同じような毎日が繰り返しやってくる』という意味合いで日常という言葉は使われている。
しかし、きららアニメではそういった意味から逸れていることが多い。

例えば2022年秋に話題となった作品『ぼっち・ざ・ろっく』では
人前に出て演奏することは苦手なギタリストが様々な人々と出会うことで成長していく物語となっている。スポ根のような要素も散りばめられている。

では完全なるスポ根アニメであるかというとそういうわけではなく、それ以上に彼女たちの日常生活を丁寧に取り扱っている。

特にアニメ最終話に主人公がつぶやいた最後のセリフがかなり印象的だろう。

今日もバイトかぁ~

★アニメ「ぼっち・ざ・ろっく」12話『君に朝が降る』より

このセリフだけを聞くと、ただの日常を切りとったものに思える。
しかし、彼女の成長を一緒に見てきた視聴者から見れば、
紆余曲折を経て主人公は「新しい日常を手に入れた」と解釈するだろう。

このようにきらら作品は見た目としては「日常」を描いているように見えるのだが、
作品の中身を丁寧に見ていくと『同じような毎日が繰り返しやってくる』日常ではなく、『少しずつ変化していく』日常を描いていることに気づく。
上記のセリフは『きらららしさとは何か』に対する一つの答えのようにも思える。

また、2023年秋から放送がはじまった『星屑テレパス』という作品も日常生活とキャラクターの成長のバランスが秀逸な作品である。

仲の良い友人を作ることに苦手意識を持っている主人公は最初、宇宙人に憧れを持って、こことは全く違う場所に行きたいと思っていた。しかし、回りまわってロケットを作る同好会を作り、地に足のついた活動を行うようになったのは大変興味深い。

かなりキャラクターの心情・行動の変化という『成長』に重点を置いた作品ではあるが、普段の学校生活での会話によってまた次の成長につながるきっかけが生まれるなど日常生活も上手く物語の1ピースとして機能している。

このようにきらら作品は『少しずつ変化していく』日常を描いてきた。
それが多くの読者に惹かれている理由の一つではないだろうか。
きらら作品はこれからどんな日常を描いていくのだろうか。ファンの一人として行く末を見守り続けたい。

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