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未来に向かってCO2を通す「CO2分離膜」 カーボンサイクルテクノロジー(7)

石炭(黒い石)や石灰岩(白い石)に封じ込められていたCO2を大気に開放してしまった。二酸化炭素は、アラジンの不思議なランプの中に封じ込められていた魔法使いのように、我々人類のお願いを三つまで聞いてくれるだろうか?残念ながら、CO2のほかにも小魔人たち(その他のガスのたとえ)が出てきては、役に立ちそうにない。CO2魔人を他の魔人たちから分離するプロセスが必要である。

もしCO2だけを通過させ、その他の分子を通さないゲートがあれば都合が良い。口絵はアクアポリンという生体膜に埋め込まれている分子ゲートだ。水は細胞から細胞へ拡散すると考えられていたが、水だけを通すゲートが見つかった。どうやらこのゲートはCO2も通過させるらしい。

CO2だけを通過させ、水を通過させない中空糸膜モジュールを用いて高濃度炭酸水を簡便に作り、その使い道を模索してきた。同様の技術で排ガス中のCO2だけを水に溶かすことはできないだろうか?

CO2水

CO2分離膜は、地球環境産業技術研究機構(RITE)で長らく研究されている。膜の権威の中尾先生率いるグループの研究開発に期待している。東レは2,021年になって、多孔質炭素繊維を用いた革新CO2分離膜を創出した。CO2分離能を有するオールカーボンの二層構造だ。一方京大では、金属イオンと有機分子がキレート結合したナノサイズの細孔を無数に有する多孔質膜が研究開発されている。いずれもCO2分子との親和性や分子篩を原理としており、先ずは大規模プラントでの実用化が進んでいるようである。民間レベルでハンディーな膜モジュールが実用化される日も遠くないと願いたい。

純度の高いCO2が低コストやエネルギーで分離されれば、水素ガス同様CO2ガスもエネルギーやマテリアルの原材料として、我々の未来の望みを無限に聞いてくれる魔人となるに違いない。

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